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昔、墓場フェチだったころ(Ⅱ)

Note投稿2日目です。シアトル近郊在住の舞踏家、奥村薫と申します。

我が家のすぐ近く、COVID-19の米国震源地となっているナーシング・ホームでは、本日新たに2名の死亡が確認されて、この施設関連でお亡くなりになった方は総計29名となりました。わたくしも、もう長いこと自宅に籠っております。

パフォーマンスも皆中止となっているため、この機会に何か新しいことをやろう!と、昨日から、昔のことなどをNote記事として綴り始めました。

引き続き、小暮和代写真作品『ぐれーぶやーど・シリーズ』の紹介、本日は第2弾で発表した8作品をお届けいたします。猫写真もありますので、どうぞお楽しみください。

昨日の記事を読んでくださった方から、「最後の写真『はつぼん』が一番好き~」とか「猫写真が実にいい!」など感想を頂きました。ありがとうございます! 前編から読みたい方はこちらから↓

撮影担当者プロフィール

当時のサイトに掲載していたプロフィールをあえて再掲してみよう。なにせ2002年時点での記述ですから、あの頃自分たちが何を思い、どんな夢を持っていたか、今回18年後の2020年に改めて読んでみると、妙に感慨深い。

ちなみに、撮影者小暮と被写体奥村の、掛け合い漫才でもある。

撮影担当 小暮和代 プロフィール
群馬県伊勢崎市生まれ。同市在住
図工・書写の代用教員をしていたが、ある日思い立って写真の道を志す。それなりに名の通ったプロカメラマンの元で1年ほどアシスタント修行をしたのち、写真館勤務、アルバイトなどなどを転々とする。貧乏生活が長かったが、最近は多少落ち着いてきた。写真は現在、ほそぼそと作品製作だけやっている・・・
最近はインドのカルキ・バガヴァンの村に行くなどして、ヒーラーの仕事も忙しくこなしている。

小暮の夢:
おおきい夢:みんなが幸せになること。
ちいさい夢:週に1度はバレエの稽古に行き、暑い日には1995年製で音響システム充実のスズキの白い(もしくは青)ジムニーを河川敷で乗り回し、月に一度は親を温泉やピクニックに連れていける生活をすること。

奥村の一言:
小暮ちゃんの白黒写真には独特の味がある。それは本人とても同じといえよう。よく付き合うと、すごくユニークで面白いセンスをしている。当然、ちょいとブラックですけどね。こんなに話していて、息が絶妙に合う友人はいない。長いこと、人見知り、話し下手、絶好調・絶不調の波が激しくて、なかなか人に理解してもらいにくかったようだが、最近流れが良いほうに向いてきたようだ。
いい子なんだなあ。是非、夢を実現して欲しい。

被写体奥村のプロフィールは、また後日に…

2002年 小暮和代『ぐれーぶやーど・シリーズ』第二弾

では、第二弾に行きましょう。ここからは、2002年の発表当時のままの文章でお送りいたします。

第一話「きつね」

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「きつね」
Photography by KOGURE, Kazuyo

そのまなざしの奥には何があるのだろう。謎めいた一瞬。その花の名は、「アリアム・コワニー」。花言葉は「無限の悲しみ、正しい主張」。

撮影者の一言:「うっつ。そのまま、こっちみないでぇ~っ」

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化けています。キツネでしょうか。木の葉を頭に乗っけて、くるっとトンボを打って、人間になりました。って感じですね。果たして、口はちゃんとあるんだろうか?

皆様、久しぶりにお目にかかります、小暮&奥村です。今年はじめに読者応募で連載させていただきましたが、このたびまた登場させていただくこととなりました。小暮和代の撮影した写真に、小暮の常連被写体・奥村薫がコメントをつけてお届けいたします。

以前にご紹介いただいた写真や、簡単なプロフィールなど下記のWebページに載せています。「はじめまして!」の方々はご興味があれば、そちらも覗いてみてくださいね。また、皆様方のご感想など聞くことができましたら、大変に幸せであります。

では、これから、週一度の8回シリーズ、どうぞよろしくお願いいたします!

