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自分だけの最強防音室を作ろう

皆さんの家には防音室はありますか?と聞かれて「ある!」と答える人はすごく珍しいですよね。昔は音楽関係をやってる人、歌い手、実況者といったごく限られた人たちが欲しがっていた防音室ですが、Vtuberを筆頭に現在では色んな人に需要があるんじゃないかと思います。テレワーク需要というのもあるみたいですね。
かくいう私もその需要の波に乗っかってマイ防音室が欲しくなってしまった1人です。今回はその制作過程と作ってからのアレコレでも載せてみようかと思います。ド素人なのでこれが正解かは分かりませんが、参考になれば幸いです。

防音室を置くメリット

・当たり前だが騒音対策
・環境音を遮断して集中できる環境作り
・周りを囲うことで周囲に気にせず作業ができる

音の問題以外にも集中して何かをできる特別な空間としての魅力があるのかなと個人的には思ってます。防音室というよりかは小型秘密基地みたいな扱いですね。クリエイターとしてはありがたい空間じゃないかなと思います。
1つ部屋があれば別にその中にまた部屋作る必要ないじゃんと思う人もいると思いますが、使ってみた個人的感想は
「有るのと無いのでは全然違う、いやマジで快適 集中力が違う」

鬼にならないか

防音室は購入?それとも自作?

まず家に防音室を導入しようとなった時にぶち当たる費用の問題。
ヤマハなどの有名な企業のものだと普通に100万以上したりするのでお金と部屋のスペースに余裕のある人は製品を買うと良いです。
防音室導入RTAを完走した感想ですが、導入方法はこれが一番早いと思います。お疲れさまでした。

…まあ現実的には筆者の様にお金の余裕がなかったりスペースが限定されて製品だと導入は難しいという方がほとんどだと思いますのでこの記事はそんな方向けに書いていきます。

一応安くて購入できる例として「だんぼっち」という段ボール製の防音室もあるようでこちらのお値段は約9万。ちなみにもっと大きいものになると普通に10万円超えます

段ボール製でこの値段は高いなぁとは思いつつも購入するだけで済むのですが、防音性能は低いです。そもそも段ボールに防音性能は求めちゃいけません。
ちゃんと改造すれば防音能力は上がるので、ガチ性能を求めずにそこそこのでいいという方は「だんぼっち」+改造でも良いかもしれません。
ただ改造する為の材料も中々高いので筆者は「だんぼっち」を買う金で自分の好きな形のフレームを作った方が総額は安いんじゃない?という結論になったので0ベースで作っていくことになります。あと折角作るならちゃんと性能も欲しかったので思い通りの物を作るのであれば自作一択となります。

実際に作っていこう 設計編

ここから実際に作っていくわけですが、その場のノリで作っていくと後が大変になるので勿論設計から始めます。この段階で防音の知識も頭に入れておくと良いでしょう。筆者はとにかく防音に関する事を調べることから始めました。設計で考えないといけないのは下記の通り

・予算
・外寸と防音室内の広さをどうするか
・何を入れるか
・どのくらい防音性能を求めるのか

材料が結構お高いのでここでしっかり決めておかないと買い直しになったりして悲惨なことになりますのでここ重要。
筆者の場合、部屋が狭いのでまあまあ省スペース、30~40dbくらいの減衰性能、移動できることを目標に設計しました。

設計図

なお材料を極力そのまま使いたかったので元の材料の大きさ基準にして全体を2m以内に収めています。自分しか使わないので自分の体格に合わせて設計していますが、複数人で使う前提であれば多少広さは余裕を持っておいた方が良いです。
入る時めっちゃ苦労する人が出てくるかもしれませんので。実際完成した防音室に他の人を入れてみるとかなり入るのに手こずっていた様子

実際に作っていこう 土台編

設計が出来たらいよいよ工作スタートです。まず基礎の土台から作ります。
骨組みを作って板を貼るのですが、遮音性能の高い石膏ボードを床に使ったら最強じゃんとカットして乗ってみたら粉砕してしまったので断念(当たり前)
材料の強度はよく確認してから作業を進めましょう
もうここから計画性が怪しい。

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気を取り直して木の板で床を作ります。流石に1枚板ではできなかったので分割して貼り付けました。防音のコツは隙間をいかに埋めるからしいので貼り付ける際、シリコーンシーラントを使います。風呂場のタイルの間に塗られてるアレです。

視認しやすいようにグレーを使いました。結構乾くのが早いので素早く塗りたくりましょう。結構ノズルの先で固まることが多いので固まりを除去したら圧縮されたシリコンが一気に飛び出てくることもあるので注意。

