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私の読書●小説家志望の読書日記

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日々の読書の感想・雑記です。 お気軽に覗いていただければ幸いです。
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2021年9月の記事一覧

私の読書●小説家志望の読書日記㉙花村萬月も中村文則も

 今小説は、またしても花村萬月『二進法の犬』を読んでいます。  なんでこの私がヤクザものばかり読んでいるんだろう。でも、面白いので仕方ない。  ただ、この力のある作家、性と暴力と極道を外したごくフツーの小説でも読ませると思うんだけど、それは書く気が起きないんだろうか。まだ数冊読んだくらいだが、この作家のフツーの小説を読んでみたいと思ってしまう。  最近よく読んでいた中村文則もそうなのだが、設定とテイストが皆似通っているんだよね。そう考えると、太宰や芥川はずいぶんいろんなテイ

私の読書●小説家志望の読書日記㉘ドストエフスキー『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』

 「『罪と罰』を読まない」という本がちょっと話題になっているようである。  私は4人の作家のその「読書会」は読んでいないが、ある意味、ドストエフスキーを読まない方がよかったと思うときもある。  なぜか。  あまりにも面白すぎて、他の小説が色あせて、ほどほどにしか楽しめないのである。  ドストエフスキーのとりわけ『罪と罰』と『カラマーゾフの兄弟』。  この2つを読んだら、これ以上面白い小説は読めないという悲しい諦観が来てしまう。  若いころ、面白すぎて夜を徹して読んで以来、何度

私の読書●小説家志望の読書日記㉖花村萬月『ワルツ』

 花村萬月『ワルツ』。  面白かった。特に戦後の数年を舞台にして、当時の世相を節々に織り込んでいるところに迫力があった。知らなかったこともたくさんあった。  それはともかく、あんな結末になるなんて。なんだか、死んだ(殺された)城山が、『戦争と平和』のアンドレイ侯爵を思い起こさせた。死んだ者は過去になっていく。  しかし、ワルツ=三角関係の正体は何だったのだろう。単に一人の女性を巡るそれとは少し違う。城山に強く惹きつけられていたのは、最終的に城山を殺した林だったのではないか

私の読書●小説家志望の読書日記㉕ボストン・テラン『神は銃弾』

 ボストン・テラン『神は銃弾』(文春文庫)読了しました。初読みの作家。  アメリカの現代小説です。  最初はあまりに猟奇的で残虐な殺人の描写や子供にたいする筆舌に尽くしがたい虐待に、ある程度読みなれているつもりの私でも気分が悪くなりました。  でも、読みすすむにつれ、最初はほとんど共感できなかった2人の主人公、娘を誘拐された父親のボブと元ジャンキーで犯人を知っているケイスに、だんだん思い入れていくのが不思議で、バッドエンドになって欲しくないと不安でした。  このケイスという女

私の読書●小説家志望の読書日記㉔『私の男』桜庭一樹

 桜庭一樹『私の男』。初読み。  小説の冒頭が、うまいというか、ある種お手本のようで感じ入ったので、引用しておきます。  「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。日暮れよりすこしはやく夜が降りてきた。午後六時過ぎの銀座、並木通り。彼の古びた革靴が、アスファルトを輝かせる水たまりを踏み荒らし、ためらいなく濡れながら近づいてくる。店先のウィンドウにくっついて雨宿りしていたわたしに、ぬすんだ傘を差しだした。その流れるような動きは、傘盗人なのに、落ちぶれ

私の読書●小説家志望の読書日記㉓ 『ヴィヨンの妻』太宰治

   小説家志望と言いながら、こんなのはどうかと自分で思ってしまうのですが、太宰の作品をじっくり読んだことってあまりないんです。  めちゃくちゃに文章がうまいのもあって、つい流れるように読み、かつストーリーテラーでもあるので、さらさら読んでもなんとなくわかったような気になってしまう。  良くも悪くも太宰の才能。  そのなかでこの『ヴィヨンの妻』はわりと分かりにくい部類に入る短編なのではないでしょうか。太宰治の最晩年に書かれた作品ですが、そこには『人間失格』のような暗さは

私の読書●小説家志望の読書日記㉑男性作家と女性(漱石・太宰)

 前回のものに追記するならば、女性をある種の憧れの対象として描き出し成功しているのは、夏目漱石でしょう。『三四郎』の美禰子、『それから』の三千代、『こころ』のお嬢さんの描き方など。  鏡子夫人が「悪妻」であるとの評判もあるので、その反作用のように憧れの女性像を求めたのかとも思われますが、今の自分の知識では定かではないですね。  ちなみに、鏡子夫人悪妻説は、主に弟子たちが言ったことで、現在の視点から言えば、むしろ彼女がはっきりものをいう、さっぱりした気性で、かつ比較的開明的