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エースコンバット7は何故「難しい」と叩かれたのか? ~初心者目線で紐解く7の問題点~

※これは筆者(唐揚げ隊長)の個人的な見解です。この記事の内容は決してファンの総意ではないですし、この記事と異なる意見を持つ方を批判・否定するものではありません。

※7の終盤ミッションのネタバレが含まれます。

エースコンバット7は、その「難しさ」について、発売直後から数多くの議論がなされてきた作品だ。

発売直後はAmazonレビューが大荒れになっていたり、批判的なブログ記事が投稿され、それに対する肯定・否定の意見が入り乱れたりしていたし、発売から1年以上経った今でも度々ファン界隈で論争が繰り返されている。

筆者自身、この問題についてはTwitterで繰り返し自身の見解や公式への要望を呟いてきたが、どうにも論争の主題・本質が人によって異なっている(それによって誤解やファン同士の分断に近い対立まで起こっている)ように見受けられたし、自分自身、問題の本質をしっかり捉えられているかが怪しかったので、考えの整理も兼ねてここに駄文をしたためることとした。

結論から言うと、7の「難しさ」に対する筆者の見解は以下の通りだ。

・7の「難しさ」は、シリーズや類似ジャンルのゲームに対する一定の経験があるプレイヤーであれば、多少のリトライはあれど十分クリアできる(であろう)レベルである。

・ただし、その「難しさ」に対応し切れないプレイヤー(主にシリーズや類似ジャンル未経験or経験の少ないプレイヤー)へのフォローが著しく欠けており、これは問題である。

・加えて、基本的な「飛び方」「戦い方」を覚えただけではどうにもならない要素(ミッションごとのギミック)が異様に多かったことも問題である。

要は、問題の本質は乗り越えるべき「壁の高さ」ではなく、「プレイヤーが壁を乗り越えるために必要な施策が、乗り越えるべき壁の高さに対して不足していた事」「ゲームの途中でその壁が動いたり、形や材質が変わってしまった事」と言うのが筆者の見解だ。

上記を踏まえ、主に初心者の視点から考えた、エースコンバット7の問題点(次回作への改善要望)を2つ挙げ、下記で詳しく解説する。

※なお、筆者自身は5以降シリーズをリアルタイムで追っている十数年来のシリーズファンであり、初心者とは到底呼べない立場である。しかし、記事内で述べる見解は後述の様々な実体験に基づくものであり、決して根拠のない憶測のみで書いた訳でないことを先に述べておく。

【問題①】プレイヤーがゲームのルールを習熟するために必要な施策の不足

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7の「難しさ」は、「敵が強い」とか「自機や味方が脆い」といった単純な物では無く、様々な要因が複雑に絡み合った結果生まれたものである。

が、そもそもそれ以前に、7は「エースコンバット」あるいは「フライトシューティング」というゲームのルールを理解・習熟する為の導線が全く張られていない、張られていても不十分という問題がある。

元々フライト(シューティング)ゲームというジャンル自体、他のゲームとは異なる能力(三次元的な空間認識や航空機の挙動に関する知識)が求められるゲームであり、初心者がゲームの遊び方を理解するまで並以上の労力を要する。7でエスコンやフラシューに初めて触れたプレイヤーにとって、ゲームの基本的な「ルール」を教わる機会がない事は致命的な問題になり得る。

こういうと「チュートリアル実装しろって話でしょ?」という反応がありそうだが、チュートリアルはあくまでも手段の一つであり、それだけでは根本的な解決にはならない

ここで過去作の中でも、特に初心者にフレンドリーとの意見が多く、筆者自身もそう考えている04を振り返ってみる。

まず前提として、04にはチュートリアルがある。チュートリアルでは飛行や武装の使用方法などの基礎から、TGTの説明や帰還ラインなどのゲーム進行に関わる要素まで網羅した内容となっている。

だが、筆者が04を初心者フレンドリーだと考える理由はこれだけではない(単にチュートリアルの充実度だけで見れば、5や6の方が優れている)。キャンペーン序盤のミッション構成にも、初心者への配慮が感じられるのだ。

ミッション1は味方の飛行場まで直進飛行する鈍足の大型機(爆撃機)を真後ろから追撃するという、実質チュートリアルと言ってもよい難度のミッションだ。余力があれば護衛の戦闘機と戦ったり、爆撃機を機銃で攻撃してみる、といったチャレンジもできる。

