「テレビディレクターってすごい」いや、すごい？

最近はあまり言われなくなりましたが、
ぼくがテレビディレクターだと言うと、

「すごいですね！」

と言われた事があります。
いや、テレビディレクターってすごいですかね？

確かにレアな仕事ではあります。
職種としては全人口に占める割合は少ないでしょう。
でもこの仕事がすごい！とは自分自身は一度も思ったことがありません。

それよりもぼくは、営業職とか経理職とか、いわゆるよくある職種の人の方が、すごい！と思っています。

ぼくはずっとテレビ業界ではありますが、最初に入ったテレビ局では営業職でした。
でもぼくには営業の才能が全くありません。
営業職に必要な、コミュニケーション能力というのが大幅に欠如しているからです。
(最近はだいぶ良くなりましたが。)

人からお金をもらう、という行為も苦手でした。
しかも、テレビ局が売っているものは「形」あるものではなく、何だか良くわからない「時間」というものです。
15秒や30秒という、あくびをしてたら終わるくらいの時間を、何万円何十万円と言う値段で売るのがテレビ局です。CMという形で。
メジャーなテレビ局なら多くの人が見ていて、広告効果もあると思います。ですがぼくのいたローカルテレビ局では、一体何人そのCMを見ていたのか？
視聴率も取っていませんでしたので、何人見ていたかの概算すらわかりません。価値・値打ちがよくわからないものを、何十万円かで売るわけです。

詐欺やん！

と、そのテレビ局にいながら思ってしまいました。
元々コミュ障であるぼくは、そんな詐欺まがい(失礼)の営業はとても出来ませんでした。

そんなテレビ局にいて、それでもバリバリCMを取ってくる営業職の人がいました。先輩にもいたし、同期にも。そういう営業職の人を、ぼくは、

「すげーな！」

と思っています。
テレビ局に限らず、あらゆる会社に営業職があるかと思いますが、そこでバリバリ営業成績を上げる人をすげーな！と尊敬します。
イヤミとかじゃなく、ホントに。
 
経理職もそうです。
ぼくは計算が極端に苦手です。
単純な足し算引き算も時間がかかるし、よく間違えます。毎日数字と向き合うなんてとても無理。
それを毎日やれる人を尊敬します。

人には得意不得意があって、できることできないことがあります。
ぼくが出来ないようなことを、毎日毎日やってる人。
営業や経理だけじゃない、看護師さん、介護士さん、大工さん、お医者さん、調理師さん、掃除のお姉さん、トラック運転手さん、主婦さん主夫さん、そのほか無数の職種の皆さん。
それはすべてぼくにとっては、

すげーな！この人！

なのです。

テレビディレクターがすごい？
いえいえ！営業や経理ができないやつが、こんな仕事をしてるんですよ。

テレビディレクターは、ちっともすごくなんかない。