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「仕組み債」について

前に、「仕組み債」について、「中身はギャンブルに近い」と書いた。

その「仕組み債」の販売を停止する銀行がいくつか出てきて、今後も追随する銀行が増えそうであるという。

「仕組み債」の仕組みはいろいろある。共通して言えることは、デリバティブが組み込まれているので、仕組みがわかりにくいということである。仕組みがわかりにくいと何が良いかというと、発行する側や販売会社側からすれば、どれだけ収益を抜いているかわかりにくく、ある意味、やりたい放題だからである。投資家側にとっては、何も良いことはない。わけのわからない商品を押しつけられることになる。

もともと、金融商品というものは、販売側と投資家側における「情報の非対称性」は避けられない。だから、販売する側には「説明責任」が求められるし、そもそも「適合性の原則」と言って、いくら説明しても理解できないだろうなあと思われるような複雑でハイリスクな投資運用商品は、高齢者とか投資初心者には売るべきではないとされる。

「仕組み債」などはプロ用商品であって、個人投資家には相応しくない。銀行の窓口には、いろいろなお客さんが来店する。目先のメリットに目が眩んでハイリスクな商品に手を出したがる人も少なくない。それでも、「適合性の原則」が優先されるべきである。「売らないのも親切」だからである。

投資の世界には、プロとアマが混在している。金融商品取引法では、プロ投資家相手の場合と、アマ投資家相手の場合とでは、顧客保護の要求水準が全然異なる。前者はプロだから、基本的に自己責任である。十分に理解した上でリスクを取る分には、どうぞご勝手にということになる。アマを同列に扱うわけにはいかない。野放しにするとプロの餌食になるからである。

銀行もプロである。一般投資家はカモである。親切そうに提案セールスしてくれる商品は、基本的には「販売する側(銀行)が儲かる商品」だからである。ギャンブルというもの全般に言えることであるが、どっちに転んでも、胴元は確実に儲かるようにできている。

「ポジショントーク」という言葉がある。「株式・為替・金利先物市場において、買い持ちや売り持ちのポジションを保有している著名な市場関係者が、自分のポジションに有利な方向へ相場が動くように、市場心理を揺さぶる発言をマスメディア・媒体などを通して行うことを指す和製英語」(Wikipedia)のことをいう。

何かの商品を推奨するような人がいたら、その人がどういう人物で、マーケットがどちらに動けば得をする人なのかよく考えてから、彼の話の信憑性を判断するべきである。

不動産投資家で大量の投資物件を保有している人物が、「まだまだ不動産価格は上がる」と言っていたとして、彼が本当にそのように考えているかどうかはわからない。もしかしたら、本音では「そろそろ不動産価格は冷え込みそうだ」と判断して、裏側では保有物件を処分し始めているかもしれない。その場合、自分が撤収するまで不動産価格が下落しないように、「まだまだ上がる」と言っている可能性はある。あるいは、不動産価格が下落したら、銀行から追加担保を求められるかもしれないから、「まだまだ上がる」と言っているだけなのかもしれない。

人の話は額面どおりに受け取らないことだ。

何度も言うが、投資の世界はプロとアマが混在している。アマはアマらしい戦い方をした方が良い。人が勧めてくれるものに安易に手を出さないこと、自分で仕組みを理解できないものには手を出さないこと。それだけでも変な商品を背負い込むリスクは回避できるだろう。

「仕組み債」とは、その変な商品の典型である。


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