横顔
「“まんまる”ってさ、誰が最初に言ったのかな。可愛いよね。まるじゃなくて、まんまる」
「たしかにね」
満月の夜、家の近くのウォーキングロードを散歩していた。蛍光のピカピカ光る首輪をつけた散歩中の犬が通り過ぎた。
「可愛いものってだいたい丸いよね。猫とかあざらしとかコロッケとか。私も丸くなったら可愛くなるかな」
「コロッケは知らんけど。君は丸くなくても可愛いよ」
今日の夕飯の話をするように言う君の横顔を見てこそばゆくなった。
ウォーキングロードに植えられた花が、月光に照らされて白く光っている。
「お手玉みたいな老夫婦になりたいな。丸くて、柔らかくて、子どもに投げられる」
「投げられるのは嫌だけど、いいね」
ウォーキングロードを抜けて、コンビニの光に吸い込まれた。
和菓子コーナーの前で、「これが一番お手玉っぽいよ」と豆大福を指差した。
「それにしよう。お手玉の第一歩だ」
袋はもらわず、それぞれ1つずつ手に持った。
「投げちゃダメだよ」
「投げないよ」
「帰ったらお茶を淹れよう」
前より横顔が丸くなったな、と思いながら家に帰った。
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