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私の読書●小説家志望の読書日記

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日々の読書の感想・雑記です。 お気軽に覗いていただければ幸いです。
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私の読書●小説家志望の読書日記⑥伊藤計劃『虐殺器官』

 非常に非常に面白かった。  それにしても、この作品もおそらく根っこにはドストエフスキーの問いがある。  『カラマーゾフの兄弟』における、イワン・カラマーゾフの思索と懐疑をほうふつとさせる展開があるのだ。私が思っていた以上に、ドストエフスキーは現代日本作家のなかの特定の部分に大いなる影響を与えていると思われる。ドストエフスキーは、「答え」よりは「問い」あるいは「懐疑」をとことんまで突き詰めて書いた作家だ。たとえそれが信仰にいたる道を究めようとするものであったとしても、いわ

私の読書●小説家志望の読書日記①はじめに

はじめに 自己紹介私は芥川龍之介とドストエフスキーをこよなく愛しています。ほとんどの作品を読んでいます。それも一度や二度ならず。 ごく若い頃にひどく落ち込んだとき、芥川龍之介がいたから生きていようと思ったことがあります。晩年「或阿呆の一生」や「歯車」など、多くは遺作となった作品です。不思議ですね。 本当に辛いときに、明るく楽しいものなど何の役にも立たないのです。寄り添ってくれるのは限界まで研ぎ澄まされた真実の叫び。 もともと好きな作家ではあったけれど、このとき芥川は私の