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みずほFGの投資銀行事業について

米国のゴールドマンサックス(GS)は、投資銀行・トレーディング部門に純営業収益(事業会社の売上高に相当)の6割以上を依存するが、そうした現状に危機感を持っているようだ。

22年は米連邦準備理事会(FRB)の大幅利上げや米景気の悪化で企業の資金調達や買収といった活動が冷え込んでおり、投資銀の収益環境は当面厳しい状況が続き、投資銀の不振が会社の収益の足を引っ張ると見ている。市場運用も安定的に高い収益を上げ続けるのは難しい。

今月18日、同社は大規模な組織再編を発表、主力の投資銀行と市場運用の業務を1つの部門に統合する等、主要事業を3部門に集約。厳しい収益環境の継続を見据え、富裕層向け事業等の比較的収益の安定したビジネスを強化することで、長年の課題だった景気・市況に左右されやすい事業モデルから脱却、投資銀・市場依存の事業モデルを変える方向に舵を切ったということである。

同業のモルガン・スタンレーも、ここ数年、資産運用会社やネット証券の買収などを通じて収益の安定を図りつつある。

経営不安を抱えるスイス金融大手クレディ・スイスは米国の証券化商品部門の売却を金融機関に打診中である。

このような欧米の金融機関の動きに相反するように、みずほフィナンシャルグループは、米国で金融ビジネスを拡大する余地は大きいと見ており、今後、「投資銀行事業を伸ばす」考えであるという。

同社の木原社長は、「リスクとリターンの兼ね合いや市場の成長性を考慮しながら、みずほ全体の事業ポートフォリオを見直している。そのなかで米国にはさらに経営資源を投下する」「むやみに貸し出しを増やすより、投資銀ビジネスを伸ばしたい」と言いつつ、足元での投資銀の収益環境は厳しいものの、事業の多様化を図ることで収益のブレを抑え中長期の成長につながるとの考えであるという。

ここで言う投資銀行業務とは、まさにGSの既往の得意分野である。得意分野であるにも拘らず、そうした景気・市況に左右されやすい部門への依存体質を改めて、事業部門再編により収益安定化を図ろうとしているGSに対して、みずほはリスクを取ってでも中長期の成長を選択するということのようである。まさに戦略としては対極的である。

米国の業界大手の「逆張り」に果敢にチャレンジしているのか、感性が少々ズレているのか、みずほの場合、果たしてどちらなのであろうか?

国内は日銀のいわゆる「ゼロ金利政策」の影響で、預金・貸出では収益が稼げない状態が続いている。そうした背景があって、メガバンクは伝統的な商業銀行業務以外のところで収益を稼ぐしかなく、海外部門や市場部門でリスクを取って収益を稼いでいる。一方、そういう芸当ができない地銀などは、過半数が赤字の状態である。

みずほの「米で投資銀行事業伸ばす」という選択が、他に打ち手がなくなっての、苦し紛れ、あるいはヤケクソの選択でないことを願いたい。

ただでさえ、本業の貸出のところでは、マレリ、ソフトバンク、昭和電工という「みずほ3爆弾」がある。既に第1発目の爆弾であるマレリは弾けている。本業の方での貸倒償却費用を賄うために、海外のカジノに稼ぎに行くようなノリで投資銀行業務に前のめりに突っ込んでいくようであれば、さらに火傷を負うようなことになるかもしれない。

投資銀行業務は、プロが生き馬の目を抜くような世界であり、今の邦銀など、鴨が葱を背負って来たようにしか見られないくらいに彼我の実力差たるや隔絶している。

みずほの木原社長は言及を避けているようであるが、クレディ・スイスが売却したがっている米国の証券化商品部門を、みずほが買収したりするようだと、いよいよマズいかもしれない。

僕はみずほの株は持っていないけど、もし持っていたら、さっさと売り払うであろう。


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