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ミネストローネを因数分解!2015.5.18 スープラボ拡大版レポート(前)

月曜の夜。仕事帰りのみなさんが、神保町は駿台坂下にある食のイベントスペース「LAB & Kitchen(ラボアンドキッチン)」に集まりました。にぎやかにスタートした今回のスープラボは20名ほどの人数を集め、場所を変えての拡大版です。テーマはおうちスープの決定版・ミネストローネ。

ル・クルーゼの協力でカラフルなお鍋をお借りしました。

ミネストローネはまさにおうちの数だけレシピがあります。でも実は作り方には共通するものがあります。一つ一つ別々のレシピとして覚えるのではなく、美味しいミネストローネの共通項を探し出して食材をくくるという、いわば「ミネストローネの因数分解」的なことをやってみようという試みです。

こうしてレシピを構造化しておくことによって、どんな野菜にも対応でき(たとえ冷蔵庫の残り物でも!)、手軽に、美味しく、簡単にミネストローネを作るということを目的としています。

この3年間半で私が作ったミネストローネは約60種ほど。成功も失敗もありますが、そこで学んだ美味しさのポイントは、この3つと見ました!

①ミネストローネの中の主役を決める
②穀類と豆を主役に合わせて決める
③野菜のうまみを十分に引き出してあげる

簡単に説明をさせてもらいます。

【ミネストローネの中の主役を決める】

どんなスープにも、主役と脇役が必ず存在します。すごく簡単な例でいえば、ふかひれスープではふかひれが主役ですし、クラムチャウダーなら貝が主役ですよね。そんな中、ミネストローネは主役がないスープなんです。全部が刻まれていて、全部が混沌としている。

でもだからこそ、作る人が主役を決めてあげるということが大事なんですね。残り野菜で作るスープだとしても、中心をどれか決めて、そこから組み合わせを考えていくと、その一皿は魅力を帯びます。

スープの主役になれる野菜というのは、やはり「旬の野菜」。たとえば私が作る基本のミネストローネには、こんな食材が入っています。

たまねぎ、にんじん、セロリの香味野菜に、キャベツやじゃがいも、マッシュルームにズッキーニなどにぎやかに野菜を加えます。穀類はパスタと白いんげん。にんにくとトマトベースの正統派ミネストローネです。でも実は、どの野菜が主役かはちゃんと決まっています。

今回の主役は春キャベツ、新にんじんや新じゃがいも。こういった春の旬野菜。春の野菜は冬のものよりみずみずしくてあっさりした味わいです。こうした野菜を主役にするなら、強い味の肉は使わずフレッシュなトマトで酸味を加えたり、豆も小さな白インゲンを選び、味つけも薄め……こんな風にスープを組み立てていきます。

同じ材料でも、秋になったらじゃがいもをかぼちゃに置きかえたりきのこをどっさり使うなど、それだけで全く違う味わいのミネストローネになります。

冷蔵庫の残り「だけ」を使ってスープを作るのではなく、主役には旬の新鮮な野菜を使い、残り野菜を脇役にしてあげれば、冷蔵庫の在庫を使いながら美味しいスープになります。新しい素材を組み合わせて、少しずつ冷蔵庫から押し出していくのが冷蔵庫の在庫整理のポイント。

【穀類と豆を主役に合わせて決める】

柴田書店の『イタリア料理教本』によると、ミネストローネとは「穀類(パスタ、米など)と豆類の入った具だくさんの野菜スープ」とあります。お店で出てくるミネストローネにもパスタと豆、両方入っていることが多いですよね。

スープは汁物として喉を潤すものと考える私たち日本人にとっては、パスタと豆、どちらも入れることにそこまでこだわることはなく、片方だけでもいいと思いますが(ごはんも食べるなら特に!)うまく豆やパスタを使えば腹持ちもよく、うまみやとろみがプラスされた美味しいミネストローネになります。

ミネストローネに向くパスタと穀類。パスタは手前右のシェル状がコンキリエ、左のらせんのがフジッリ、その上右耳たぶみたいなのがオレキエッテ、左がスパゲティーニ。その上左のリボン型のがファルファッレ。容器に入った米粒のようなのがリーゾ。穀類は、右から、米、押麦、そして小麦の原種にあたる、スペルト小麦です。

パスタはショートパスタが多いですが、細長いスパゲティをポキポキ折って入れるのも美味しい。また穀類は食感によって使い分けるとミネストローネがいろいろな風味に変わってきます。スペルト小麦は以前も紹介したけど、もちもち、プチプチしてスープにおすすめ!