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シリコンが乾いたらこの上に「遮音材」を貼っていきます。遮音材とはなんぞや?という方の為に一応解説。まあ読んで字の如くなんですけど

遮音材とは
空気中を伝搬する音波を遮る素材の事で、外部などへ音を透過さないように跳ね返して遮音する防音の要となる材料の1つ。

音を遮断というよりかは音を反射させて音を漏らさないようにする材料というのが正確。
遮音材にも色々な種類があり、今回は鉛シートを採用。
これがかなり性能いいらしい。

た…高けぇ…10M巻きだとヤバい値段してます。同じ大きさでもゴムなどの遮音シートは3000円~5000円くらいなので鉛シートは防音界の中でも高級素材じゃないですかね。省スペースで防音するとなると素材の性能が左右されると思うのでここは妥協できません。(といっても素人なのでこのチョイスが本当に正しいのかは不明なのであしからず)

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流石鉛。シートとはいえクッソ重たい。切って貼るだけで一苦労です。
無事貼れたらこの上にもう一つ土台を作ります。この土台が実際の室内の広さとなるわけですね。

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…思ってたより小さく感じる。でも引き返せないので進めましょう。
枠を作った後、この空いているスペースに吸音材を敷き詰めます。
出ました新単語「吸音材」これも読んだそのままですけど一応解説

吸音材とは
音を吸収する比率が大きい物質または材料のことで、騒音を吸収してくれ、あまり音が響かないようにするほか、音の響きを調節する効果もある。

音を吸収する他、遮音材で跳ね返ってきた音を響かせない為の材料ですね。
防音は遮音材と吸音材のセットで効果を発揮します。
ここテストに出ますよ。
で、この吸音材にも色々種類があって材質ごとに吸音性能が違います。
安く済まそうと思えばフェルトなどでも可。ただ先述した通り防音性能には妥協したくないので性能強そうなロックウールを選択。

これも結構お高いです。密度によって値段が変わるので予算と要相談。
ロックウールを切ると中身がめっちゃ舞うので裸むき出し製品を買うよりかは多少高くてもガラスクロスが付いたものを買うことをお勧めします。

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敷き詰めたものがこちらになります。切断面から飛び出たロックウールに触れると手がチクチクするので手袋は必須。筆者は大したことないやろと思って最初素手で触るという行動をしてしまいましたが…良い子の皆は注意書きはしっかり守りましょう。
さて敷き詰めたら先ほどと同じように板で蓋をして鉛シートを貼り付けます。この時点で10M巻きの半分が消費されているので金銭感覚狂ってきますね。
ここでしれっと裏にキャスターを付けて移動できるようにしています。
1個につき50kg耐えれるやつを5個つけましたが後で計測すると割と余裕がなかったそうな。

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実際に作っていこう 壁と室内編

さてここからが本番、防音室を囲う壁を作っていきます。
まず角材でフレームを作り、先ほど制作した土台と合体、内側に板を張り付けます。
ここも細かいですけど隙間を埋める為にシリコンを流し込みましょう。
隙間は死すべし、慈悲はない。
ハイクを詠め。スキマ=サン カイシャクしてやる。

フレーム

さて内側の壁が貼れたところでふと思う。
神は言っている…このまま普通の内装でいいのかと
最初の想定では単純に四隅を囲って机があったらいいなぁ程度で設計していたのですが、折角10万以上出すのにありきたりな内装だと勿体ないと思い急遽仕様変更。現場なら作業員に殺されかねない暴挙です。
「そうだ、コクピットにしよう」
という訳でここから最初に想定した仕様とかなり異なってきます。
随分昔のことですが、Twitterで低予算のなんちゃってコクピット画像を上げたところバズってしまったことがありました。ちなみにこれはロフトベットの空きスペースを利用して作ったハリボテだったので防音とかは一切ないです。

今は既に解体され資源ゴミと化してしまったなんちゃってコクピット1号でしたが、中にいると特別な空間にいるようで妙に居心地良かったんですよね。せっかく防音室という機能性にあふれた空間を作るので今度はちゃんとコンソールなど作って実用的にしようと思った次第です。
コクピット1号はガンダム00の風だったので違うものにしたい。コクピットみたいな椅子だと出入りがめんどくさそうだとか色々検討した結果…

