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善人達とタオル

僕は道を歩いている時、何かと物をよく拾う。

割れたiPhone、鍵、筆箱、QUOカード入り封筒、Suica、PASMOといった電子マネーや、定期券、キャッシュカード、クレジットカードetc...数知れずだ。
カード類は特に多い。

現金であれば大体はそのまま貰っているが、物品だと価値に限らず「これをどうしようか」と考える。

交番に届けたら、もちろん書類を書かされる。そこで「届け主(自分)の情報を、落とし主に公開するか?」という欄がある。警察は基本的にこれを良しとしておらず、チェックマークを付けさせない(過去に落とし物を提出した変態男性が、落とし主の女性にストーカー化したという事例があると聞いた)。

しかし僕は自分の情報を落とし主へ伝えるようにしている。僕は決して見返りが...いや、落とし主の感謝の声が聞きたいのだ。大事な物が返ってきた人の安堵顔を見たいのだ。

交番を出た後もなんだかやるせない気持ちになる。担当の人が高圧的な態度だったためだろうか、警察という第三者が落とし主へ届ける仕組みがしっくりきていないからだろうか。なにせ「届けたぞ!」という爽快感がない。嬉しくない。

余談だが、僕は小学校の時よく家の鍵を失くした。父に注意され、しぶしぶ交番へ行って見つかる事が多かった。その時に父から「落とし主に電話してありがとうって伝えな」と言われ、落とし主へ緊張しながら電話を掛けた事を思い出す。

話が外れた。そんなワケで僕はよく拾い物を(たまに落とし物も)している。

電子マネー系のカードを拾った際は、交番で時間を取られるのが嫌なので、近くの駅へ届けている。

実際に拾ったパスモ。どこぞの宗教団体の会員カードも入っていた。


今までは、拾ってからすぐに届けていたが、あまりにもよく拾うので、残金がいくらかあるのか見たりしている。カード残金は今までの拾ったカードを平均して大体1,000円ぐらい入っている。次からは自販機でジュースを1本ピピっと買わせて頂いてから駅員さんへ届けようかと思っている。(もし手元に戻ったSUICAの残金が100円ぐらい減っていたら僕が届けた物かもしれません。駄賃ということで…)

そんな中、この前今まで一番ビッグな落とし物を拾った。道端で財布を拾ったのである。


クレジットカード、保険証、デビットカード、免許証、そして3万円だ。
ごっそりと財布アイテムが全て入っている。免許証にはガッツリ顔と生年月日が載っており、20代のギャルだった。

さすがにパクるか迷う...。20代女性の3万...。荷が重い。

前述した、「拾ったSuicaでジュースを買い、届けるスタイル」のロジックだと「拾った財布のお金で何か買った後に届ける」という事になるのだろうか。少し違う気もするが、1割ネコババしたとしても3,000円だ。何を買おうか本気で迷いだす。

実は僕は出先である大阪にいる真っ只中で、異国の地で拾った財布なのである。宿泊先から免許証に記載されている住所が近かったので、迷いに迷った末、直接そのギャルの住む家のポストへぶっ込む事にした。

一応法律も調べたが、これはギリセーフだと思う。なにせお金は使っていない。
法律上、交番へ届ければ、僕がお礼金を請求できるらしいが、なんだか面倒なのでパス。しかしちゃっかり「ネコババするか迷いましたが、お届けします。お気をつけください。良い1日を」と一筆書いた。僕の住所も忘れずキッチリ書いた

何かお礼が来る事も否めないし。

否めないし。


そして、大阪から自宅に戻ると、ひとつ封筒が入っていた。差出人は「大阪警察署」

…嫌な気配。
あのアマが何か理由をつけて被害届でも出したかこの恩知らずめ!とプリプリしながら封を開けると、

「記載された住所にそのギャルは住んでおらず、現住人が交番へ届け、無事そのギャルへ財布は戻った。」と、ただの紙ペラ1枚の報告書だった。

遠回りはしたが、まぁ無事に届いて何より。

そんな住所変更を怠っていたギャルからお礼の今治タオルがこの前届いた。

終わり















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