第二話「猫蹴り」

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「猫蹴り」
Photography by KOGURE, Kazuyo

世田谷区、豪徳寺の墓場にて。豪徳寺に、妙な猫がいた。猫と言えば、墓場と並んで小暮の大好物の題材。いつもは、すぐ逃げる猫を追い掛け回す羽目になる。ところが、こいつは写真を撮っているだけで、石畳に背中を擦り付けて興奮してくるのだ。痩せて毛並みもよくないので、かわいがられているようには見受けられないのだが…

そうして、こちらが手を出そうとする前に、擦り寄ってくる。あまりにしつこく甘えたがるので、このような状況とあいなった。足フェチ猫か!?

撮影者の一言:「おっと!本気、じゃないよね」

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猫が驚くと、尻尾が膨れて、狸尻尾になりますが、それもたいてい一瞬遅れてぶわっと膨らむんですよね。それが、なかなかに可笑しい。さらにひどく驚くと、背中の毛も立って、プロントザウルス状態になります。

この写真では、わずかに先っぽのほうが太めになっています。もともと、先が太い猫なのか、蹴られて(注:実際に蹴りが当たった訳ではありません。虐待は、していませんよ~)この後ぶわっと来たのでしょうか?今度うちの猫で、先のほうから太くなるかどうか、じっくり観察してみましょう。

第三話「墓場でびーる」

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「墓場で、びーる」
Photography by KOGURE, Kazuyo

世田谷区、宮坂の小さな墓地にて。とんでもなく暑い日だった。ビールはコロナ。人間は人魚。

撮影者の一言:「うっふっふ。われわれにしては珍しく、ちょっち、せくしぃ・しょっとなのよね~。次はも~ちっと、ヌイでみよ~かぁ?」

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にこやかに笑っていますねえ。ボディーライン、もろですねえ。あれ、人魚におへそ、ありましたっけ?人魚は、魚類ではなくって、イルカの仲間だったんでしょうか。

ちなみに、こちら米国では、公園でのアルコールは原則禁止。一方、桜の見事なところは、結構ありまして、日本人仲間で花見に行ったりするのですが、皆これでお酒が飲めればなあ~と悔しがっております。

桜が満開なのは、ほんのわずかの間。散ってこそ桜というくらいですから。それが、こちらの桜は、何故か開花している期間が長い!週末2回 は十分に満喫できますし、全体的に一ヶ月くらい咲いているのではないでしょうか。ワシントン大学の桜並木は日本から寄贈されたものといっていましたから、木の種類ではなくて天候のせいなのかもしれません。

でも、なんで私はこのとき、ビールなんか持って、墓場に行ったんだろ…何故だったのかなあ???

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小暮:なんで、ビール持って墓場かというと、私が『軽いビール持って墓場に遊びにいこーよー』と、ゆったので、こーなったのさ。

奥ちゃんは憶えてないのかいっ!?
こンときは、私もコロナを持って、ふらふらと撮ってたのね。

あの頃は若かった。今ではすっかり、アルコール弱くなっちゃって、なんか、ダイエット中のダンサーみたいになっちまいましたさ。

このときのお散歩は、奥ちゃんノリノリ、猫も豊作で、小暮的には最も幸せな記憶のなかのひとつでもあります。

第四話「お地蔵さま」

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「お地蔵さま」
Photography by KOGURE, Kazuyo

世田谷区、宮坂の小さな墓地にて。世にも平和な光景。背後にはお地蔵様と卒塔婆。何気ない優しさと、ノスタルジーが交差する。一見地味な作品であります。

撮影者の一言:「これって、結構すきなんだなぁ。何故だって?えーっと、あれえ、よく分かんない…まあ、そんなのもありではないかと。」

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第2弾の4回目であります。コメント&被写体担当の奥村は、現在米国暮らしで、今年は東京出張が無かったために、小暮は撮るチャンスが無い~と泣いておりました。遊びで日本に帰りたくもありますけれど、暑い夏の間はちょっと考えものですね。