ミッション2は敵飛行場に駐機された爆撃機を破壊するという内容だが、ターゲットの爆撃機が数か所に固まって配置されているため、爆弾などの対地特殊兵装の練習に最適だ。

そしてミッション3では、ミッションアップデートの存在と、04最大の救済要素である帰還ラインの使い方について学ぶことができる。以後のタイトルでも一部ミッションに実装されている事が多い帰還ラインだが、なんと04ではこれまで紹介した3ミッションを含む全ミッションに存在している。いくらゲームが下手でもミッション1で弾切れになることは普通無いと思うが、万が一そうなっても帰還ラインで弾薬補充が出来るため"詰む"事は絶対にない。単純だが、それ故に分かりやすくて親切だ。

この通り04の序盤3ミッションはチュートリアルのおさらい的な役割があり、初心者がキャンペーンに慣れるための「遊び」の期間であることが分かる。この遊びの期間を経て、ミッション4では敵電子戦機によるジャミング下での戦闘、ミッション5では初の長期戦役型ミッション(7のミッション6・11の様なスコアアタック系ミッション)と、徐々にプレイヤーが乗り越えるべきハードルが上がっていき、序盤最大の難関であるミッション6に至るのだ。

このように、フライトシューティングとしてのハードルを徐々に上げつつも、初心者がそのハードルを、ストレスを感じずに乗り越えられる様に設計されたゲームデザインの妙こそ、04が発売から20年近く経った今でも根強い人気を誇っている理由の一つであると筆者は考える。

このような緻密なミッション設計が7にあったかと聞かれれば、残念ながら「NO」と答えざるを得ない。

チュートリアルが無いことは勿論、序盤ミッションの構成もあまり親切とは言い難い。

ミッション1は爆撃機迎撃、ミッション2は対地攻撃と、一見すると04のスタイルを踏襲しているように見えるが、ミッション1は敵が離れた位置にバラバラに出現する上、敵の数が多く無意味に冗長だ。ミッション2に至っては、ブリーフィングで対地メインと見せかけて後半は敵航空機、それも急加速と急旋回で上級者でも撃墜に手間取るような無人戦闘機を相手にしなければならない。(この所謂「ブリーフィング詐欺」問題については機会を改めて詳しく触れたい)

開発チームも流石にこのままでは初心者に不親切すぎると考えたのか、初回プレイ時に画面中央に字幕で操作説明を表示したり、その説明に合わせて敵の配置を工夫している様子は見て取れる。

※詳しくは下記の動画の20分13秒頃からを参照。なお実況プレイをされているバーチャルYoutuberの白上フブキさんは、この前に5の実況プレイもされていて、キャンペーンを最後までクリアしているシリーズ経験者であることも申し添えておく。

だがエースコンバットなどのフライト系のゲームは「習うより慣れろ」が基本であり、同じような操作を反復することで飛び方を体に覚えさせる必要がある。そのようなゲームで操作方法の説明が一度しか出ないのは不親切だ。

そもそも筆者は、リアルタイムのプレイ中に操作説明を入れる手法は、「プレイヤーキャラを静止させる」事が出来ないフライトシューティングには不向きな一方、操作を熟知しているシリーズ経験者にとっては邪魔な表示でしかないと考えている事から、この手法自体にあまり肯定的でない。

それでも、どうしてもこの方法でやりたいなら、ON/OFFをオプションで切り替えられるようにして、なおかつ「レーダーや視界内に敵がいない状態が一定時間続いた場合は、マップ切り替えの説明を表示する」みたいに、特定条件下で同じ操作ヘルプを何度でも表示するようにすべきだ。

【問題②】ミッションごとのローカルルール(所謂ギミック)の過多

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上記の問題だけであれば、トライアンドエラーを繰り返すことで上達できるし、ここまで作品の評価に影響を及ぼさなかったかもしれない。

過去作においても難所と呼ばれるミッションはあったし、そういったミッションを苦労の末にクリアした時の達成感や高揚感、「自身の成長」に対する実感がモチベーションに繋がるのも事実だ。

しかし、7の場合は所謂「ギミック系」と呼ばれるミッションが非常に多いため、そういった難所が序盤から多数存在する上、ほぼ毎回新しいことを要求されるために達成感や自身の成長を感じづらくなってしまっている。

