魔王子復讐譚Schadenfreude~全てを奪った貴様を俺が滅ぼすまで~ 1話脚本

・タイトルページ

・魔の大陸___シュヴァルツ魔王国、魔王直轄領。
 雷鳴轟く暗い空。  
 地面まで走る稲妻の間を、飛竜(ワイヴァーン)が飛び交っている。  
 その眼下に聳え立つ山の頂きには、漆黒に塗られたゴシック調の古城。  
 それこそが、魔の大陸の全域を支配するシュヴァルツ魔王国の魔王城である。  
 
・その城の主たるは、漆黒の闇に靡く軍服のコートをその身に纏い、玉座に足を組みて座る、白銀の髪で顔の右側を覆い隠した蒼い瞳の容姿端麗な青年。  
 彼こそがシュヴァルツ魔王国を統べる残忍かつ冷酷非情なる魔王、ジークフリード・フォン・F・シュヴァルツである。 

リエル「お兄様ぁ、もっと撫でて下さいまし~。わたくし、まだまだお兄様に甘えたりませんわぁ」
  
・魔王の膝の上に頭を乗せ甘えているのは、ジーク同様の白銀の髪に紅と蒼の瞳を持ち、陶磁器の如く白い肌に覆われた肢体の上に漆黒の闇の如きコートを羽織った絶世の美少女。  
 名は、ガブリエル・フォン・F・シュヴァルツ。  
  魔王ジークの妹であり、魔王軍最高戦力たる四魔卿の一人である。  

ジーク「全く……リエル、お前はもっと四魔卿の一人としての自覚を持ったらどうだ。魔王軍の最高戦力たるお前がこれでは示しが付かんだろうに」  

・そう言いつつも、ジークの声は嬉しげ。  

リエル「お兄様に甘えるのは妹であるわたくしだけの特権ですわ。それにィ、お兄様は永久にわたくしだけのお兄様で将来を誓い合う関係なのですから、他の女が寄り付かないように四六時中一緒に居なくては駄目なのですよっ!」
  
ジーク「おい、兄妹同士で結婚とかできる訳が」  

・ここまで言ったところでジークはヤバっと心の中で呟く。  
 何故なら、目にハイライトのないブラコン妹がまるで深淵を覗くかのようにこちらを見つめていたのだから。  

リエル「お兄様? 何故そんなつれないことを仰るのですか? 嫌ですわ、お兄様。わたくしから離れないで下さいまし。わたくしとお兄様は未来永劫一緒に居続けるのですわ。お兄様はわたくしとずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒ずっと一緒……」(背景にもこの文字が続く)   

ジーク「ああもうわかったから! 好きなだけ俺に甘えてくれ!」  

リエル「本当ですか? では早速お言葉に甘えさせて頂きますわ!」
  
・ジークがヤケになって返答すると、リエルは兄の膝の上に頭を乗せるだけでは飽き足らず、今度はその場でジークに飛び付き、彼に抱き着いてみせる。  

ジーク「ちょ、リエル! 流石にそれはマズイだろ!!」  

・湧き出る色香。 
 いくら妹とはいえ、その色香は兄でさえも耐えるのに苦労する程のものであった。 

リエル「何もまずい事はありませんわお兄様。お兄様はただ、わたくしに身を委ねてくれれば......」 
 
・リエルがその瑞々しくも柔らかな桜色の唇をジークに近づけようとしたその時、 

????「「「ちょっと待ったー!!」 」」

リエル「チッ、いい所で邪魔が入りましたわね」  

ジーク(ホッ……)  

・レイラ、レーティア、タマモ、バンッという扉が開く音と同時に玉座の間に入る。 
 
レイラ「全く、これだからあなた方を二人きりにしておくのは厄介なんですよ!」  

タマモ「やれやれ、油断も隙もないというのはまさにこの事じゃのう」  

レーティア「全くブラコンにも程があるのだ! 我が思うにリエルはもっと現実を見るべきだと思うのだ!」  

 ・玉座の間に突撃したのは、残りの四魔卿達。  
  1人は蒼い髪と翠の瞳を持ち、腕に髪と同じ色の翼を生やした少女。  
  名はレイラ・ジレーネ・ローレライ。  
 その鈴の音の様な声による歌と、強靭な鳥の翼と脚を利用した格闘術を得意とする、セイレーン族である。  
 もう一人は長く艶やかな黒髪を伸ばし、高級そうな異国の服(別の世界では着物というらしい)を着た狐耳の美女。  
 名はキツネビ=タマモ。  
 永い時を生きてきたが故の智慧と妖術を武器とする狐人族である。  
 そしてもう一人は、金髪の長い髪と一対の羊のような角、そして一対の蝙蝠のような翼が特徴的な少女。  
 名はレーティア・ガルディエール・フォン・シュヴァルツ。  
 魔法の腕がめっぽう立つ、悪魔・竜人・吸血鬼・サキュバスの血を引く混血魔族である。
  
