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将来無くなる仕事に就いている人は怠慢なのか

一つのケースとして、私の母の話をします。

契約社員だった母

私は母子家庭で育ちました。
母は契約社員で9:00-17:00定時の仕事をしていました。

母が契約社員を選んだのは、子どもとの時間を取るためです。
晩ごはんを一緒に食べて、悩みはないか、寂しい思いはしていないか気にかけてくれていました。

定時退社であっても、家に帰ったら洗濯をして、お弁当のために早起きをしていましたから、体力的にはきつかったと思います。


正社員へのチャレンジ


そんな母が、40代半ばで子ども二人が高校生になったときに、正社員登用の試験を受けることにしました。
不安そうながらも、挑戦することにワクワクしている様子でした。

久しぶりにスーツを買い、面接の想定問答を作り、何度も練習していました。

面接が当日、緊張してスーツに汗ジミができたと母は笑っていました。
母は質問に対し、大きな声で「はいっ」と言ってから「私は〇〇で…」と答えたそうです。
その不慣れな返事の仕方を面接官は嘲笑したと言います。

新人みたいだったんだろうね、と笑い話のように話す母は、寂しそうな顔をしていました。

もちろん結果は不合格です。

無くなる仕事に就いているのは自己責任?


さて、近年ロボットやソフトウェアに人の仕事が置き換えられる未来がよく語られます。
その時に見かけるのが、誰でもできる仕事をしている人は仕事を失うと、少し馬鹿にしたようなコメントです。

母の仕事もきっとその一つに含まれるでしょう。
ブロックチェーンについてのテレビでの解説を見て、母が「私の仕事無くなるやん」と言っていたのが忘れられません。

人はクリエイティブな仕事をして、作業から解放されるべき。
全く同意です。

しかし、今クリエイティブな仕事をしていない人が、一律に怠慢であるような見方には賛成できません。
(ネットニュースのコメント欄で散見されます。)

母は身を粉にして子どもを育て、仕事をして、税金を納めてきました。
ただでさえ時間がない中で、必死で勉強して受けた面接で、嘲笑される理由などあるでしょうか?

子育てという、人口減少社会で一つの重要な仕事を全うした人間に対して、あまりに理不尽ではないでしょうか。

今後同じような境遇の人が、年金は減るから長く働く必要があるのに、経験不足で仕事を失う犠牲になる必要があるでしょうか?

答えはノーです。

正社員登用をするべきだったと言いたいのではありません。
勉強の方向性が違ったり、適性がなかったりした可能性はあります。

ただ、結婚したら退職するのが当たり前の時代にライフイベントを迎えた女性の年齢や現在のキャリアは、仕事に真剣でなかったためのものではないのです。

企業として、未来ある若者に投資したい理屈はわかります。
将来ベーシックインカムで生活が一定レベル保障されるかもしれません。

それでも仕事で尊厳を感じながら働く、子育て完了層を支援する仕組みが、適切に学び直す機会があってほしいと思ってしまうのです。

仕事を続けるのがイレギュラーでなくなった今

今は出産による退職のM字カーブはましになってきています。
https://mitsucari.com/blog/m_employment_reason/

結婚や出産で仕事を辞めるのが当たり前の時代ではなくなりました。
仕事を辞めずに復職した方々、退職は当たり前ではないと発信し続けた方々が、悩み苦悩した日々の結晶です。

次に課題になるのは、育休復職後の裁量やキャリアアップ、スキルアップです。
子育てと仕事をしながら、プラスアルファで将来に備えてスキルアップをするのはかなりの気力と体力が必要です。
仕事と家庭をトレードオフにしているうちは、難しいでしょう。
時間帯や場所を柔軟に使って、家庭と勉強と仕事を行き来することで、最大限効率的にインプットとアウトプットをする。
そんな未来が、性別や子育ての別なく訪れるように、少しでも貢献したいと思います。


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