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自粛生活

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自粛中に思ったことをつらつら
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#現代詩

自粛生活 3

緩やかな自殺行為 マスクの紐が回り回って首にかかる 跳ね上がる光熱費 垂れ下がる二重顎 ふっくら焼けたパン ためこまれた在庫 お持ち帰りされたっていいじゃない 需要があるうちに切り売りしないと どうにかこうにか生きているのだから 生涯で一度はこんなことが起きる予定調和 神様って概念捨てちゃって 仏壇にお供えしたご飯はもう腐っている 減らないラメのアイシャドウ 穴の塞がった耳 粉物に湧き出る虫退治 地震雷火事親父 なんて通用しない 人は忘れる生き物 断捨離で候

自粛生活-2

お湯の飛沫が皮膚に触れる 針の刺さったような鋭い痛みがじわりと滲んでくる おんもはこわいからでちゃいけないってばあばが言っていた 日焼け止めを塗りわすれた首筋は家に帰ってからけだるさに包まれる 献血をして世界を救ったような気になっている 夢枕の残り香もすでに塗り替えられて ラーメンの汁がこぼれ落ちたドラマティック ワイシャツのボタンを外して 繕うのは上手なの 意外と似合っていたボーダー 僕より長くて黒い髪の毛 絡みつく指先 梅が咲いたことも知らないで春はあけぼの 雀だけが

自粛生活

ふっくらしてきた気がする 生活にいらないものが増えてきた ぼくの中に注がれたものたちよ お母さんの愛情に埋もれていた3歳の夏 クリームソーダのさくらんぼだけをこっそり食べた罪悪 ゴムをつけてくれなかったじゃないか あれだけ匂わせておいて何もくれないのかい 内臓の下処理を怠った生肉が腐っていく 楽園に行きたいだけなのにどうして 常に67点の生き方をしているからに決まっているだろう はげたお化粧にさようなら ぼくを嫌っているあの子にも生活があって呼吸をしている 実感を伴った言葉は