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よし、ナイトメアフレームにしよう
ということで西暦から皇歴にチェンジです。ナイトメアフレームはコードギアス作中をご存知であれば分かると思いますが操縦席の椅子が前後に動いて乗り降りするという方式(主にサザーランドやランスロットなど)を取っているので、わざわざ後ろ向いて扉を開けるというめんどくさい動作をせずに済むというメリットがあります。(というかデカい椅子を導入する時点で後ろ向いて出るとか無理)
早速本来の仕様になかった部品を作りつつゲーミングチェアを導入。椅子をスライドさせると同時に扉も開くという仕様です。

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元々こんなん入れるつもりなかったのでこのスペースに入るかは賭けでしたが何とか入ってくれました。あとは設定資料やらアニメのキャプ画を見ながらモニターの位置を決めて内側にも鉛シートを貼ります。一応アニメ基準で制作。10M1本巻きじゃ足りないので結局2本+α買う羽目に。防音室の値段の大半はこの遮音材と吸音材です。

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モニターもかなりギリギリです。作中では左右にもありましたが、実作業で横を向くことはそんなにないので一旦保留。後付けできるようにしておきましょう。

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流石に作中と同じようなギミックにすると無駄にスペースを使ったり材料費が馬鹿にならないのでここはオミット。とりあえず最低限の機能があれば良いのでスライドするだけにしました。ここから土台の時と同じようにロックウールすなわち吸音材を敷き詰めていきます。

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本当は扉付近はもっとシンプルだったのですがスライドして出るという方式にしてしまった為に労力倍増。何はともあれ無事吸音材を入れることが出来ました。
次に待っているのは外側の壁。外壁には最初に土台として使おうとして粉砕してしまった石膏ボードを使用します。この素材は脆いですが、安価で重く遮音性能はなかなかといった素材です。取付の際は粉砕しないように慎重に取り付けていきます。

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ここも隙間をシリコンで埋めながら取り付けます。扉付近は衝撃で割れないように緩衝材でケアも忘れずに。

実際に作っていこう 天井編

壁ができたら残るは天井。もう一息で完成…のはず。音を漏らさないようにするので空気の出入りも工夫が必要。
まずは普通に天井部分を土台と同じやり方で作った後に換気の為の穴を空けましょう。もう鉛シートの余裕がないのでかなり継ぎはぎになってきます。

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この上に換気扇をつけるのですが、換気扇と穴の間に迷路みたいな感じの空気の通り道を作ります。こうすることで空気が狭い通路を通っていく間に音が減衰するとか。

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中に遮音材と吸音材を張り付けて蓋をし、換気扇を取り付けて天井部分を合体させると一応箱の形にはなりました。持ち上げる時がクッソ重いので4人くらいで作業することをお勧めします。

換気

実際に作っていこう 内装と外装編

これでようやく最低限の形ができたので内装を仕上げていきましょう。
今のままだと遮音材しかないので音が反射して逆に音が大きくなってしまいます。そこでロックウールとは違う吸音材でカバーします。

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10m約1万6000円です。すごくコスパが良いのでおススメ。
こいつを室内に貼っていきます。裏が粘着になっているのでサクサク貼っていけるので楽。これを貼ったらようやく防音室っぽくなってきます

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しれっとLED照明も追加。これだけでも良いですがダメ押しでもう1つ素材を追加します。パンチングボードとか有孔ボードと呼ばれている小さな穴が沢山ある板です。音楽室なんかでよく見るアレ。
音はこの有孔ボードにある無数の小さな穴を通る際に減衰するらしいので無いよりあった方が良いに決まっているはず。そろそろ材料費が気になってきますが、それはさておきボードを壁に打ち付けていきましょう。

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モニターの部分は避けておいてこれで防音機能に関しては一応作業完了です。本来であればあとはモニターを入れて完成なんですが…
自分のいらん仕様変更によりまだ作業が残っているのである!

実際に作っていこう コクピット内装編

さてここからは防音機能とは全く関係ない作業となってきます。興味のある方は見ていってください。これが参考になるかは知りません。
コクピットといえばコンソールと操縦桿。これがないと始まらない。ということで設計していきましょう。操縦桿とは言ったものの別にロボットを操作する目的でなくWindowsを操作する目的なので単純にマウスを固定する為の飾りのようなものなので適当で大丈夫。防音室の室内の内寸と照らし合わせながら寸法を考えるだけの簡単なお仕事。

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壁の一部をホワイトボード化しているので唐突に閃いたことをメモするのにとても便利。みんなも防音室の他にホワイトボードを常備すると作業が捗るぞ!

