見出し画像

ジェフ・ベックについて

ロックギタリストのジェフ・ベックが、1月10日に逝去したとのニュースがあった。1944年6月生まれ、享年78歳とのこと。

最後に来日したのは2017年であるが、僕は、2月7日(最終公演)の「尼崎アルカイックホール」でのライヴを聴いている。

今から約6年ほど前の話であるから、既に70歳を超えていたはずであるが、外見も演奏も非常にエネルギッシュであり、老いをまったく感じさせないものであったと記憶している。

「ギタリストには2種類しかいない。ジェフ・ベックとジェフ・ベック以外だ」と誰かが言ったという話を前に耳にしたことがある。ちなみに、その誰かというのは、ポール・ロジャースだという説、ジョン・ポール・ジョーンズだという説、果てはキース・リチャーズだという説等、いろいろとあって定かではない。いずれにせよ、同業者であるプロのミュージシャンたちからも崇拝されるような別格的かつ孤高のギタリストであったことに関してはおよそ議論の余地はない。

日本で、俗に「3大ギタリスト」という呼称があるが、あれは単に同じバンド(ザ・ヤードバーズ)に所属していたことのあるギタリストという以外には、たいした意味はないと思う。エリック・クラプトン、ジミー・ペイジと、ジェフ・ベックではそれぞれ路線が異なっており、ギタリストとしての優劣を単純に比較するのは難しい。

エリック・クラプトンは、かつては神と崇められた天才ギタリストであるが、若い音楽ファンにとっては、やけにギターのうまいシンガーでありソングライターというイメージしかないのではなかろうか。クリームの頃は、ハードロックの元祖のような演奏を繰り広げたものだが、それはもう大昔、60年代の話である。だから、今のクラプトンのギター・プレイは、かつての本気のクラプトンの演奏を知る音楽ファンからは、しばしば「手抜き」だと言われたりする。

ジミー・ペイジは、単なるギタリストというよりも、レッド・ツェッペリンという70年代に最も成功を収めたロック・バンドのリーダーであり、コンポーザー、音楽プロデューサー、マーケター(=ビジネスマン)である。スタジアム・ロック、産業としての今日のロック・ミュージックのビジネスモデルの創始者のような人物である一方で、ギタープレイは「スロッピー」(雑という意味)であるとか評価されてしまう。プレーヤーとして上手に演奏することには、あまり興味がないのであろう。

第1期ジェフ・ベック・グループは、もしかしたら、もう1つのレッド・ツェッペリンになっていた可能性だってあったのかもしれないが、結果はそうはならなかった。ジェフ・ベックとジミー・ペイジの資質の違い、スポーツ選手でいえば、純粋に選手として優秀な人と、選手としてよりも監督やGMとしての資質の方が抜きんでた人の差のようなものが少なからず関係しているように思えてならない。

いずれにせよ、ジェフ・ベックは、生涯を通じて、ギタリストとしてのおのれの技量をきわめること以外に余念がなかったのではないだろうか。剣の修行にひたすら邁進する剣客のようなものである。演奏スタイルや音楽性は常にめまぐるしく変遷し、ロックからフュージョン、テクノとジャンルにとらわれることがなく、いろいろな分野の一流ミュージシャンとも共演している。

僕は、ロックを特に好んで聴いていたのは中高生の頃で、大学生になってからは、クラシック音楽の方に傾倒していったので、ジェフ・ベックのアルバムで個人的に愛着があるのは、70年代後半のソロアルバム期の前半あたりになる。「ブロウ・バイ・ブロウ」「ワイアード」などは中高生の頃の僕の愛聴盤であった。いま聴いても、少しも古めかしくなくて、新譜だと言われても、納得してしまうような演奏がそこでは繰り広げられている。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?