7で明確にギミックと言える要素が最初に出て来るのはミッション4の敵レーダー網の突破だが、これ以前のミッション3で既に本作のボス枠であるアーセナルバードとの戦闘や、撤退する味方を無人機から守ると言った特殊条件下での戦闘が発生する。

ミッション5・6は比較的素直だが、ミッション7では分厚い雲に覆われた山岳地帯で雨と強風に晒されながら対地攻撃を行い、間髪入れずに雷雲の中で無人機とドックファイト、それでも終わらず終いには超加速と超機動で逃げ回る敵エースとの一騎討ちである。いくらなんでも1ミッションに色々詰め込み過ぎと言わざるを得ない。

ミッション8の前半は7でも屈指の爽快感と評判だが、後半は打って変わって砂嵐によりレーダー表示が不安定な状況でタンクローリーを探し、劣悪な視界と強風、そして敵無人機の追撃の中これを攻撃しなければならない。

ミッション9は山岳地帯のレーダー施設攻撃で、衛星と連携した防空システムを避けるために雲に隠れて移動し、レーダー施設攻撃の為に雲を出たら一定時間内に再び雲に戻る作業を繰り返し、後半は敵巡航ミサイルによる範囲攻撃を避けながらの空戦とまた別の事をやらされる。

ミッション10では輸送機に飛来するミサイルの残す雲から発射位置を特定するという困難なギミックに対応した後、超加速と超機動で逃げ回る無人戦闘機との戦いを強いられる。

長々と書いたが、7ではこれと同じような流れが終盤まで続く。

個々のギミックや敵についての評価は人それぞれだろうが、それにしてもイレギュラーな対応を求められる状況が多すぎる。しかもこれらのギミックは大概が所謂「初見殺し&一発ネタ」的なものであり、何度もプレイするうちに敵の出現場所やパターンなどを記憶してルーチン通りに立ち回る覚えゲーになる上、そこで学んだことを以後のミッションで応用できる場面も少ない。攻略パターンが固定されてしまうため遊びの幅は狭く、クリアできるくらい上達した頃には、同じミッションをやり直そうというモチベーションは沸いてこなくなる(所謂「リプレイ性」に欠けている)

このように、その都度その都度でイレギュラーな対応を強いられることで、前のミッションを苦労してクリアしても、次のミッションではまた別の要素で苦しめられるため、特に初心者は自身の成長を実感しづらいだろう。かと言ってミッション内容を記憶してクリアできるようになった頃には攻略がパターン化してしまい、同じミッションをやり直そうという気は起きなくなる。達成感よりも「やっと終わった」「もうやりたくない」という気持ちの方が強くなってしまう。(シリーズ経験者でさえそう思う人はかなりいるように感じる)

ギミック過多がもたらす問題は達成感の減退やリプレイ性の悪化だけではない。このようなゲーム仕様上のイレギュラーな要素のせいで、エースコンバットの伝統的な救済要素である難易度選択が機能不全に陥ってしまっているのだ。

この問題は、シリーズ恒例の「谷抜け」「トンネル潜り」で特に顕著に表れている。

7はシリーズファンをメインターゲットに据えていたこともあり、これらの要素もシリーズ最高難度と言われる。

ミッション14の峡谷は過去作と比較しても険しく入り組んでいる上に、夜間のため視界が悪く、更に峡谷内に敵のサーチライトが設置されており、動く光を避けながら飛ぶ必要があるという凶悪さだ。

そして最終ミッション、カウントンネルことミッション20のトンネル潜りは狭く長いトンネルで敵機と追い掛けっこをしつつ、三つある扉のうち遅く締まる一か所を選んで進むという元凶トンネル(3)とハミルトンネル(5)を合わせたような最凶トンネルである。しかもそれだけで終わらず、最後には軌道エレベーターの内部を垂直に駆け上がる必要がある。最早狂気の沙汰だ。

シリーズファンの一人としては、これらの要素自体は決して悪いとは思っておらず、寧ろ大歓迎(特にエレベータ登りを考えた開発チームには心からの感謝を述べたい)なのだが、これらの地形依存のギミックの問題点は、EASYだろうがACEだろうが根本の難易度が変わらないことだ。

7の難易度については、「EASYは難しすぎるし、ACEは逆に簡単過ぎる」と考えており、他の多くのプレイヤーからも同じ意見を聞くのだが、結局これもギミックが多すぎて、敵機の挙動や被弾あたりのダメージ量といった従来型の難易度調整では対応できないためであり、ある意味で当然の結果なのだ。