さて、こっちは豆類。

一番てっぺんから時計回りに、えんどう豆(緑)、えんどう豆(黄、ひきわり)、レンズ豆、白いんげん(大福豆)、黄大豆、ひよこ豆、中央はレッドキドニー。

豆は、4月のラボのテーマでたくさん勉強しましたが(詳細こちら→ https://note.mu/kaorun/n/nc6e82356d3a0?magazine_key=med5c17e243f2 )、ミネストローネに向く豆をチョイスしてみました。トマト味のスープにはインゲン系の豆が合うという個人的な見解を持っていますが、もちろん大豆やひよこ豆、レンズ豆などもおいしいです。スープのために豆を煮るのは面倒なら、選択肢は少なくなりますが缶詰や冷凍でも十分。レンズ豆やひきわりにしたスプリットピーなどは直に鍋に入れられ早煮えの豆。ミネストローネにも適しています。

主役にする野菜やその大きさ、食べ応えに合わせてこうした穀類を合わせるやり方は、後半の個々のスープの説明で!

【野菜のうまみを十分に引き出す!】

クックパッドでミネストローネのレシピ検索をかけると、ベーコンやソーセージ、それにコンソメキューブを入れる人がほとんどです(私も、よく入れます!)。でも、本来ミネストローネは野菜だけで作るスープ。肉と野菜のうまみはちょっと別種なので比較はできませんが、野菜からかなりのうまみを出すことができますし、足りない分を肉やコンソメで補うというほうが、おだやかで家庭らしい味になるような気がします。

今回は素敵なオープンキッチンつきのスペースを借りたので、この野菜のうまみを引き出すところを簡単な実演と味比べでみなさんに体験していただきました!

まずは一般的に野菜くずを水から煮出すベジブロスと、私の作る野菜だしを味比べ。

左がベジブロス。たまねぎの皮で少し色がついています。最近はやりのベジブロスは水から野菜を煮出すものが多いのですが、このやり方ははっきりした野菜の印象が出る反面、たまねぎなど野菜の匂いやえぐみが出てしまうのです。私の野菜だしは野菜に完全に火を通してから水を加えてあたためる、というもので、野菜の甘味がしてくせのない、スープに適した野菜だしになります。少ない野菜でも大丈夫。今回使った野菜は、きゃべつ、にんじん、セロリだけ。

作り方はとても簡単で、野菜をざくざく切って鍋に入れ、3~400gぐらいの野菜に対して塩を小さじ1ぐらいまぶします。鍋は厚手の蓋つき鍋がいいです。大さじ1杯ぐらいの水を加えて火をつけ、蓋をして火をつけますが、このように塩と水を加えることで、野菜からどんどん水分が出てくるのです。ポイントは、野菜から水分を抜いてやること。スープがうまくできないという方のほとんどは、この過程がちょっと足りないようです。

といっても、時間はそんなにかかりません。しばらくして蓋をとってやると、野菜から出た水が湯気になってわーっと立ち上ります。そこで火を強め、野菜を箸で少し動かしてやり、水分を飛ばしていきます。水分が飛んだらまた蓋をして火を元に戻し、少し水を出してやります。

これを油を加えてやると焦げにくいし、スュエというフレンチの野菜の炒め方になるようなのですが、私のはフレンチレストランのシェフの手つきに習ったわけではありません。どこまで火を入れるのか?というのは野菜の種類にもよるんですが野菜に蒸し煮状態で火が通り、食べてみて美味しいというところまで。スープの場合でも、水なしでそこまで加熱してしまいます。水は後から加えて調節。先に水を入れてぐつぐつ煮るより、こっちのほうが断然美味しい。

野菜の種類は3種類ぐらいでもほんとは十分なんですが、ミネストローネはもっとたくさんの種類でやる、それだけの違い。そしてこのやり方なら、だしが出たあとの野菜も美味しく食べられます。たまねぎや長ねぎ、にんにくのように匂いの出る野菜だけは、先に少し長めに炒めて、匂いを飛ばします。

説明しながら5分ぐらいでしょうか、あっという間に仕込み完了!あとは水を入れて沸騰させればもうこれでできます。私の毎朝のスープって、このやり方でできている本当に簡単なものがほとんどなのです。と、ネタばらし(笑)

簡単と言いつつ長くなってしまいましたが、ここで説明終わりです。もういちどおさらいすると、①主役を決める、②それに合わせてパスタや豆を選ぶ、③水分を出し切って野菜のうまみを十分に引き出す。これがミネストローネの3つの美味しさの共通項!春夏秋冬、この3ポイントをしっかり守れば、美味しいミネストローネにならない野菜はないはずです。

☆☆☆

さて、ラボ後半はいよいよミネストローネ試食、沢山あるのでスープラボはじめての前後編になりました。続きはこちらへ! https://note.mu/kaorun/n/n1a9b1eb25da9/edit 



読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。