見出し画像

​​親の役割は環境づくりと信じること【サッカー元日本代表・腸活ビジネスを展開するAuB株式会社 鈴木CEO×カラダノート代表 佐藤】〜後編〜​

当社は「家族の健康を支え笑顔をふやす」を掲げ、少子高齢化の社会課題の解決を実現したいと考えています。
少子化を改善するにあたって官民ともに様々な対策が講じられるなか、私たちは、子育てにおける不安等のマイナスをゼロにするだけでなく、どうすればもっと幸せに、笑顔になるのかを考えたいと思っています。
そういった思いから、家族の健康や幸せのサポートをされている企業や有識者とカラダノート代表 佐藤との対談を通じて、少子化を解決する上での「課題」だけでなく、インタビュイーご自身の「子育ての魅力」についてなども発信してまいります。

第四回となる今回は、サッカー元日本代表選手で、腸内細菌の研究を軸としたヘルスケア事業を展開するAuB株式会社代表取締役の鈴木啓太氏のインタビューの後編をお届けします。

子どもは親が与える環境の中で成長する

佐藤:鈴木さんは2015年にサッカー選手を引退されて起業されましたが、選手時代と現在とでお子さんとの過ごし方などに変化はありましたか?

鈴木:サッカーの現役時代は、土日に試合があることが多く、決まった休みがあるわけではなかったんですね。
予定が立てられないのは子育てをする上では大変で、家族旅行もあまりできなくて。シーズン中は休日に遠出をすると体に負荷をかけてしまうので、出かけるとしても近くの公園とかデパートぐらいになってしまう。その点は子どもたちに申し訳なかったと思っています。

ただ、現役時代は家にいられる時間はそれなりにあったので、夕食は家族揃って食べていましたし、今よりは子育てに参加できていたかなと。会社経営を始めてからは、夜も仕事があって早く帰れないことがあるので、子どもたちを不安にさせていないと良いのですが。

佐藤:土日に関東近郊で試合があるときは、ご家族は応援にいらしてたんですか?

鈴木:埼玉スタジアムでのホームゲームはほとんど来ていましたが、アウェイの試合のときはテレビ観戦でした。子どもたちがテレビで見ている様子を妻が写真に撮って、試合後に送ってくれたりしていました。

先日、僕と同い年の選手が引退したんですが、その引退試合をやったのが埼玉スタジアムだったんです。そうしたら、普段は僕がこういう機会にサッカーをすることになっても「試合なんて見に行かない」という感じの上の子が、「行く」って言い始めて。スタジアムに到着したら、僕が現役時代に一緒にプレーしていた選手たちも子ども連れで来ていて、久しぶりに家族ぐるみで交流ができたんです。

スタジアムで僕の応援をして、他の選手の子どもたちとも交流してという、昔やっていたことを子どもが今も覚えていて、それを楽しんでいるというのはちょっと感動的でしたね。昔はスタジアムにただ連れて来られていた子どもたちが、彼女たちなりに興味関心を持ってくれて、「サッカーって意外と楽しいね」といったことを言うようになった。そのことに成長を感じました。

結局、子どもは親が与える環境の中で成長していくものなので、社会性が磨かれるところに連れて行くことはすごく大事だなと思いますね。

佐藤:ちなみに、起業されてから、お子さんを会社に連れて来られたことはあるのでしょうか?
 
鈴木:まだ連れて来たことはないんですよね。
僕はアスリートの便に含まれる腸内細菌を研究してサプリメントの開発などをする事業をしていて、娘たちは「パパはうんちの研究をしている」ということは理解しています。「うんちの研究」というと、子どもたちの世界ではあまり良い印象を持たれないのではという心配もあるのですが、娘たちは「パパってお仕事で良いことをしているんでしょう?」という印象を持ってくれているので、今度、オフィスに連れて来てきちんと説明した方が良いかもしれませんね。

左から「aub GROW」「aub MAKE」「aub BASE」
お買い求めはこちら:https://aubstore.com/

応援するのも反対するのも親の愛情

佐藤:鈴木さんご自身が幼少期からサッカー選手になられるまでの育ってきたプロセスで、「こういうサポートをしてもらえたのは良かった」「こういうやり方がうまくいったから、子どもにもやってみよう」と思うようなことはありますか?

