川崎、東山稽古を終えて

東山稽古、川崎稽古を終えてやっと、頭が戻ってきた。
今回、ノートを通して伝えたい事を書いておいたので、それを見て質問をしてくださる人もいた。
初めての場所、不定期な場所での稽古はその間の気づきも伝えられるのでなかなかいい手だ、と思う。これからも、不定期稽古の前には稽古したい事を並べておこう。小ネタのような技はいくつもある(笑)。

ただ、いろいろと書いた割にはその流れのようにはならない。
それは画一的な稽古が苦手、という事もあるが、今回特に、川崎稽古の前日、浜松での稽古でまた不思議な状態を見つけてしまったから。

ある三角の板を数枚重ねて持つだけなのだが、この持っている状態はこれまで自覚した事のない感覚になっていたのだ。
これだけでは全然伝わらないと思うが、とにかく、意識が変わり、外の変化が気にならない。押されても不思議と動じないし、相手に触れる時、思惑なく、真っ白な気持ちのまま触れられる。

この不思議な状態に包まれたまま川崎へ向かった。
今回は一人という事もあって珍しく前泊。ホテルについても、一人その感覚を探った。

稽古当日もこの「三角の板」を持ってもらい試してもらったが、私ほどの驚きはきっとなかったと思う。それはそれ以外にもたくさんの「身体を変えるモノたち」を持って行ったから。

下駄

下駄の効用は鉄板ネタ。自分自身の変化に誰もが驚いてくれる。そしてその驚きは後からやってくるのがまた不思議。
下駄に乗った瞬間、驚く人は誰もいない。当たり前の自分、前とは変わらない自分だと認識してしまう。しかし、大間違い。下駄に乗った瞬間、姿勢は変わり、上下の波に乗れるようになっている。
実験として上から体重をかけても姿勢を崩す事なく、歩けてしまう自分に驚いてもらえる。

いつも帰ったら下駄を買って下さいね、と言っているが、どうだろう。名人の下駄でなくてもいいのだ。1000円ぐらいのもので十分。下駄を勧める人の中には「鼻緒」の効用を大切にする人もいるが、それなら草履でもいい。
しかし、草履には別の働きがある。大事になのは「台」。いわゆる便所下駄であっても働きはある。ぜひぜひ、勝手、日常遣いにしてください。出来るならば、部屋の中でも。そして、飽きたら躊躇なくやめてください(笑)。

玄能

今回、玄能も持って行った。名人の作った玄能、名人の弟子が作った玄能、長年家にあった普通の玄能二つ。それぞれを持ち比べてもらった。

試してもらう時、私もドキドキ、楽しい。
説明なしにそれぞれの玄能を持ち比べてもらう。

さすがに名人の玄能、名人の弟子の玄能あたりになると、持った瞬間、その変化が身体に出るのか、これが好きです、と口に出してくれる人がいる。下駄とは違う(笑)。
そしてその言葉通り、姿勢は強くなり、押されても動じなくなる。
また、何が何だかわからず持たされる人も、家に転がっていた玄能と名人たちの玄能では全く違う姿勢になってくれる。身体を変えてくれるのだ。

一応、私の中ではその理由を考えて、答えはある。しかし、それはどうでもいい。まずは「身体が変わる」という事を試して欲しかった。
努力を通して得る力は幼い頃からたくさん経験をしてきたはず。ただ、努力は歳を重ねると出来なくなる。努力が身体に負担をかけ、身体を壊す事にもなりかねない。

しかし、玄能は先に身体を変えてくれる。手にした瞬間、身体の流れが通っていく。金槌として釘を打つのが本来の働きだが、とてつもないヒーリンググッズでもあるのだ。

ただ、どんな玄能でもいいかというとそうではない。今試して変化を見つけた玄能はお二人分だが、きっと、魂が込められているのだろう。この変化を感じられるようになれば、日常の中にあるたくさんのモノにも興味がわくはず。

自分の身体を整えてくれるもの、逆に重荷になっているもの。値段や結果だけでみるのではなく、ただそこにあるだけで自分を整えてくれるものがちゃんとある。
もし、そんなものに囲まれて過ごせられたら当然、歳を重ねて行けば行くほど気持ちは軽く晴れやかになるだろう。

下駄型の台

下駄を模して作った台がある。薄いものだ。
その薄い台を何枚か重ねて立ってもらう。そこでバンザイをしてもらうのだが、人によって一枚に乗った時、二枚に乗った時、三枚、四枚に乗った時違う。腕が上がる時と上がらない時がある。

これは胴体のリズムと手のリズムが違うから。
多少高さが上がっていくがふらつくわけでもない台の上で、変わらず手を上げているように思っても、微妙に身体はバランスを取り、揺れる位置が変わってくる。

一応これを作った側なのではっきりとわかっている事はある。
1枚は胸
2枚は頭
3枚は目
4枚は背中
5枚は手のひら
6枚は労宮
7枚は指
こんな感じで動きが始まる場所が変わる。
もちろん、ここに「正しさ」はない。私の身体を通して見つけた事。そして、それを意識してみれば動きが良くなる場所。それだけが頼りだが、理解される事は少ない。ただ、その「わからなさ」があるうちは私は自由だ。

とはいえ、こんな板に乗ったからと言ってメールよりも便利に気持ちを伝えられるわけではない。
世の中に出てきているたくさんの商品、サービスは大きな成果をもたらせてくれる。
この板によってわかるのは自分自身のバランスのとり方。胴体と腕、大きく違う働きを持つ人間の身体。それらのバランスをとって仕事をして成果を残すのは大変な事だったのだろう。だからだこそ、誰でも大きな成果が得られるように便利な道具やサービスを先人は作り出してきた。

今たくさんの恩恵を私たちは得られる。しかし、土台となる身体を失ってしまったので、大きな成果から生まれてしまう大きな失敗のダメージに心も体も崩されてしまう可能性がある。
そんな失敗をカバーするために保険の仕組みまで生まれているが、身体をまだ持っているのだ。自分自身でも身体を整える工夫をしたっていいと思う。

胴体と腕、そして手が役割をそれぞれ持ち動いた時、そこに納得が生まれている。納得を手にして、機械や道具、コンピューターやサービスを使えば、もし、そこで出てくる結果が思惑とは違っていたとしても、次へとつながる気持ちを出させてくれる。

こんな時代に武術なんて、とはずっと言われている事。
しかし、武術は身体を教えてくれる。身体がわかれば心がわかってくる。身体を整えれば心も整うとわかってくる。

納得

心身整った時の状態は納得という言葉が似合う。今の人生を続けて「納得」を得られる自信がありますか?武術を通しての一人稽古なら、各自それぞれ、一番いいスピードとタイミングで、絶対に納得へと向かっていけます。どれだけ稽古らしくない、と言われても、私自身が納得を得て確信をしている稽古です。これからも身体の声の聴き、任せられるような稽古の場をお渡ししていければと思います。

【東山稽古・つくば稽古】

東山稽古は定例稽古になります。
毎月第4金曜日です。
ただ、会場の関係で定員は10名程度。場所は申し込みをされた方に個別にご案内しています。
http://www.karadalab.com/sch

つくば稽古が決まりました。
まだ先の3月ですが、また、それまでの間にたくさんの変化があると思います。ノートやツイッターでバンバン書き散らかしますので興味を持ってくださりましたらご参加ください。
http://www.karadalab.com/kanto


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