ギミックを入れるのであれば、それぞれのギミックに対応した難易度調整が必要不可欠だ。

例えば、峡谷突破なら難易度によって制限高度を変える、トンネルなら広くて短いルートと狭くて長いルートの2パターンを用意し難易度でルートを変えるなど、多少手間は増えてでも初心者向けにハードルを低くする配慮をすべきだ。

(批判もありそうだが)個人的にはより効果的な対策として、AHのDFMやASMを応用した機体進路の補正機能を導入するというのもアリだと考えている。(もちろん低難易度限定&プレイヤーが有効・無効をオプションで選択できる、という前提だが)

ここまでボロクソに書いておいてなんだが、筆者は決して「ギミックを全て無くせ」と言いたいわけではない。ギミックを入れるなら入れるで、プレイヤーが成長を実感でき、かつ何度プレイしても飽きないような仕組みを考えて欲しい、と言いたいのだ。

毎回新しい事をやらせるのではなく、プレイヤーが過去の経験を活かした立ち回りが出来る様なミッション構成を考えられれば、まだ良かったのではないかと考える。

例えば(あまりいい例えではないかもしれないが)、ミッション4で出てきた敵レーダー網を突破するシチュエーションを、後半に難易度を上げてもう一回設けることで、ミッション自体は初見でも前回の経験を活かした攻略が出来るし、特に初心者ならクリア時に自身の成長を大きく実感できるだろう。

7のギミックについてはシリーズ経験者からも「"フライトシューティング"としての快適なゲームプレイを阻害する」との不評が多いし、筆者も全くその通りだと思っている。次回作では是非とも改善をお願いしたい。

初心者軽視の先に待っているのは"失われた10年"の再来だ

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以上2点が、筆者が初心者の視点から考えた7の問題点だ。

先に述べた通り、筆者自身は初心者と呼ぶには余りにも長くエスコンを遊んできてしまった身なので、この記事には筆者の推測や主観が多く含まれている事は否めない。

だが発売直後に、主に日本国内で「エースコンバットの最新作が難しすぎる」という風評が流れていたは紛れもない事実だし、10年以上シリーズに触れてきた筆者でも「これは流石に不親切過ぎるのでは?」と感じる部分が多々あった。

これから述べる二つの実体験も、それを補強する内容だ。

一つは、近親者で恐縮だが筆者の実の父親の話である。

筆者が初めて触れたエスコンは父が遊んでいた2であり、その意味で父は、自分を今日のエスコン沼に引きずり込んだ"元凶"でもあるのだが、当の本人は10年以上シリーズから離れてしまっていた。

筆者がそんな父に、「折角最新ハードで最新作が出るのだから、これを機にパイロット業に復帰してくれたら嬉しい」という軽い気持ちで7のソフトをプレゼントしたのが全ての始まりだ。(PS4はPS4Proへの更改を機に、BD再生機として実家に寄贈していた)

父は(息子からのプレゼントと言う事もあっただろうが)7を大層気に入ってくれて、毎日のようにプレイしその報告をLINEに送ってきていたのだが、さっそくミッション2で詰まってしまい、筆者や筆者の弟があれやこれやとアドバイスして数日後にようやくクリアできた。

そうしたやり取りがほぼ毎ミッション発生し、約二か月かけてようやくEASYでクリアにこぎつけたのだが、最後の軌道エレベーター登りはなんと50回以上もリトライしたらしい。我が父ながら恐るべき忍耐力である。普通の人ならコントローラーを投げてソフトを中古ゲーム屋に売りに行っていてもおかしくない。

そしてもう一つが、筆者が発売直後に布教の為に配った7のソフトの話だ。

筆者のTwitterアカウントを以前からフォローいただいている方ならご存じかも知れないが、筆者は店舗特典目当てに7のソフトを(PS4版だけでも)10本以上購入している(参考1)(参考2)。今にして思えば随分と狂っていたが、当時はエスコンの新作が出るのが嬉しすぎて、とにかく口実を作って作品に金を落としたかったのだ。

この結果手元に大量のソフトが残ったわけだが、このまま自宅に置いておいても本棚の肥やしにしかならないし、かと言って売りに出しては本末転倒なので、家族や友人の伝手を辿って少しでも興味を持ってくれた人に片っ端からソフトを無償で譲り渡した(正確な人数は失念したが少なくとも5人以上)のであった。

