2019年の術理 3月

降りてくる力に気がついた2月。そして身体はその力によって満たされていきました。気のせい、何となくではなく、強い内圧を感じるほど、リアリティーのある力です。
内圧の強い身体は外からの攻撃、刺激に対して、余裕を持って対応できるようになります。あえてこちらから何かをしなくても、そのまま相手の攻撃を受け止めてもいいかな、と気持ちが変わります。
身体を鍛え、固く強くした人ならそんな変身もありだと思います。しかし、私はただ、頭をアンテナのようにし、立っただけ。上から覗いている存在がいたとしたら、まぁ、まっすぐ立っていた方が目立つだろう、そんな程度の考えです。
ただ、そんな姿勢で立つ事で、十分すぎる力を持っている、という気持ちになるのです。

この姿勢によって「動かない」という選択肢を持つ事になりました。
これにより、動かないという時間を得る事になりましたが、自然と「重心」に意識が向かうようになります。当然と言えば、当然ですね。

【ゆっくり】

ある日の事です。確か、皿洗いをしていました。洗った食器を棚に戻す。そんな「普通の日常」を過ごしていました。
一人稽古はこんな日常生活の中からもアイデアを得る事が出来ます。そして、そのアイデア、ひらめきが一生を変えるのです。

手に持っていた皿を落としそうになったのです。一瞬、あッ、と驚き、身体が緊張し、固まりました。
幸い、落とさずに済みましたが、こんな風に歳を重ねて、老いていくのだなぁと少し寂しくなりました。ただ、同時にどうしたらいいのかな、と問いが生まれます。問いが生まれると身体は答えをくれます。絶対に、です。

なぜ、皿を落としそうになったのか。答えは簡単。ちょっと早く、雑だったのです。これまで平気だったのは無意識に働く身体のバランスが補っていてくれたのだろう、その無理が効かなくなってきているのだろう、と考えました。

ならば答えは簡単「ゆっくり動けばいい」です。

さっそく残りの皿をゆっくり、後ろを向くのに数秒かけて棚にしまいます。
この時、とてつもない安心感がありました。身体が安心している事に気づいたのです。どんな事があっても、これなら転ばない、とわかります。

きっと、そんな事で、と思われますよね。
しかし、こんな事で、なのです。すでに身体には凄まじい力が備わっています。ただ、その働きを引き出す方法を知らないのです。
世の中はスピードの時代になりました。なんでも早く、早くが好まれます。また、このスピードが基準になりますから、スローライフ、と言ってもずっと昔の時代から比べたらこれでも早いのです。
メールを使わない人はいても、郵便は使いますよね。また、自分はテクノロジーを使わない、と考えても、周りの人たちはテクノロジーを使います。結果的にスピードの影響を受けるのです。

後ろを向くのに数秒、これはつまり、「動かない」という事です。
さっそく、これを武術で確かめます。これまでの技を「ゆっくり」という事を考え試します。手を合わせ、崩す。今まで通りのやり方で崩します。

この時、ゆっくり動く事で、相手の隙が見えたのです。隙が見えれば、その瞬間、一番崩しやすい場所が見えます。これまでその隙が見えなかったから、衝突をしていたのか、と驚きました。
きっと、才能ある人、動体視力などが良い、と言われる人は無意識にその隙を見つけているのだと思います。

私には才能は有りませんでしたが、ゆっくりと動けば、ちゃんと見えるのです。この時、「へそ」から動く事を気にすれば、さらに良しです。
この発見でなにより安心を得たのは、この先、10年、20年、歳を重ねてさらに老いても転ばないとわかった事です。
転ぶことはあるでしょう。その度にスピードダウンというバージョンアップをすればいいのです(笑)。暴力に遭遇する可能性はゼロパーセントに近いでしょうが、転ぶ可能性は100パーセントです。

転びに対しての考え方を手に入れた3月でした。


【いよいよ今年の稽古も最後です!】
名古屋 12/25(水)10:30-12:30、12/29(日)10:00-17:00
浜松 12/28(土)13:00-17:00
【久しぶりの東京稽古も決まりました】
東京目黒 2020/2/2(日) PM1:00~PM4:00

http://www.karadalab.com/sch

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