リエル「やれやれ、この所お兄様の周りには他の女がうろついていて油断も隙もあったもんじゃありませんわね。それでは、覚悟は宜しいかしら? お兄様はわたくしだけのもの! 誰にも渡しませんわ!」  

・リエル、自らの得物___大鎌の死神一閃(グリム・リーパー)を構えて臨戦体制に入る。 
 
レイラ「覚悟するのはあなたの方ですよリエル。いつもいつも妹だからってジーク様に纏わりつくのはやめて下さい!」  

・レイラ、鋭いカギ爪を持つ脚をリエルの方へと向ける。
  
タマモ「そうじゃぞ! 妾達も主様への愛では負けてはお主には負けておらぬのだからな!」  

タマモ、口に当てていた扇______狐火一葉をリエルの方へと向ける。  

レーティア「全く懲りぬ奴なのだ。実妹が嫁戦争に出しゃばってんじゃねえぞ!なのだ」  

・レーティア、指先から魔法陣を出し、今にもリエルに向けて魔法を放とうとしている。  
 今にも一触即発かと思われたその時______、  

ジーク「お前達、良い加減にしろ!」 ドンッ

・その声に驚いた四人は、一斉に声の主______ジークの方へと振り向く。 
 
ジーク「俺は人間不信だが、その分お前達を他の誰よりも信頼している。お前達の為ならば他の連中が全て滅ぼしても良いと思えるくらいにな。それはお前達とて同じだろう。それに俺たちには果たすべき復讐_______滅ぼすべき怨敵共がいる。だから今、俺を奪い合うなどという無駄なことに時間と力を潰すのはよせ」  

四魔卿「「「「......はい」」」」  
  
・その時___________、  
家臣「陛下、大変です! たった今、フランベルク帝国の軍勢が我が国に向けて侵攻を開始しました!」  
 
ジーク「何っ!?」  

・解説
 フランベルク帝国。  
 人の大陸における最大の大国。  
 かつては国民も他国に比べて比較的豊かな生活を送っていた。  
 しかし数年前、皇帝が崩御した後に陰謀で権力の座にのし上がった宰相が実権を握る様になってからは、軍事大国として周辺諸国の侵略に乗り出し、今では教皇領を除く人の大陸のほぼ全てを支配している。  
 その影響か、国民や征服された国々の民衆は奴隷労働や兵役や強制労働に従事させられる上に重税を課せられる等苦しい生活を強いられる様になってしまい、革命の機運が次第に高まっているとの事らしい。  
  
リエル「どうやら遂に待ち続けたこの時が来たみたいですわね、お兄様」  

ジーク「ああ、そうだな。今すぐ魔王軍全員を呼び出せ!」
  
家臣「はっ!」
  
・ジーク、自らの愛剣__鏖讐斬(クリームヒルト)を抜剣し、大勢の魔王軍の前で演説を始める。 
側に控えるリエル、レイラ、タマモ 、レーティア

ジーク「諸君! 本日、人間の帝国の連中が愚かにも我が国に攻め入ったという知らせが入った! いよいよだ! いよいよ我らシュヴァルツ魔王国軍が愚かな人間の軍を迎え撃ち、帝国に断末を与える時が来た! 我らの強さと恐ろしさ、帝国の愚か者共に存分に知らしめようぞ! そして帝国が滅び去った暁には、諸君等に帝国領のほぼ全てをくれてやる! 搾取でも領民の奴隷化でも、好きな様に帝国の領地を使うが良い!」  

魔王軍『ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!』  

魔王軍『Heil Meine Majestät der Dämonenkönig(我らが魔王陛下万歳)!! Ehre sei dem Schwarz Dämonenreich(シュヴァルツ魔王国に栄光あれ)!!』  

・家臣達の歓声が玉座の間に響き渡る。   
 
ジーク(思えばここまで長かった。この戦が終われば漸く、俺達兄妹____いや、俺達家族から全てを奪い地獄に突き落としたあのクソみたいな奴らと国を滅ぼし地獄に叩き落としてやる事が出来る……父上、母上、遂にこの時が来ましたよ______)  

・ジーク、回想を始める。


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