鈴木:僕の場合はサッカーを始めてすぐに「サッカー選手になりたい」という夢が見つかったんですけど、周囲からは「なれるわけない」と言われてばかりでした。
父も「お前のレベルじゃまだ無理だな」みたいなことを言っていましたが、そこに愛情があることは感じていましたね。

鈴木社長 幼少期(提供:AuB株式会社)

学生時代に試合に出るメンバーに選ばれずに落ち込んでいたときは、母親が「一生懸命やっていたら必ず誰かが見ててくれるよ」って励ましてくれました。それだけのことを言ってもらえたら、あとはそこで自分が「よし、もう一回やるぞ!」って思えるかどうかだけじゃないですか。どんなときも信じてくれたのは、やっぱり親だからなんだなと思います。

でも、Jリーグのチームからオファーをもらったときは、母には大反対されたんですよ(笑)「本当に大丈夫なの?無理だからやめなさい」と。母親は僕の人生を真剣に考えてくれていたからこそ、「厳しい世界だから長く続けられないかも」と思い、手放しでは喜べなかった。そういうことを言ってくれるのは親しかいないので、承諾を得るのは大変でしたが、やっぱり愛情を感じていたんですね。

こうした自分の実体験を振り返ると、結局、親にできることって、環境を整えること子どもを信じてあげることだけだと思うんです。周囲の人がいくら燃えやすいものを用意したとしても、そこに火を灯すことができるのは本人だけ。その火種がいつ見つかるのかは分かりませんが、今の時点では子どもたちにいろいろな世界を見せていくことが大切なのかなという気がしています。

多種多様な考え方に触れる機会を

佐藤:子どもがスポーツ選手を目指していて、それを応援している保護者の方は多いと思うのですが、全ての子どもがプロになれるわけではありません。鈴木さんご自身が置かれていた環境で特に恵まれていたと感じるのは、どのような点でしょうか?

鈴木:静岡の清水市という、サッカーが盛んな地域に生まれたことは環境的に恵まれていたと思います。自分よりも上手い選手が周囲に沢山いる環境で育ったことが、僕のパーソナリティと合っていたなと。

撮影:株式会社カラダノート

佐藤:それは具体的にはどのようなことですか?

鈴木:僕が仮に当時の実力で、他の地域で生まれ育っていたとするじゃないですか。そうすると、エースになれるかもしれないんですよ。でも、清水には僕よりも上手い選手が沢山いるのでエースにはなれない。だから、そこで探すんですよ、自分がやれることを。

上手い選手たちは各自の好きなプレースタイルがあります。でも、僕は自分の好きなプレーだけやっていたら生き残れないと思うから、敢えて上手い選手がやらないことを探してやるわけですよ。

僕みたいなプレースタイルはニッチな隙間産業なんですが、「上手い選手たちが輝けるようにするために、自分はこういうプレーをしたら試合に出られるな」という考え方をすることで、チームにとって必要な選手になれる。考え方次第だと思います。

佐藤:常に一番じゃなくても、むしろ一番じゃないからこそ、良いポジションを手に入れて結果を出せることもあるということですね。

鈴木:あとは指導者に恵まれたっていうのも大きかったですね。それぞれの指導者からアドバイスをもらう中で、「じゃあ、自分はどうしようか?」と考える習慣が身につきました。そういった力が身についたのは、母親や父親のおかげという面もあるかもしれないですけど。サッカーを習う環境と、家庭の教育環境がすごくマッチしたということは感じますね。

佐藤:お子さんに良い環境を用意するという点で、鈴木さんが工夫されていることはありますか?

鈴木:多種多様な考え方の人がいる環境で育てたいという思いがあって、子どもたちの学校もそういう所を選びました。将来はもっといろいろな人と出会える場所に連れて行きたいと思っていて、海外や地方に行くことも選択肢になるのかもしれません。

結局、「自分は何者なのか」を知るには、他人との比較が必ず入ってくると思います。最初のステップとして、外にいるさまざまな人と自分を比べてみることで、自分の個性が見えてくる。そして、それが次のステップで「自分はこういう人間だから、人と比較しなくてもいいんだな」という気づきにつながっていくと思うので、まずはいろいろな人がいるんだということを子どもたちには知ってもらいたいですね。

俯瞰する視点は子育てでも役立つ

佐藤:長年、サッカーをやってこられたことは、鈴木さんの考え方や行動にどのような影響を与えているのでしょうか?