小暮は「お金をためて、アメリカの墓場と奥ちゃんを撮影に行くのだ!」と言っております。ただ、こちらの墓地は如何なものでしょうか…あっけらかん、こざっぱり、キ・レ・イ!って感じですから。

そういえば、奥村は最近ヨセミテ国立公園に行ってまいりました。ある意味で写真を撮る人の憧れの地かも。なにせ、あのアンセル・アダムスといえば、ヨセミテですから。サンフランシスコの友人宅から、車でがんがん走って3、4時間。巨大セコイアの樹や、そそり立つ岩肌。

で、実はヨセミテにいる間は写真を撮る気がまったく失せていました。だって、風景があんまりにも写真なんですもの。

風景が見事すぎて、それに自分なりの観点を足す余地が無い!それなりの写真は撮れるでしょうが、なにせ巨匠達のすばらしい写真を見すぎていますからねえ。まあ、そうなる予感はしていたのですがね…こういう時には自分の目と足でじっくり味わうことに致しましょう。

第五話「うつろ」

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「うつろ」
Photography by KOGURE, Kazuyo

世田谷区、豪徳寺の墓場にて。ねじくれた樹だ。妙に存在感のある樹に寄り添って、はるか上を見る。ぺったりと木肌に添えられた手を通して感じられる樹の呼吸。そして、背景は墓場。

撮影者の一言:「のぼりたいのかなあ~。い~よ~、のぼっても~。スカートだけどさ。のぼるのっ? ほれほれ~」

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赤瀬川原平の路上観察、「植物は強し」を連想しますね。でも、人に言われてよく見てみると、とっても官能的だったりします。後はご想像に任せるとして…ってこんなこと、メールマガジンに書いていいのかなあ?

「植物は強し」と言いますが、この間見てきたヨセミテのセコイアも凄かったです。「カリフォルニア・セコイア」と名前までついている有名なのがありますよね。樹の根元を貫いて道が通っているという奴です。昔の教科書か図鑑か何かに載っていたんじゃないかな。今は普通の車は通れないようになっていました、よくぞ、これで立っていられるものです。空洞の幅のほうが両脇の樹の部分より大きいんです。中の一部が真っ黒に焦げているのは山火事にあったのでしょうね。

ここのセコイアは樹齢二千年、世界でもっとも年長の生き物ということでした。でも個人的には、あまり有名でないレニア山麓の千年杉のほうが、感動しましたね~(ご存知の方はまず、いないのではないかと思いますが)。ヨセミテのセコイアはあっけらかんとした暑さ、青い空のした、赤い木肌を見せて立っています。ちょっとあっけらかんとしすぎなのかな。

これに比べて、レニアの千年杉は、林を歩き、川を渡って、時から取り残されたような中州に、しっとりひんやりした空気、苔むす樹々。まったくの別世界で、何やら聖域を侵しているような雰囲気なのです。まさしく木霊がいるぞ!という気がひしひしとして、怖かったくらいでありました…

第六話「たいやき」

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「たいやき」
Photography by KOGURE, Kazuyo

撮影者の一言: 
「とーくの海に お魚が ふよふよ
いまの この瞬間にも
お魚が ふよふよ
近くに海は ないものだから
たいやきを 食べるとき
思うのは
いつも
とーくの ふよふよ
たいやきは ねこのろまんだ」

コメント:小暮は近くに海の無い群馬県の出身でありました。

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インパクトありますねえ。シュールですねえ。この無関心な様子。何事もないかのように見えながら、口はたいやきをほおばっているという。今回の被写体は小暮の妹です。思い起こすは、「お魚くわえた、どら猫」でしょうか、それとも「およげ、たいやきくん」の末路?茫洋としたまなざしが良いですねえ。

いくつくらいに見えますか。ぱっと見ると子供みたいかも。でも、イヤリングしています。成人です。彼女も年齢不詳の生物です。(ナマモノではありません。念のため…)

第七話「猫、だらーり」

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「猫、だらーり」
Photography by KOGURE, Kazuyo

