日雇い系イベントスタッフが考える人事
桂大介さんのこの記事を読みました。
読みながら 「こんなのジレンマでもなんでもなく、ありふれた日常の一コマじゃん」 と思いましたが、そう感じたのは僕が大きな会社組織に所属したことがなく、日雇い系のイベントスタッフを長年やっていたからだと気づいて 「そうか、世の中の大多数の人は僕みたいな経験や感覚を持ってないのか」 と思い、少しでもジレンマに悩む人々の参考になればと、この記事を書き始めたところです。
僕がやっていた "日雇い系のイベントスタッフ" というのは、主にコンサートの準備~運営スタッフだったんですが。こういうバイトを見たことがある人ならわかる通り、日給制で1日だけの勤務も可能という珍しいタイプのバイトです。
僕は働く日数をできるだけ減らしたかったのと、音楽やライブが大好きだったこともあって、単発で12時間くらい働けてコンサートにも関われるこの仕事が性に合い、不定期とはいえ5年以上は続けていました。
そうすると "チーフ" と呼ばれるバイトリーダーみたいなポジションをやることになります。他のバイトにその日の仕事の内容を説明したり、誰をどの配置につけるかポジションを割り振ったりという、ちょっとした現場管理みたいな役目です。
ただしイベントそのもののスケジュール管理とか、出演者側との交渉、イベント会場の確保とかまでやるわけじゃありません。そこは "イベンター" と呼ばれる会社の従業員たちが責任をもってやっています。僕らはイベントの前日~当日に会場にいって、現場であれこれ動き回るだけです。
朝、勤務する現場につくと、人材派遣会社を通じて集められたアルバイトスタッフが集合しています。コンサートの規模にもよりますが僕がよく行った現場では1日に30人くらいのバイトが必要になります。
ただ不定期な日雇い仕事なので 「イベントスタッフの仕事は今日が初めて」 という人もたくさんきます。同じ日に別のイベントが被ってるときは悲惨で、30人のうち10人くらいが初めて、残りのうち15人は3~4回目の初心者、というような現場もありました。
いま考えるとそういう状況に陥ってしまう人材派遣会社のやり方にも問題があったのかもしれませんが、、、僕はそんな場面をなんども味わったために 「なにも知らない人たちに、なんとか形になるように動いてもらう」 ということを常に考えるクセができてしまいました。いいチームをつくるとかそんな悠長なこと考えてられません。毎回毎回その場にそろったチグハグな人材でどうにか乗り切るしかない。
これは日雇い系の宿命みたいなものだと思うんですよね。ふつうの企業やバイトに比べて人の入れ替わりが信じられないほど激しい。だからチーム内でのポジションってのも流動的で、誰か特定のスタッフに仕事を固定して任せることもあまりしない。そんなことをすれば、その人がいないときの穴埋めがむずかしくなっちゃうので。
バイトリーダー役の "チーフ" を誰がやるかってのも固定されていませんでした。朝に集まった人をぐるっと見回して 「じゃあ今日は君がチーフでいこっか」 とゆるーく決まっていく感じです。勤続年数が長い人ほどチーフをやる可能性が高いのはふつうの企業やバイトと同じですが、それも厳密じゃありません。超雰囲気です。
どうしてそうなるのかを僕なりに考えたんですが、そもそも 「勤続年数」 とか 「先輩・後輩」 という意識がものすごく薄いんですよ。みんなが週に5日勤務してるわけでもないし、僕なんかは1日以下がふつうだったので、僕より後にバイトを初めた人でも、勤務した現場数でいえば僕よりずっと多いなんて人はざらにいた。そうなると自然と上下関係も曖昧になる。
だからたとえば、もともとチーフをやっていたAさんがちょっと現場にでていない間に、Bさんが毎回でるようになっていると、Bさんチーフでいくのが定番になっていたりする。それでたまたまその2人が同じ現場に出たりすると、まぁ雰囲気で 「うーん、じゃあ今日はBさんでいってみよっか!」 と決めるしかないわけです。年功序列みたいな誰の目にも明らかな数字の基準がないからそうなるわけです。たぶん。
僕は毎回のようにこういう光景を目にしていたので、僕にとって記事に書かれていたようなシチュエーションは日常の一コマで。それで書き手の桂大介さんのテンションと僕のテンションがぜんぜん違うという違和感が生じたわけです。たぶん。
そして僕はこういった自分の経験もあって 「世の中の仕事はもっとプロジェクト単位でおこなわれるべきじゃね?」 という考えを持っています。
そうなれば役職も 「その会社における役職」 という固定的なものではなく 「このプロジェクトにおける役職」 という流動的なものになるので、もうちょっと上下関係もゆるくなるでしょうし、個々の能力を発揮する機会もふやせるし、お互いの立場を知るきっかけにもなって、良いことずくめだと思ってます。
その実例のひとつがイベントスタッフでいう 「今日はBさんチーフでいってみよっか」 になるわけです。役職ってほんらいそんな風に、ある課題や問題解決のためにどの人がどんな役割をもてば効率的にうごけるかっていう、便宜上のものでしかないはずだって思うんですよ。
桂大介さんも 「役職で人を評価したり、役職によって自分の価値を裏付けたくなるのを、どこかでやめなければ、このジレンマは解消されない」 と書いていますが、そんな風に "役職" の存在がむしろ仕事を進めるための障害になっているとしたら、こんな馬鹿な話はないと思うわけです。
僕の経験もかなり限定的で偏っていると思うけど、そのおかげで "役職" ってものを仕事を円滑に進めるための道具のひとつとして柔軟に考えられるようになったし、そういう発想を伝えることができればいいなと思い、便乗して記事を書かせていただきました。
最後にもういちど冒頭の記事へのリンクを貼らせてもらいます。
なにか意見や反論や文句があればお気軽にコメントください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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