見出し画像

日本企業にもできそうなAIスタートアップのネタ

日本にもいくつかの生成AIベンチャーがあり、独自モデルに投資している会社もあるが、正直言ってシリコンバレーとは勝負にならないはずだ。OpenAIは、GPT-4の訓練に数か月、百数十億円以上をかけた(1日換算数億円)とサム・アルトマンCEOが述べたことがある。目立った動きのないアップルですら、AIモデルの構築に1日数億円かけている、といわれている。

Siriの強化プロジェクトは元Googleのエンジニアらが在籍しているとされるが、人数はたったの16人。世界で約22万人のマイクロソフトに比べれば800人規模のOpenAIは雑魚、Appleのチームなんてプランクトンのような存在だが、GPT-3.5程度の性能は出せる見込みだという。日本のベンチャー企業に、1日数億円の電気代(しかも日本の電気代は高いから向いてない)を使わせてくれる投資家、数万、数十万個単位のGPUを買ってくれる気前のよさなどあるはずがない。日本のAIスタートアップは、投資家からおカネを吸い上げる純粋な手段になっている可能性すらある。

「日本のAIスタートアップ」は何をしたらいいのか?

執筆時点で募集中のポジションでいうと、OpenAIの研究職の給与は日本円換算で3000万円〜5500万円。

Compensation, Benefits and Perks
The annual salary range for this role is $200,000 – $370,000. Total compensation also includes generous equity and benefits.
・Medical, dental, and vision insurance for you and your family
・Mental health and wellness support
・401(k) plan with 4% matching
・Unlimited time off and 18+ company holidays per year
・Paid parental leave (20 weeks) and family-planning support
・Annual learning & development stipend ($1,500 per year)

Research Scientist

日本のAI研究者がシリコンバレーで働かずに日本国内で働いているとしたら、その半分くらいの人は、英語ができないか、AIの専門知識がないかのどちらかと疑ってよい。そのくらい疑ってかからないと、変な話に引っかかる。もう半分は愛国者か外国嫌いか家族の事情で日本から離れられない人。関係者の皆さんの努力をあざ笑う意図はないのでこれ以上は深入りしないが、自分なら国内のLLM研究コミュニティーには近づかない。半分のうちのほとんどは、ああいう方面のそういう人たちである。

では、”日本発のAIベンチャー”は夢物語なんだろうか? 次のふたつのアイデアなら、国内の元気のよい若者にも起業可能だと思う。

カスタマイズ型AI

OpenAIやAnthropic、Google Bard、メタのLlamaなど、汎用LLMを日本企業が作っても予算や人材で勝ち目はない。であれば、用途特化型のLLMまたはその周辺技術を、OpenAIの力を借りて作ればよい。

いま、トランスコスモスやベルシステム24のようなカスタマーサポート代行企業向けにLLMを売り込みたいとする。このとき、インフラとしてはメタがオープンソースで提供しているLlama 2などのモデルを使い、教師データとしてChatGPTを使えばよい。たとえば、商業施設の電話窓口に「駐車場には何時まで入場できますか?」という問い合わせがあった場合の回答を訓練したいとき、ChatGPT側に参照データを仕込んでおき、GPT-4の回答を模範解答としてLlama 2を訓練すれば、理論上はGPT-4並みの性能を持つモデルを、自社インフラに用意できる。これは、先行事例としてRamp インテリジェンスがある。

なお、この方法はOpenAIの利用規約に違反する。

What You Cannot Do.
You may not use our Services for any illegal, harmful, or abusive activity. For example, you may not:
Use Output to develop models that compete with OpenAI.

Terms of use

だが、実際には取り締まられていない。シリコンバレーの流儀では、賠償金<売上額なら、やっていい。これが本場の”コンプライアンス”である。日本のベンチャー企業も、ベンチャーを名乗るならこのくらいはやらないといけない。

LLMルーター

モデルによって得手不得手があることがわかってきている。上記のように特定分野では安価なモデルを提供するAIベンダーもありえる。「LLMルーター」とは、社内のアプリが発生させたモデルへのリクエストを、実際にはどの会社のどのモデルに送信するか決めるアプリケーション層ルーターのことだ。恐らく、プライバシーデータの変換(たとえばメールアドレスや個人名を自動的に匿名化する処理)も受け持って、情報漏えいリスクにビビってAI投資ができない日本企業に、LLMルーターを通せば安全である、という夢を売って儲ける。海外の先行例としてはMartianがある。「LLMファイアウォール」「LLM匿名プロキシー」なんて、いかにも儲かりそうな気がする。日本企業には。早い者勝ちだから、商標だけでもとっておいたらどうだろうか。

いつの時代もタイムマシンに乗ろう

孫正義もホリエモンも、タイムマシンに乗って儲けた。AIで儲ける日本人も、オリジナルにこだわるメンツを捨てたタイムマシン乗りであるに違いない。