鈴木:サッカーはチーム競技ですし、社会の縮図だとも言えます。監督と選手の関係は、会社の上司と部下の関係に置き換えて考えることができますよね。他にも、チームメイトとの関係、ファン・サポーターとの関係、スポンサーとの関係など、サッカーという競技の中にはさまざまな関係性がありますから、社会で起きていることをそういった関係性に置き換えて考えてみる視点が持てるようになりました。

日々の生活の中で「これって、どういうことだろう?」と疑問に思うことがあれば、「サッカーに置き換えるとこういう感じだろうな」というように考えて、言語変換してみるんです。こうすることで自分も理解しやすくなりましたし、周囲の人にも理解してもらいやすくなったように思います。

佐藤:アスリートというよりも、仕事ができるビジネスマンの考え方ですね。僕も新人研修などでよく話しているんですけど、具体と抽象を行き来する思考プロセスが身についていることって、新しいアイデアを考える上でも営業をする上でも非常に重要なことなんですよ。サッカーに置き換えてみることで、ミクロとマクロの視点を自由に行き来していらっしゃるというのは素敵だなと思いました。

鈴木:面白いんですよ、サッカーって。プレーしているときにはなかなか見えないのですが、スタンドの上から見ると「なんであそこに選手がいるのが見えてないの?」とか「なんでそこにボールを出すの?」とか思うような瞬間がいっぱいあるんですね。でも、年に1回か2回くらい、フィールドにいても、スタンドから見ているような俯瞰の構図で「ボールがここに来るとき、あの選手はこの位置に走り込んで来ているはずだから、自分はこう動けばいい」ということが、全て見渡せるときがあるんです。

引いて見ることが大事だっていうのは誰でも言えることなんですが、実際にやってみないと意味がない。これってプレー中だけでなく、分析をする段階でも求められる視点ですし、子育てにも仕事にも必要なことですよね。

佐藤:そうですね。先ほど、鈴木さんのプレースタイルは上手い選手を輝かせる隙間産業のようなものだとおっしゃっていましたが、一歩引いたところからご自身の適性をとらえて、それを伸ばしていくのはなかなかできることではないと思います。

鈴木:僕はサッカー選手としては二流だったと思うのですが、そういう自分の適性を見つける能力はあったのかもしれないですね。サッカーって、技術だけではなくて、ボールを持っていない時間にどう動くかといった総合的な判断力も問われるスポーツなんです。
これを子育てに置き換えて考えてみると、初めて自分のところにボールが来たとき、つまりやりたいことの火種が見つかったときにしっかり動き出せるように、子どもはいかに準備をしておくか、親はいかにサポートしていくかっていうことが重要なんだと思います。

親は子どものファン・サポーター

佐藤:最後に改めて伺いたいのですが、鈴木さんにとって「子育て」とは何でしょうか?

鈴木:僕は子どもたちのファン・サポーターなんでしょうね。だから、愛情を持ってサポートするし、お金を払って育てるし、ダメなときはダメだって言う。
そこで大事になるのは結果じゃないんですよ。一生懸命走ったり、スライディングしたり、シュートを打ったり、どれだけ熱いプレーができるかが大事なんです。僕は子どもたちの人生を代わりに生きることはできないので、子どもたちが躍動する姿を見たい。その姿に自分の夢を託したいんだと思います。

佐藤:サッカーのサポーターの方々も、応援してあげているというよりは、夢を託すことでプレーの疑似体験ができて、自分が楽しいからやっているという部分が大きいですよね。それはそのまま子育てにも当てはまりそうです。

鈴木:そうですね。「人のため」ってよく言いますけど、それって結局、自分の喜びなんですよね。自分が嬉しいからやるだけのことなんです。

佐藤:一番身近な存在である家族という単位で、その喜びを味わえるのは幸せなことですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

鈴木:こちらこそ、ありがとうございました。

撮影:株式会社カラダノート

今後も、カラダノートでは、様々な角度から「少子化という社会課題」と「子育ての魅力」を発信してまいります。

今後の参考にさせていただきたく、記事に関するアンケートを募集しています。ぜひお声をいただけたら嬉しいです!
▶︎
アンケートフォームはこちら