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私の読書●小説家志望の読書日記㉕ボストン・テラン『神は銃弾』

 ボストン・テラン『神は銃弾』(文春文庫)読了しました。初読みの作家。
 アメリカの現代小説です。
 最初はあまりに猟奇的で残虐な殺人の描写や子供にたいする筆舌に尽くしがたい虐待に、ある程度読みなれているつもりの私でも気分が悪くなりました。
 でも、読みすすむにつれ、最初はほとんど共感できなかった2人の主人公、娘を誘拐された父親のボブと元ジャンキーで犯人を知っているケイスに、だんだん思い入れていくのが不思議で、バッドエンドになって欲しくないと不安でした。
 このケイスという女性がかっこいいんですね。
 それはもともとの強さではなく凄絶な体験を経て生きていくことを決意した人間の強さなのです。
 相当胸の悪くなるようなシーンが続きますが、そのなかでも読みすすんでしまうのはこれが大きいです。
 ノワール調ですが、希望を描いてもいるのかもしれません。
 また、白人中産階級の偽善と欺瞞をもみごとに描き出しています。それはもともとその一員だったボブの変化にあらわれていきます。
 二人の関係の変化が実にうまく描けていて読ませます。
 アメリカの荒涼とした砂漠地帯の描写が全編を貫きます。
 結論。とても面白かったです。

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