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【自動車業界、中の人が教える】テスラの次に来る新興車メーカーはココ!

前回、こちら前回記事が大変好評でした!


今回【自動車業界、中の人がおしえるシリーズ】第2弾。

「テスラの次に来る新興車メーカーはココ!!」をお送りします。

実は電気/次世代自動車に参入しようとしているのはテスラだけではありません。電気/次世代自動車はガソリン車と比べると、各部品のモジュール化が可能で、エンジン周りのノウハウが不要なため、参入障壁が比較的低く世界各地でベンチャー企業が立ち上がっています。

テスラのように、躍進を遂げるメーカーは出てくるのか?ポストテスラとなりえる新興メーカー、また彼らが直面する課題について、今回は解説します。

自動車業界の方はもちろん、投資を考えておられる方、新しい技術、ベンチャー企業が好きだという方にぜひとも読んでいただきたいです。

1.Amazonと提携、ポストテスラ筆頭「Rivian」

Rivianはミシガン州プリマスに本社を置く電気自動車(EV)新興メーカーです。創業は2009年、機械工学エンジニア出身のRJ・スカーリンジ氏(37歳)が立ち上げました。生産拠点はイリノイ州ノーマルの旧三菱自動車工場。他メーカーの生産拠点を引き継いだという点でテスラとよく似ています。(フリーモントのテスラファクトリーは元々GM、トヨタ合弁会社の工場でした)

Rivianの強みはAmazonの提携していること。多額の資金出資、そして10万台の配送用EVの発注が決まっています。商用車で10万台という数量は非常に大きいものであり、一定の受注が確保できているのは大きな強みだと言えます。

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一般向けには、ピックアップトラック型の『R1T TRUCK』、そして7人乗りSUV『R1S SUV』の発売予定です。ビックアップトラックはアメリカで1番人気のある車種であり、テスラの「サイバートラック」とは異なるオーソドックスなスタイルは多くの人に受け入れられそうです。また居住性を重視した『R1S SUV』も7人乗り大型SUVでアメリカで売れ筋のカテゴリーで、一定の需要が見込めます。

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RivianのEVの特徴はskateboardと言われるプラットフォームを利用していることです。電動パワートレイン(モーターや電池)は、このプラットフォームに内蔵されます。これにより多くの車載空間を取ることが可能になります。また、プラットフォームを他社にライセンス提供する計画もあります。

IT大手、Amazonと組むRivian。ポストテスラの筆頭です。

2.GMと契約!FCV生産「Nicola」

Nicolaは20年3月にアメリカナスダック上場で話題になったアメリカベンチャー企業です。Nicolaが他新規参入のベンチャーと異なるのは「水素燃料電池」で駆動する自動車(FCV)開発を行っているところです。

「水素燃料電池」は排出されるのは「水」だけのクリーンなエネルギーであり、また高いエネルギー効率という特徴があります。しかし、開発の難易度が高く参入が難しい…

そんな中、今最も量産に近づいているベンチャー企業がNicolaです。Nicolaはセミトラック(トレーラーの先頭車=牽引車)の開発を進め、すでにビールメーカー等と契約を結んでいます。

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FCVは燃料ステーションの整備にコストがかかり、どうしてもステーションの数が限られます。そのため乗用車では燃料供給において不自由があります。しかし決まったルートを走るトラックに関しては,配送ルート内にステーションを組み込むことで燃料補給問題を解決することができ、乗用車より商用車の方が普及に適しています。実際に開発、量産ができれば大きな需要を見込むことができます。

 また燃料電池とEVを組み合わせたピックアップトラック、「バジャー(Badger)」の予約も開始しています。そしてこの「バジャー(Badger)」、アメリカ、自動車ビッグ3のGMがと提携し、生産することが発表されました。

大手メーカーとの提携という非常に大きな後ろ立てを得たNicola。テスラに続く新興メーカーに……となるはずでしたが、ここにきて提携にあたり、技術面で虚偽の報告をしていたのではないかという疑惑のレポートが発表。この疑惑を受けてCEOが辞職。GMとの提携に暗雲が立ち込めています。

実際にGMと提携し、量産することができれば、テスラに次ぐメーカーになることは間違いないのですが、果たしてその実力があるのか。よくも悪くも目を離すことのできないメーカーです。

*個人的にNicolaのNZTというバギーがとてもカッコよいと思うのですが、8万ドル(約850万円)はさすがに高い…

3.その速さ、圧倒的!Tesla Model Sの元チーフエンジニアが率いる「Lucid Motors」

Lucid MotorsはTesla Model Sの元チーフエンジニア、Peter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏がCEOを務めるEVメーカーです。その特徴はメルセデスSクラスに取って代わる、高級車の開発。