さて、そんな布教活動の成果はどうだったかと言うと、記事執筆(2020年11月)時点で一人クリア、プレイ中の方が一人という状況だ。(なんと小学生が頑張ってプレイしてくれているらしい。筆者はそれを聞いたとき、初めて2を遊んだ時を思い出して目頭が熱くなった)

他の方は遊んではくれたが難しくてクリアできずに終わったのか、他の未プレイソフトと一緒に積まれてしまっているのかは不明だが、正直7を遊んだ後だとこの結果も当然というか、寧ろクリアしてくれる人が居るだけ良かったとさえ思う。

辺りを見渡せば魅力的なコンテンツが幾らでも溢れかえっているこの令和の時代、フライトシューティングという超マイナーなゲームに興味を持ってくれるユーザーはそれだけで宝だ。そういった人々の心を確実に掴み、次世代のコアユーザーへと育てていくことは、シリーズの今後の継続や発展にあたっての最重要課題だ。

勿論、我々既存ファンにも出来ることは色々あるし、出来る範囲で協力していくべきなのだが、あくまでも主導者は公式でなくてはならない。ゲーム自体が初心者フレンドリーでなければ、いくら我々がご新規さんに救いの手を差し伸べようとしても無意味なのだ。

「いや、7ではご新規さんも沢山入ってきてくれたし、7で初めてエスコンに触れた方には概ね好評だったじゃないか」という反論もあると思うが、気を付けなくてはならないのは、発売から1年以上経った今時点で7に言及しているユーザー(当時の新規かどうかにかかわらず)の大半は「7をクリアできた人」であると言う事だ。所謂生存者バイアスというもので、そういった方々だけをサンプルとして「7のレベルデザインは妥当だった」と判断してしまうのは非常に危険だと筆者は考える。

筆者がここまで口を酸っぱく「初心者重視」について言及するのも、つい10年ほど前まで「このままじゃ冗談抜きにエスコンってかフラシューってジャンル自体が消滅するんじゃね?」と言う危機感を強く持っていたからだ。

特に2000年代後半~2010年代前半の約10年間は、2000年代前半にリリースされた04、5、ZEROの所謂PS2三部作をピークにシリーズの売り上げが落ち、勢いに明らかな陰りが見えていた時期だった。

視点をもう少し広げると、丁度この記事にあるようなフライトゲーム全盛期が終わりを告げ、競合タイトルの新作が途絶え始めた時期とも重なる。エースコンバットはその中で最後の希望と呼べる存在になっていたわけだが、そのエスコンでさえ順風満帆ではなかった。寧ろ今にして思えば、切磋琢磨できるライバルがいなくなったことで目標を失って迷走を始めたのではとさえ考えられる。

極めつけは「エースコンバットは必要ないのでは?」という当時のバンナム経営陣の有難いお言葉(皮肉)を受け、背水の陣でリリースしたAHがお世辞にも成功とは言い難い結果に終わった事だ。(もっとも後のインタビューで180万本売れていた事が明らかになったため、失敗とも言い切れないのだが)

こういう事を言うと老害と言われてしまうかもしれないが、あの頃のコミュニティの冷え込み具合とシリーズの今後に対する絶望感は、当時をリアルタイムに経験している人でないと理解できないだろう。だからこそ筆者は、7が発表された時は嬉しさの余り泣きそうになったし、7をきっかけにファン界隈が盛り上がりを取り戻したことに安心も出来たのだ。

この流れを次にきっちり繋げ、エースコンバット、ひいてはフライトシューティングというジャンル全体を今以上に盛り上げていくためには、もっと多くの人に、気軽に作品に触れてもらえるようにすることが不可欠だ。

※「エスコンもある意味ダクソやSEKIROみたいな死にゲーだから」という擁護も目にするが、あの手のゲームはアクションやRPGなどの、元々プレイヤーの母数が多いジャンルだから成り立つものだ。エスコンもといフラシューはただでさえ「人を選ぶ」ジャンルであり、そこから更にプレイヤーを篩にかける余裕など無い。それこそ「フラシムでやれ」である。

現在はProject Wingmanを筆頭にインディーズにも良質なタイトルが増えてきており、以前に比べて状況は良くなりつつあるものの、商業作品でエースコンバットと比較できる規模のタイトルは依然として皆無(筆者は今も「H.A.W.X.」シリーズの続編に期待しているが、2以降10年程音沙汰が無いので望み薄しと言えよう)であり、今後もしばらくはエースコンバットが同ジャンルをけん引していく存在となる。

