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フルートデュオアランCD収録曲解説

皆さんこんにちは!フルート奏者の岩崎花保です。
2022年1月22日に発売となったFlute Duo Allantの1st アルバムには、フルートデュオの王道作品が全部で7曲収録されております。

フルートデュオアランの詳しい説明などははこちら↓をご覧ください♪

今回は収録した7つの作品の解説をしていきたいと思います。演奏と併せて文章もお楽しみいただけましたら幸いです。そして、これを読んで興味を持って下さった方はCDのご購入もご検討いただけたら嬉しいです…!どうぞよろしくお願い申し上げます♪

〜もくじ〜
①曲目
②作曲者
③生誕〜死没
④出身
⑤職業
⑥家族に音楽家がいた場合はその職業
解説

T.Boehm / Trois Duos de Mendelssohne & Lachner op.33

①メンデルスゾーンとラハナーの主題による3つの二重奏曲OP.33
②テオバルト・ベーム
③1794-1881  87歳没
④ドイツ
⑤フルート奏者、作曲家、発明家

〜3つの愛の歌〜
1楽章の原曲…メンデルスゾーン作曲/ハイネ詩『恋人よ打ち明けてくれ』
2楽章の原曲…メンデルスゾーン作曲/クリンゲマン詩『秋の歌』 
3楽章の原曲…ラハナー作曲/リュッケルト詩『私はあなたを愛しています』

円錐ベーム式フルートの開発をはじめ、フルートの現在のベースを作ったベーム。もちろんトラヴェルソなどの〈それ以前の笛〉も素晴らしい楽器なのですが、彼がいなかったらフルートの世界はこんなにも発展しなかったかもしれませんね。
第1楽章は始まりにふさわしい爽やかな曲、第2楽章はこのCDの中では貴重な短調です。
第3楽章ではドイツ語でアイラブユー(ich liebe dich)という歌詞を永遠と歌っています。曲のテンポもゆっくりしっとり重いので、自分が恋人にこの感じで愛してると言われ続けたら重たいな…と思いました(笑)

F&K.Doppler / Rigoletto-Fantasie op.38

①リゴレット幻想曲OP.38
②フランツ・ドップラー/カール・ドップラー
③1821-1883  61歳没/1825-1900  74歳没
④ハンガリー
⑤フルート奏者、作曲家、指揮者
⑥甥(アールパード)作曲家

ドップラー兄弟は超絶技巧のデュオとして、自作曲でヨーロッパをまわり大変な人気がありました。リゴレット幻想曲は共作なので、お互いの持ち味が存分に発揮されたド派手な作品となっています。ちなみに2人ともベーム式のフルートが嫌いだったそうで、生涯旧式のフルートを使ったそうです。
ドップラーの作品には独特の〈ため〉みたいなものがありますよね。これはフルートを吹いていると昔からCDを聴いているので当たり前になってしまっているのですが、クラシックを専門としている演奏家でもフルート奏者以外はドップラーのことを知らないことが多いので、ピアニストと初めて合わせをすると高確率で「何その間は?!」となります。そして自分の身体にはずいぶんドップラー節が染み付いているんだなぁと気がつくわけです…!

W.A.Mozart (arr Y.Atsushi) / Rondo Alla Turca

①トルコ行進曲
②ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトarr.山中惇史
③1756-1791  35歳没 
④オーストリア
⑤ピアニスト、作曲家
⑥父(レオポルド)ヴァイオリン奏者、作曲家

モーツァルトについて今更私が解説することはない気がしますが、改めて他の作曲家と比べると本当に若くして亡くなってしまったんだなぁと思います。フルートの作品はある程度残してくれているし、シンフォニーやピアノコンチェルトなどの協奏曲でもそのメロディの美しさに触れることができますが、長生きしてくれていたらもっと…と、どうしても考えてしまいますね。
今回は山中惇史のセンスが足された〈超絶技巧トルコ行進曲〉をお楽しみ下さい。最後のトリプルタンギングは舌が千切れるかと思いました。藝大出身の作曲家に編曲をお願いすると、どう転んでも難しいものが納品されるので私たちもドキドキワクワク(という名の動悸)しながら演奏しました!笑

A.B.Furstenau / Rondo Brillant op.102

①華麗なロンドOP.102
②アントン・ベルンハルト・フュルステナウ
③1772-1819  47歳没
④ドイツ
⑤フルート奏者、作曲家
⑥父オーボエ奏者、息子フルート奏者

