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たまねぎ炒めの向こう側
じつは今、水野仁輔さんの『カレーの学校』に通っています。隔週で全6回、水野さんから直接カレーのレクチャーを受けられる学校です。生徒たちが自主的にやるゼミなんかもあって、中高というよりは、カレーの大学ですね。
先週は2回目の授業でした。cakesやnoteでもおなじみの「ファイナルカレー」を作るというデモ授業です。試食もあると聞き、みんなの目がキラキラしています。
この授業のキモは、カレーの一大テーゼである「たまねぎ炒め」です。
水野さん、たまねぎを火にかけたたまま「なぜたまねぎを飴色になるまで炒めるのか」カレーを作る誰もが、避けて通れない工程について語り始めました。
たまねぎの糖度は炒めても変わらないとか、キャラメリゼが旨味に変わるとか、たまねぎは大きくカットしても小さくカットしても結果に変わりないとか。焦げには「焦げた香り→焦げた匂い→焦げた色」という三段階があり、焦げた香りと焦げた匂いの間の見極めができる人は一人前、なんて話が次々出てきます。
たまねぎ炒めの方法を包み隠さず見せてくれながら「自分が作りたいカレーをどう作るかを考えていった結果こうなった」というお話を延々される水野さん。
私も仕事がらよくたまねぎを炒めますが、たまねぎ炒め自体はそんなに技術的に難しいものではありません。
でも、水野さんは、たまねぎ炒め名人になる方法よりは「プロセスと結果に結びつきがあるとを理解すること」「なぜそれをやるのかを考えること」が大事だと教えてくれました。
水野さんの炒めたたまねぎは、こんな感じ。すでにカレー粉も入っていますが、私が思っていたよりはかなり強い焦げ色です。
で、ごめんなさい。ここまでは長い前置き。家に帰って、やってみました、たまねぎ炒め。ここからは、そのレポートです。
といっても私の持ち場はカレーではなくスープ。教わった方法をスープのたまねぎベースに活かします。
使っているのはたまねぎ1個分。油を全体に回し、中火で炒めます。塩も、ひとつまみ加えます。これは水分を引き出すため。
カレーとの一番の違いは、スープではたまねぎは焦がさないこと。(オニオングラタンスープのときは例外的に焦がします)
しんなりした状態。普段はここで止めてしまいますが、今日はもう一段階炒めます。
ただ、水分がかなり蒸発していて、このまま炒めると焦げて色づき始めてしまいます。そこで少し水を加えます。大さじ2杯か3杯くらい。
こうすると、たまねぎは、焦げずに蒸し煮状態になります。水分があるうちは焦げないので、また減ってきたら少し水を足す、を繰り返して10分ほど炒めます。
色づけないように、最終的には野菜の水分を飛ばしていきます。焦げるギリギリ手前、オイルだけになった状態でストップです。
さまざまなスープのベースに使えます。
今日はこれをトマトスープにします。トマト2個分を加えてさらに炒め、塩も足します。
トマトも水分を抜いて、ペースト状になるまで炒めます。
トマトの水分が抜けて、うまみがギュッと濃縮されます。
ここで水を始めて加えます。完全に火は通っているので、薄めてあたためる程度。あとは味を見てととのえます。
シンプルトマトスープ。モツァレラチーズなどのせても負けない、濃厚な野菜のうまみが印象的なスープになりました。
いつもはたまねぎがしんなりしたぐらいの段階でトマトを入れ、トマトもまだ水分が残っているうちに煮込みに入りますが、それだとさっぱりとしたフレッシュな味わいです。(cakesの連載1回目のこちらの記事で紹介しました)
どちらも美味しく好き好きですが、でも、ここまで野菜を炒めると、素材の味が完全に変化したスープを体験できると思います。
さて。もうちょっとだけ続けますね。
実はカレーの学校で水野さんが「一度たまねぎを1個、最後まで焦がしてみるとよい」とお話されていたのを、やってみました。
いきなり強火で炒め始め、一部焦げています。デモの時もこんな感じでした。
さっきは色づく前に水を入れましたが、カレーのときは、かなり色づいてから加水します。
鍋肌の焦げなどが全部ゆるんでたまねぎ全体に行きわたります。私は普段あまり焦がさないように炒めているので、どうしても炒め方が弱いんです。ここで炒め切れるかどうかが、カレーの味を決める、と水野さんはおっしゃっていました。
「炒める」と「加水」を繰り返して、色づけていきます。
いい感じ。カレーの時も私はいつもこのぐらいで止めてしまいますが、今日はこの先に進みます。
ここまで来るとたまねぎの水分はほとんど蒸発してしまいます。
さらに炒める。写真だと見えにくいのですが、匂いが焦げ臭くなってきました。普段、自分でここまで炒めることはありません。スープではアウト。しかし、カレーではこのぐらいまでは炒めても大丈夫のようです。
たまねぎ炒めをどの段階で使うかで、全く違う味わいのスープになります。だからこそ、みんな「どこまでやればいいの?」と迷うのだと思います。
すごく簡単に言えば、あっさりサラリと食べたいときはサッと炒め、がっつりコクがほしいときはよく炒める。でも、その間には無限のたまねぎのグラデーションが存在します。
たまねぎの向こう側にある味の世界。ぜひ一度、体験してみてください。
読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。