公式HPは↓


先日発表されたオール電化の高級セダン「Lucid Air」、Dream Editionは1080馬力で、ゼロから60マイル(約96km)まで2.5秒と圧倒的な加速力を持っており、各社のスーパーカー並み。加えて先進運転支援システムも搭載、34インチの湾曲ガラス製5Kディスプレイがドライバーの前に設置と最新機能てんこ盛り。

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その分お値段も高めでフラッグシップモデルは16万9000ドル(約1800万円)。お求めやすいベースモデルでも8万ドル(約850万円)から。

アリゾナ州に工場も完成し、現在生産に向けて準備を進めています。

4.政府からの支援が後押し!新興中国EVメーカー3社

現在、アメリカの証券市場に上場している中国EVスタートアップが3社あります。

一つ目は2018年9月にニューヨークで上場した上海蔚来汽車(NIO)。中国国内でEV、現在2つのモデル、ES6とES8を発売中で、価格はそれぞれ35万8000人民元(約550万円)、44万8000人民元(約700万円)。特徴はダッシュボードに付属したNOMIというAIロボットヘッド。下の動画を見ていただければわかるのですが、ドアやルーフトップの開閉や車内エンターテイメントを話しかけるだけでこなしてくれる優秀なチャットボット。非常にかわいらしい感情表現するBOTは「未来のクルマ」を象徴し、魅力的です。

そして特徴的なのはバッテリー交換システム

洗車マシーンのようなボックス状のステーションに車を持っていくと、フル充電されたバッテリーに替えてもらえ,ユーザーは充電作業を省くことができ、かつバッテリーの持ちを気にすることなく走行できる。これは他社にない大きな利点です。

二つ目は2020年7月にナスダックに上場した理想汽車。

中国でも異色の高卒起業家、「李想(Li Xiang)」が立ち上げた理想汽車は19年12月に「理想ONE」を発売。「理想ONE」は実はEVではなく、プラグインハイブリッド車(PHEV)。EVの開発で技術、資金面での問題に直面した結果、ガソリンエンジンで発電できるレンジエクステンダーEVの量産化に切り替え、予約段階で1万台,すでに5000台以上を発売しています。

開発コストのかかる純EVではなく、ハイブリッド車へシフトした理想汽車。2020年Q1では黒字化も果たしており、今後売上、利益を上げていくことが予想されます。

三つ目は2020年8月にニューヨーク証券取引所へ上場した小鵬汽車。小鵬汽車の強みはスマホメーカーXiaomi(小米科技)とEC大手のアリババという中国を代表するメガIT2社と太いパイプを持つこと。

アリババのECサイトからも販売を実施しており、18年11月にSUV「G3」20年5月には2車種目となるスポーツセダン「P7」を発売。これまでに合計で2万台以上を納車しています。

G3は運転支援技術も搭載しながら、価格は14万元(約220万円)から19万元(約300万円弱)と若い層でも購入できるよう抑えられています

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車内でスーパーマリオもプレイ出来るという社内エンターテインメントも充実。普及価格帯で勝負するEVメーカーとして伸びていく可能性は大いにあります。

5.新興EVメーカーが直面する2つの課題

 これまで紹介してきたEVメーカーには大きな課題が2つあります。1つは「量産することの難しさ」です。試作段階でコンセプトカーを作り上げること大量に車を安定した品質で生産し利益を上げることは大きく異なります。19年にはダイソンがEV事業からの撤退を発表、20年に入ってからは中国BYTON汽車が中国市場での事業停止を表明しました。

 自動車生産は生産を開始するための初期設備投資が非常に重く、また安定した品質で量産することは簡単ではありません。(テスラも生産当初最初の1台が生産されるまで12時間以上かかったという逸話があります)

 アメリカのRIvian、Nicola、Lucid Motorsはこれから量産を開始するにあたり、利益を上げる生産をすることができるのか。注目していく必要があるでしょう。

 越えなければならないもう一つの課題は「テスラ」です。ユーザーはEV購入する際、「テスラ」と比較検討することになります。確固たる地位を築きあげ、ブランド化した「テスラ」。量産体制も整ったことで、価格面でも競争力は非常に高まっています。現に19年12月から上海ギガファクトリーで量産を開始し、中国で販売の始まった「モデル3」は販売開始からわずか半年で25%以上のシェアを占めたと報道されています。

先行して成功したテスラと異なる魅力を持たなければ、新興メーカーは選択されませんピックアップトラックという車種、燃料電池、高級化…それぞれのメーカーが独自戦略を出し、テスラとの差別化を打ち出しています。圧倒的な競合相手に対し、実際どこまで販売を伸ばすことができるのか。

新興EVメーカーは一つのバブルだといわれています。すでに潰れてしまったメーカーもたくさんあり、現段階で生き残っているメーカーも待ち受けるのは茨の道。

ただ時価総額トヨタを超えたテスラも10年前は数あるスタートアップの1つでした。数々の困難を乗り越え、今の地位があります。

ポストテスラになる新興EVメーカーは果たして現れるのか。

これからの自動車産業、そして投資先としても要チェックです!

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