【ヒーラー入門】死にゆく人の送り方

ずっと心に引っかかっていた事があります。
祖母を無くした時、息を引き取る瞬間にいたのですが、あまりに自分は無力だなぁ、と感じたのです。
突然の病気であればお医者さんが活躍します。ただ、祖母の場合は日に日に弱り、もう後は見送るだけ、そんな状態でした。そんな状態、状況で私にやれる事なんてありません。死にゆく人を元気にさせる力などあるはずはありません。
しかし、それでも、そこで感じた「無力感」は心に突き刺さるものでした。

武術は命の取り合いです。もちろん、今の時代、それを試し合う人たちはいません。稽古という形の中で真剣に命に向き合います。
ずっと、それを厳しい形でしか考えられなかったのですが、身体感覚の世界を知り、それを探る事も立派な稽古になる、とわかり、以来ずっと、私は真剣に身体感覚に取り組んできました。

しかし、実際に「死」と向き合うチャンスはありません。
祖母が亡くなる数年前に父を亡くしましたが、その父は風呂場で突然亡くなり、死を実感するのにも時間がかかりました。現実に死という場面を経験したわけでもないので、今でも実感しているかは怪しいものです。

ある意味、初めての死を祖母に見せてもらい、経験させてもらったわけです。そして、それが祖母を見送るというよりも、自分の中の無力感にショックを受けているという冷たさを見つけてしまう結果となりました。
この感覚がずっと、私の心に突き刺さっていたのです。

あの時、なにか出来る事はなかったのだろうか?ずっとそれを考えていました。そして、その考えは無意識に落ちて、私を作ります。
一昨年だったか、「撫でる」事の力を見つけ、少し気持ちが軽くなったのですが、それでも、その技は怒る相手を収める技。死にゆく人を見送るにはちょっと力が足りません。

そして、そこから一年、鱗の技を見つけたのです。鱗は肌に触れ、相手の中にバリアを感じさせるものです。皮一枚下を意識し、触れると、相手の内部と表面の緊張が緩みます。外からやってくるストレスを皮一枚下にある鱗が守ってくれる、そんな気持ちが現れます。

この時、その感覚は相手に自覚をしてもらわなくてもいいのがポイントです。身体は意識される事で自然と反応を生みます。
こちらが正確に皮一枚下を自覚し、触れれば、自然と相手もその部分が働きます。
身体は触れられると働くのでしょう。身体が動けば、心も自然とそれに引かれます。

この技に気がついた時、これを祖母を見送る時、知っていれば、と思いました。
もちろん、過去に戻る事は不可能ですが、もし、今後また、誰かを見送る場面に遭遇した時、手を取り、鱗に触れる事で、身体から生まれる重さを取り去り、心を癒してあげられる、そんな気持ちを得る事ができたのです。

過去には戻れませんが、この身体感覚を通しての気づきで私の過去が変わりました。
あの時、何もできず、無力感を持った私は、消えました。鱗の術理もあの経験があったからこそ、見つかったのではないか、と思うほどです。
何かを求める時、願望以上に「必然性」がいります。どうしても何とかしたい、そんな強い思いをどう得るのか、まだ私にはその自由はありません。

私が伝える「ヒーリング」の技は結果を変えるものではありません。死んでいく人を助ける力はありません。ただ、その人の身体からくる重りを外す助けをするだけです。
バランスを助け、緊張を取り、バリアを作れば気分が上がります。機嫌が良くなれば自己治癒の働きもよくなるでしょう。結果的に具合が良くなる事もあるかもしれませんが、それは「ヒーリング」の技によるものではなく、当人が身体の軽さを自覚し、気分が良くなったからです。

このサポート的な関わりが今の私には心地よいのです。
もっと積極的に内臓に触れ、ツボを刺激し、骨を整え、筋肉をほぐせばもっとはっきりとした結果も得られるでしょう。しかし、それにより、より具合の悪くなる事だって考えられるのです。
技は伝える事ができますが、責任までは取らせられません

鱗に触れる程度の柔らかさ。重力からくる崩れを支える程度の柔らかさなら相手に負担をかけません。このわずかなサポートでも身体には大きな安心が与えられます。身体感覚を忘れてしまった現代人にはこれだけでも十分だ、そう思ったからこそ、これを伝えよう、と思いました。

どんな状況でも、相手の気分を和らげられる、それがわかればどんな状況も怖くありません。ぜひ、それを日常生活、仕事の場面でも使ってくれたらなぁ、と思います。
嫌な上司、苦手な取引先、心、正直にすれば不満はたくさんでてくるかもしれません(笑)。
嫌な気持ちになったのはその人たちに認めてもらいたい等、戦う気持ちが強すぎるからかもしれません。もちろん、実力を上げて対処できるのならそれで見返すのもいいでしょう。しかし、なかなか難しいのもわかっているはず。だからこそ、苦手なのです。

この時、その嫌な相手に対する際にも「ヒーラー」になり、向き合うと決めれば気分は楽です。相手の心をどうにかするのではなく相手の身体感覚に向き合えば見失う事なく、サポートする気持ちを持つ事ができます。

サポートされる相手に戦うのは逆に難しい、これが武術を通して確かめた事。ファイターとしての実力をつけるよりも、ヒーラーとして向き合う方がはるかに助かる道が広いのです。不思議ですよね。

【いよいよ初ヒーラー入門】

東京目黒 2/2(日) PM1:00~PM4:00
7時までおさらい稽古もできますので、思う存分、試し、確かめ、お過ごしください。
http://www.karadalab.com/healing

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