へし折られた自信

誰しも何か一つはあるだろう自分が他人より少し優れている技、特技。
平均や中央値よりも少し上にあれば、わたしはそれを特技と呼んでいる。

小学生の頃まで、わたしは他人より何かを覚えるのが得意で、
それはアイドルのダンスだったり、好きなアーティストの歌詞だったり、算数の公式だったり、漢字だったり
…だったり。
歌詞を覚えるのと同時にわたしは、父のウォークマンを使って沢山歌を歌っていた。
だから、歌も上手いと思っていた。

ピンクのチャイルドシートに乗ってカーステレオから流れる当時の流行りの曲と一緒に歌っていた時のこと。
姉に「あんた、歌下手だねぇ〜。」と笑いながら言われた。

思春期あたりを超えた時、自分の特技は本当に特技なのかと疑い始めた。
特技とは、他人より優れていると思っているもの。ではなく、他人から見て他人より優れているもの。なのだ。
それまでわたしが特技だと思っていたものはただの過信に過ぎない。

わたしは歌が下手だ。
それでも歌手になりたかった。
曲を作って歌いたかった。

へし折られた自信は15年を過ぎた今も胸に残っている。

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