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しゃがみ込む日々-ソウルフラワーユニオンを巡る雑感(5):クロスブリード・パーク

からふねです。

ニューエスト・モデルはインディーズ時代に2枚、メジャーデビュー後3枚のアルバムをリリースしていますが、「おすすめを1枚だけ選んでくれ」と訊かれたら、迷うこと無くこの「クロスブリード・パーク(Crossbreed Park)」を選びます。
勿論大学時代に死ぬほど聴いたアルバムなので、思い入れも深いです。

全曲解説に移ります。既に紹介している曲についてはその記事のリンクを付けつつ。

1. ひかりの怪物
冒頭からホーンセクションが響き渡るファンキーでソウルフルなサウンド。それにタメを張る中川敬の魅惑的な歌声。途中のブリッジで、ドラムとパーカッションとベースが16ビートを刻む中に猛然と絡むギターが素晴らしいし、かっこいい。アルバムの最初を飾るにふさわしいですね。

2. みんな信者
こちらも冒頭からホーンがどーんと飛び込んで来ます。Aメロはとても明るいのですが、Bメロから少し様相が変わって来て、サビが微妙に沖縄テイストだったり。歌詞はとても内省的。「あの子」ってのは神様のことなのかな……

3. 杓子定木
どこか日本的な趣きを感じるメロディライン。途中からマンドリンやアコーディオンも差し込まれて来る。「大きな栗の木の下 あなたと私 汚れた雨を受けながら 踊り明かそう」の一節は"とある童謡"からヒントを得たんだろうな。後年モノノケサミットでセルフカバーしています。

4. 世紀の曲芸
印象的なピアノのイントロから入り、重いリズムを刻むドラムとベース。Aメロで「泥沼の中で」と絡む歌声は、ボ・ガンボスや佐野元春& The Hobo King Bandでお馴染みDr.KYON。そして2番の「受けを狙えよ」と絡む歌声は、メスカリン・ドライヴのヴォーカル:うつみようこ。ラストでガラッと曲調が変わるのが面白いんだよなぁ。

5. 車といふ名の密室
アルバムの中で一番激しい曲といって差し支えないだろう。中川敬のギターがとにかくかっこいい。そこにリズム隊とキーボードが必死に食らいついている。これもラストで、テンションのギアが3段ぐらい一気に上がる感じ。BEEP BEEP BEEP YEAH!!

6. 漂えど沈まず
ここで初めてミディアムテンポの曲。ピアノとアコースティックギターが絡むイントロ。中川敬は叫ぶのだが、激しさというよりむしろ切なさを感じる歌声だ。「どこか俺も犯罪者みたいだな そして君も犯罪者みたいだね」というフレーズに、ただただアジるだけではない、このバンドの深さを感じる。

7. 偉大なる社会
アルバム唯一のインストゥルメンタル。この曲もホーンセクションがふんだんに盛り込まれていてとてもファンキー。途中のキーボードがフィーチャーされたあたりでやや静かになるが、後半に向けてどんどん激しくなっていく。そしてノンギャップで次の曲へ……

8. 雑種天国
こちらをどうぞ。

9. 遊園地は年中無休
「遊園地」はこの場合、世の中であり、世界だ。自分のことを特別だと思い込もうとしても、「遊園地」という狭い世界の中にいるちっぽけな人間だ。でもそんな時であっても、中川敬は軽快なリズムに乗って「何もそんなに急がないでも」と歌う。優しいのだ。

10. 夜更けの彷徨
イントロは5/4拍で、メインメロディは3/4拍。陰鬱なピアノのリフとリズムで、どこかジャズっぽくもある。正に「夜更け」という雰囲気。この曲、ライブで演奏されたことあったっけな……

11. 乳母車と棺桶
こちらをどうぞ。

12. 底なしの底
ラストを飾るのはこの曲。演奏に特別なトピックは無く、後半に向けて徐々に激しくなっていく。「もう期限切れだろう? このまま風に吹かれたいのさ」「神様はいない お前がそうだろう? お前の中にきっといるんだろう?」「弱い順番に死んでいくのなら そろそろ次あたり俺の番だろう そうだろう?」……死を覚悟したような重い言葉が歌詞に綴られている。その上で、この地面が泥沼であっても果たして君は踊れるのかな? と煽って来ているのではないか。これ聴いて、よく泣いてたなあ…

以上、全12曲のご紹介。名盤なので是非聴いて頂きたい。

次回は、生まれて初めて行ったニューエスト・モデルのライブレポートを書く予定です。つっても30年近く前の話なのでうろ覚えですが。
それではまた。

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