世田谷区、宮坂の路上にて。とんでもなく暑い日、猫も伸びる。人間もご覧のとおり、くねっている。

撮影者の一言:「あー、きみ、女の子だよね。い~いのかな~、そんなん、だら~りなっちゃってさ~。あ~あ…」

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これは、見知らぬ猫でありました。路上で猫を見ると、とりあえず近寄っていって、手を出そうとする奥村です。世田谷のこのあたりには、妙に猫が多く、当時アパート暮らしで動物を飼えない身としては、触らせてくれる猫は、絶好の餌食だったんですね。でも、君、そこまで人間に身を任せていいのかなあ。バター猫だねえ。もうすぐ落ちるんですけど…

今は猫、飼っています。ふっふっ。ネットお見合いで、惚れ込んでしまったんです。アメリカではHumane SocietyとかShelterと呼ばれているボランティア組織がたくさんあって、拾われたり飼えなくなったりしたペットを斡旋してくれます。皆、ちゃんと名前をつけてもらっていて、Webにも写真やその猫の性格、なんでシェルターに来ることになったのか、など掲載されているんです(こんな感じ→http://www.petfinder.org/)。

こいつの場合、「ある雨の朝、段ボール箱の中で、4匹の子猫とうら若い母親猫が凍えているのが発見された。初めての出産の後、親子共々捨てられたのだろう。だが、今は皆元気になって…」といった具合。実はアビシニアンの混血だということで、検索に引っかかったのですけどね。

遠路はるばる車で片道2時間飛ばして、会いに行きましたよ。ネットで写真を見て、24時間後にはもう我が家に来ていたというくらいの即決でした。

確かに子猫のときは、耳が大きくて、すらりとしてアビシニアンっぽかった。成長すると――というのはよくある話で…。

よくペットは飼い主に似るなんて言いますけど、こいつも百面相です。個人Webはこいつの写真で占領されています(親ばかの証明!?)。が、それを見たある人いわく、

「猫、何匹飼っているんだっけ?」
「一匹ですって!」

第八話「夢幻」

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「夢幻」
Photography by KOGURE, Kazuyo

梅の木に埋もれたまま、時間が止まる。
水平が狂ったまま、時間が流れる。
まぼろしの梅の香が漂う。

木の枝に絡まれたまま、解放がおとずれる。

撮影者の一言:「これも奥ちゃんの特技のひとつ。いろんなモノに同化します。
前回までの作品を見た友人の一言は『奥ちゃんさんって、お墓の精みたいだね』だった。よかったね、『お墓のレイ』じゃなくって、と思ったのは、私だけじゃあ~あるまい。
あ、でも~今回は『木の精』みたいかもっ。ねっ?ねっ?」

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またしても、最後は狂女ものとなりました。早春の明治神宮裏、大芝生にてであります。こうしてみると、梅の蕾ってなんだか痛々しいですねえ。

さて、小暮&奥村の第二弾も今回でお終いです。お付き合いいただきまして、まことにありがとうございました!如何でしたでしょうか?皆様のご感想など、お聞かせいただければ小暮は大喜びであります。Fantastic Cameraに機会を与えていただきましたことに感謝するとともに、またお会いするチャンスがあることをお祈りして。では!

小暮:さて、無事に今回で第二部も終わってしまいました。今回も皆さんに応援を頂いたお陰で、ケータイメールだけでなんとか(メール端末がイカレきってしまった)、奥ちゃんの仕事をより一層増やしながら、元気に8回連載できました。ああ、嬉しい。またいつか、おあいしませう!

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後記

如何でしたでしょうか、18年前のタイムカプセル発掘、第2弾でありました。

本日、2020年3月15日は晴れ。この時期雨ばかり降りしきる街として知られるシアトルとしては、思わぬ光の恵みです。光を浴びると、身体が緩んできますねえ。

いつ終わるとも分からぬお家籠りが続いておりますが、今朝はアーティスト仲間とZoomにてオンライン通話のひと時。こんな時に出来ることをお互いにシェアしあいつつ、常にクリエイティブでありたいよね~と思うのでありました。

ご興味を持っていただける方がおられましたら、どうぞWebサイトやFacebookもご覧くださいませ。お付き合いいただき、ありがとうございました。

では、また!


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