(ProjectACESに限ってそんなことは無いと信じたいが)ここで7の成功に胡坐をかいて新規客層を軽視すれば、エスコンだけでなくフライトシューティングというジャンルが再び衰退し、今度は完全に息絶えてしまう可能性さえある・・・、というのは流石に大げさかもしれないが、それくらいの危機感を常に持ち続ける必要があると、少なくとも筆者は考えている。

まとめ

以上が、筆者がエースコンバット7の「難しさ」に関する見解と、それに対する改善の要望だ。

開発チームも「7が難しい」という評判を理解している事は発売直後のインタビューから明らかだったし、恐らく世界中を騒がせているアレの影響もあって時間はかかってしまったが、この度プレミアムエディションの発売を前に新難易度「CASUAL EASY(カジュアル イージー)」が追加実装された。

この新難易度の詳細については記事を改めたいと思うが、ミサイルの残弾無限化や性能向上、敵の弱体化などに留まらず、一部のギミック緩和などがとられているようだ。前述の様な抜本的な改善ではないものの、7というゲーム仕様の範囲内で最大限の施策を取ってくれたと思っている。

この記事で指摘している改善案はゲーム設計の根幹に踏み込んだものであり、7でこの施策を実現するためには事実上の作り直しに近い労力を要する事が目に見えている。今から7を作り直すよりも、次回作の開発にシフトしてもらった方が良いに決まっている。

この新難易度の最大の成果は、開発チームがユーザからの声に真摯に耳を傾け、問題点の改善に努めているという姿勢を示したことであり、その意味ではリリース前に既に結果を出したと言える。

もう一点、この新難易度で興味深いのが、初心者向けに作られたはずの新難易度が(筆者含む)シリーズ経験者からも好評を得ているという事だ。

【問題②】で触れたギミック系の要素や、今回の新難易度で改善された通常ミサイルの性能や残弾周りは、快適なゲームプレイを阻害する要素としてシリーズ経験者からも不評の多い部分だった。

今回、図らずもその一部が改善され、フライトシューティングとしての快適性や爽快感が劇的に向上したことが、経験者にも好評を得ている理由と思われる。

この事例から分かるのは、初心者に易しいシンプルなゲームデザインは、結果的に経験者・上級者のプレイ体験も向上させると言う事だ。この事を実体験をもって証明できたというのが、新難易度のもう一つの成果だと筆者は考える。

その上で、既に水面下で構想が進んでいるであろうエースコンバットシリーズの次回作では、今一度初心者の目線に立ったレベルデザイン、ゲーム設計が成されることを切に望む。

元々フライトシューティングと言うジャンル自体、「難しい」という(フライトシムなどの)従来のフライトゲームへのイメージを払拭すべく生まれたジャンルだと認識している。そのフライトシューティングが高難易度化し、一見さんお断りなコンテンツになってしまったら本末転倒だ。


今一度「フライトゲームは難しく、人を選ぶゲームである」という原点に立ち返ったゲーム開発を、何卒お願いしたい。

2020/12/8 追記

予想外に多くの反響を頂きビビってますw

引用RT拝見すると、7を未クリアの方にも読んでいただいているようです。

そう言った方にお願いなのですが、どうかエースコンバットを見捨てないで頂きたいです。

確かに7は新規の方や復帰勢に厳しいタイトルでしたが、これはそもそも7がシリーズファン向けに作られていて、初めての方が大勢買ってくれる事を開発チームも予想していなかった、と言うのがあります。

上で触れた通り、新難易度の実装など、開発チームも問題を自覚して様々な施策を講じてくれています。Twitterもよく見ているとの事なので、もしかしたらこの記事も開発チームの誰かしらが読んで下さるかもしれません。

7にはこの記事で触れた事以外にも改善して欲しい事が多くありますが、それらの問題の多くが次回作で改善されるのでは無いかと期待しています。

なので、次回作が出た暁には「7微妙だったしやめておこう」とはならないで欲しいです。(買うのはネットの評判見た後でも良いですが)

それで次回作も同じ感じだったら、その時はボロクソ言って良いと思いますw(もちろん開発者個人への誹謗中傷はNGですよ)


最後まで読んでいただいた方、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。ご意見ありましたら是非筆者のTwitterにコメント下さいませ。

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