フュルステナウといえば音の花束のエチュード。音の花束といえばコンクールの一次試験や入試の課題によくなる曲…と、音大に行った人なら昔を思い出して心臓がキュッとなる作曲家かもしれません。大人になって改めてエチュードを練習しているのですが、作品としてきちんと完成されているのでフルート奏者にとっての〈ショパンのエチュード〉かもしれないですね…。というのは流石に言い過ぎかもしれませんが(笑)大切なレパートリーであることには間違いありません。もっと演奏会でも演奏されたらいいのになぁ。
華麗なロンドは、名前の通りフルートらしい華やかさを持つ曲です。全体を通してフルート2本の会話をピアノが補助しているような印象を受けますが、フュルステナウはこの曲を親子で演奏したそうなので、それはそれは息がピッタリだったことでしょう。終始明るいですが、合わせるのは難しくシビアな曲です。

E.Kohler / Valse des Fleures op.87

①花のワルツOP.87
②エルネスト・ケーラー
③1849-1907  58歳没
④イタリア
⑤フルート奏者、作曲家
⑥父(ヨーゼフ)フルート奏者、兄(フェルナンド)ピアニスト

一般的に花のワルツと聞くと、チャイコフスキー作曲のバレエ音楽「くるみ割り人形」の方が思い出されるかと思いますが、笛吹き的にはこちらの花のワルツも脳内に浮かんできます。曲調も可愛らしいですし、それほど難易度が高くない&他の楽器でも演奏可能なので、コンサートでも人気の曲かと思います。ケーラーが生まれた頃はウィーンやロシアでワルツが大流行していたそうで、ケーラー自身もこの作品以外に沢山のワルツを残しています。フルーティストにとってはケーラー=エチュードという印象が強く、どうしても先生に怒られながら練習した日々を思い出してしまうのですが、間にこういった楽しい曲を挟めば、そんなに嫌にならずに乗り越えられたかもしれませんね…?

E.Kronke / Deux Papillons op.165

①二匹の蝶々OP.165
②エミール・クロンケ
③1865-1938  73歳没
④ドイツ
⑤クラリネット奏者、ピアニスト、作曲家

絵画や写真で見る蝶は美しいのに、実際に道端で遭遇すると怖くて逃げ回ってしまい、その急に動いたことによる気流の発生で余計に蝶が近付いてくる…というのを今まで何回やってきたかわかりません(笑)私には想像上で留めておくぐらいが丁度いい生き物です。まじまじと見ると結構グロテスクだと思うんですけど、皆さんはどう思いますか…?
クロンケにとって蝶がどのような存在だったかはわかりませんが、この作品はフルートの煌びやかな音色を上手く使い、優雅に飛び回る蝶の姿が美しく描写されています。妖艶というよりは爽やかに、太陽の下でキラキラと羽が透け自由自在に舞う様子が目に浮かんできます。1楽章の冒頭の音型はふんわりと飛ぶ様子を、2楽章に出てくる2音間の行き来は「ひらひら」を表しているのではないかなぁと思いながら演奏しました。

F.Doppler / Andante et Rondo

①アンダンテとロンドOP.25
②フランツ・ドップラー

初めて買ってもらったCDにドップラーのアンダンテとロンドが入っていて、なんだこのかっこいい曲は!いつか絶対に吹きたい!と思ったことを昨日のように覚えています。ハンガリー田園幻想曲もそうですが、ドップラーの作品に多用されているジプシー音階(ハンガリー音階)というのはどこか演歌に近いものを感じますし、日本人の肌にあっているから愛されているんだろうなと思います。
1stと2ndに振り分けられた主旋律のバランスが絶妙でどちらを吹いても楽しいですし、演奏する人が変わるとまた印象がガラリと変わるのもこの曲の面白いところですね。まさに名曲!エヴァンゲリオンに乗ったシンジとカオルくんのダブルエントリーシステムのような2人のシンクロ率をお楽しみ下さい。

いかがでしたでしょうか?個人的にはクラシックを少しでも身近に感じてほしいと思っているので、なるべく自分の言葉でまとめてみました。

CDのご購入は上記のBASEのサイトにて承っております。

私たちのアルバムが長く、そしてたくさんの方に愛されるものとなりますように…♪

岩崎花保

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