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六角精児さんについて

六角精児は、僕が好きな役者の1人である。ドラマ「相棒」で鑑識係の米沢守を演じている他、いろいろな役柄でテレビドラマにわりとよく出ているが、もともとは舞台俳優出身者である。

六角さんの冠番組に、NHK「呑み鉄本線・日本旅」という紀行番組のシリーズがある。単に日本全国のローカル線を一泊二日ペースで1人旅をして、列車の中で缶ビールを片手に風景を愛で、途中下車しては沿線の酒蔵を訪ね、廃線を訪ね、地元の居酒屋を訪ねるだけのヤマもなければオチもない番組である。15年からスタートして、年4,5回程度の不定期放送ながら、隠れた長寿番組である。

六角さんは音楽にも造詣が深いようで、上記の番組のBGMはたぶんご自身のテイストで選曲されている。その中には自身のバンド「六角精児バンド」の楽曲も含まれている。バンド活動はかなり年季が入っているようである。もちろん、本業はあくまで役者とはいえ、バンド活動も地道にやっている。僕も2年ほど前に、神戸の三宮のライブハウス「チキンジョージ」でのライブを聴きに行ったことがあった。聴衆の平均年齢はかなり高めであったが、なかなか盛り上がっていた。たしか静岡県から来たというご婦人方のグループが僕の隣のテーブルにいたと記憶している。

六角さんは、兵庫県出身であるが、育ったのは神奈川県相模市である。お母さんが教育ママであったため、中学時代までは優等生で、進学校である神奈川県立厚木高校に入学している。ところが、高校入学直後のテストで540人中400番台を取ってしまう。お母さんは当然に怒り狂ったらしいが、六角さんは、「まあ、しょうがないか」と、勉強ができない自分を認めたのだという。あるがままの自分を認めて、あまり無理をしない、頑張らないというのが、その後の六角さんのモットーになる。

浪人して、学習院大学に入学するが、ギャンブルにハマり、バイト代では追いつかず、借金を重ねることになる。「相棒」に出演しはじめた頃も、まだ借金返済に追われていたらしい。結婚も4回している。ちなみに2回目と4回目の奥さんは同じ人だという。

お酒が好きで、いろんな数値が悪いのは、自作の楽曲「お父さんが嘘をついた」の歌詞そのまんまである。それでもお酒はやめないし、自然体で生きている。こうした肩に力の入っていない六角さんの佇まいに憧れを感じてしまうのだ。

今の世の中、すぐに他人に対して「頑張れ」と言う。僕なども、ついつい「頑張れ」と言ってしまう。あるいは、自分自身についても、「頑張らなければ」と力が入ってしまう。

「頑張れ」と言われて、実力以上のパフォーマンスが発揮できれば良いが、そういうケースばかりとは限らない。無責任な「頑張れ」は、時として、とても残酷な言葉であるかもしれない。

そういうようなことを、僕もこの年齢になって、だんだんとわかるようになってきた。たまには頑張ることも必要な場合もあるが、そんなことは他人から言われることではなくて、自分自身で判断することである。

他人に多くの期待をしなければ、「頑張れ」などと言って檄を飛ばす必要もない。どうせ、人間の能力などは、たかが知れているのである。ボチボチの成果を上げてくれれば、大いに感謝する。まれに期待以上の成果を上げてくれたら、もっともっと大いに称賛する。

自分自身についても同様である。長いこと生きていれば、自分がどの程度の人間か、何ができて、何ができないかくらいわかっている。やれそうなことだけをボチボチやって、できないことにチャレンジして自分を擦り減らすようなことはしない。

そういうのが、身の丈に合った生き方というものである。

六角さんを見ていると、そういう生き方を示唆されているような気がするのだ。


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