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デン!マウスとキーパッド置くやつ~ 
とりあえず前後にスライドできます。本当は左右グリップみたいなものをくっ付けたいところですが、そんなことしてもWindowsを使う分には無意味なので実用性を取りましょう。
操縦桿ができたら真ん中のコンソールを作ります。ボタンやUSB端子の配置をどうするか考えながら組み立てていきます。なおキーボードは折り畳み式のものを採用し、中に収納できるようにしました。
蜃気楼みたいな横からキーボードが出てくる方式も考えましたが、すごく邪魔だったのでボツ。

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あとは横のよく分からない飾りのようなものを収納スペースとして作りつつ真ん中にテンキーを追加。これで作中みたくポチポチ押しながら入力することができる無駄に洗礼された無駄のない無駄な動きを可能とします。
(キーボードでも出来るやんとか言ったらダメ)
すべてのパーツを一旦仮置きしてみるとようやくそれっぽくなってきました。

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形が決まったらあとは表面を仕上げていきます。一応作中の色では金っぽかったので金の塗料で塗ろうかと思いましたが表面のボコボコが悪目立ちしそうだったのでラベルを貼ることに。東急ハンズで理想に近い色のシートがあったのでそれを使いました。1メートル2500円近くしたのでかなりの出費。

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この反射感を塗料で出そうと思うと結構面倒なので値段以外は満足。
残る画面のフレーム制作と真ん中のコンソールに皮を貼り…

完成!

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ようやく完成です。お疲れ様でした。
1.4m×1.4m×1.9m(換気扇を除く)の防音室となりました。色々材料を詰め込んだ割には省スペースになったんじゃないかと思います。
中にLEDを仕込んで一応それっぽく。実際使ってて左右に首を振るのはキツかったのでやっぱりモニター追加は無しで。このモニター配置前提のゲームを作るなら導入しようかと思います。しばらくはダミーのモニターっぽい窓でいいかなと。
あと外観ですが、流石に衝撃に弱い素材をむき出し状態にしておくのは怖いので上からシートを貼り付けておきました。

外観

知人曰く「ピザ窯じゃん!」とのこと。改めて見ると内装と外装が違いすぎる…かといってわざわざ原作に合わせる気力はもうないのでもうこれでいいです。余裕があったらもう少し弄ろうかと思いますね。お金があれば…
外側から柔らかいレンガ風シート→石膏ボード→ロックウール→鉛シート+木の板→ー吸音シート→パンチングボード という6層構造となりました。
本当は空気層と呼ばれる何もない空間があれば更に良いのですが、スペース的に断念。ここは追加で壁を作ればいいだけなので予算があれば作るかもしれません。
ではここから皆さん知りたそうな性能テストといきましょう。

性能テストと使用感

まず防音室を開けっ放しにして音を流します。それを少し離れたところから計測して閉めた後と比較します。といってもスマホのアプリなのでそんな正確なものでないのであしからず。
ではまず開けっ放しで計測

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大体これを基準とします。で、閉めた状態だとどうなるかというと

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デン!大体33dbくらい減衰してますね。体感でも効果はあるかと感じてます。ヤマハの80万クラスの防音室が-35くらいなのでそれなりにはなったかと。高い素材使ったからかは正直分かりませんが最低限の機能は保証されて良かったです。まだ空気層ともう1枚壁を作ってないので性能が100%引き出せれば-40dbもいけるかもしれませんね。

ここからは使用してからの感想。流石に部屋の中だと聞こえますが、部屋の外に出ると気にならなくなるのでご近所とのバトルは避けられそう。
そして当たり前ですが、いくら換気扇を付けたからといっても空気がこもりがちにはなるので熱いです。まあ冬場は丁度いいですが…
一番面倒だったのは運搬。隙間を埋めるのに躍起になってしまったおかげで分解を意図しない作りにしてしまったこと。これが何を意味するかというと普通の引っ越し業者が持っていけない代物になってしまったということです。分解できればギリギリ持って行けたらしいですけど、この状態で持っていく場合、重量物専用の業者に頼むしかなくなります。
ピアノと同じ扱いかなと甘く見てましたが、どうやら寸法的に同じようにはいかない様子。引っ越し業者の紹介で割引してもらって実家から自宅まで大阪府内の移動でしたが10万円の費用っ
…実家で作るんじゃなかった!と後悔。
ちなみに総重量は200キロくらいだそうです。
そりゃ専門業者いるわと納得。
気になる材料費ですが、およそ30万円。一応お安くは作れています。
材料費の大半は鉛シートとロックウールに持ってかれました。あと本来必要ない内装部分に金を掛けなければもう少し安くできたかと思いますね。

ということで素人が1から防音室を作るとどうなるか?という記事でした。
もし興味がある方は自作することをお勧めします。楽しいよ!飛んでいく費用にさえ目をつむれば…
お前も防音室作らないか?

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