ファゴットリード研究-第4ワイヤーについて-

＊今回の記事はファゴット奏者にしかあまり伝わらない内容です。
＊9/13追記致しました。記事の一番下に追記部分があります。

先日、リードに関する上記のツイートをしたら割と反応があったので、ここで、第４ワイヤーまで巻くことのメリットやデメリット、また通常のやり方との違いをまとめたい。

上記のツイートに記されているように、通常、ファゴットのリードは3本のワイヤーを用いて組み上げる。
昔から、少なからず疑問に思っていたことに、3本のワイヤーで組み上げるというのは、対称性を非常に大事な要素として持つファゴットのリードにおいて、あまり正しくない行為なのではないのかということがある。
4本のワイヤーで組み上げることによって、チューブ部分の力のかかり具合がより均等になるのではないかとも考えている。

今回、4本のワイヤーで組むことを試そうと思った背景には、ある問題があった。
ドイツでの師匠に教わったリードの組み方では、チューブ部分を成形する時に、通常よりも深くマンドレルに差し込み、円を大きく取って成形する。

僕が普段使うマンドレルはもっともポピュラーなものであろうリーガーのものではないのだが、リーガーのマンドレルでいうと、基準として示されている線よりも1cm弱ほど深く挿しこみ、チューブ部分を成形する。
このことによって得られる最大のメリットは、チューブ部分が拡げられているために、大きな音や強い音を出すことが非常に容易になるということである。
しかし、1cm近く、通常よりも深く挿しこんでいる分、ボーカルにフィットせず息が漏れてしまったり、ボーカルの形状との親和性が失われ、やや散らばった音になってしまうのだ。
師匠は乾燥したら縮まってボーカルとフィットするようになると言うが、僕の乾燥の工程がまずいのか、なかなかうまく行くリードは少なかった。

そこで、第４ワイヤーを加えて成形してみたところ、大変上手く行き、前述の、チューブ部分を大きく成形することによるデメリットは解決された。

◇第４ワイヤーを巻くことによって起こる変化およびメリット

・ボーカルとの親和性の強化および息漏れの防止
・音のまとまりが良くなる（雑音が少なくなる）
・ブレード先端の開きが狭くなる

◆第４ワイヤーを巻くことによって起こる変化およびデメリット

・一工程増えることによる面倒さ
・ボーカルにリードを差し込むときに第４ワイヤーが指に刺さりそうであぶない

2018年9月5日現在、第４ワイヤーを巻いたリードを使い始めてまだ日が浅く、メリットやデメリットはこれからさらに発見されるかもしれないので、新しく発見したらまた追記しようと思っています。（9/13追記しました）

第４ワイヤーを巻くことによって起こる変化を鑑みると、第４ワイヤーを巻くべきリードは

・チューブ部分のサイズが大きく、ボーカルとの親和性が薄いリード
・息漏れの起こるリード
・音が暴れてしまう、また雑音の多いリード

であるかと思います。

また、あまり開きがなく、パワーが弱い、比較的繊細なリードには第４ワイヤーは必要ないのではないかとも感じています。
第４ワイヤーを巻く工程は、必ずしも組み上げる時点である必要はなく、すでに完成されたリードも、チューブ部分の底から2mmほど、カッターで糸を除いてやれば第４ワイヤーを巻くだけのスペースを作れるので、問題を抱えるリードに対する対処だと捉えていただければ問題ありません。

最後に、僕のリードの全長やワイヤーの位置などのセットアップを紹介してこの記事を閉じます。この記事が皆様のリードメイキングの一助になることを願ってやみません。

もし質問などあれば、お気軽にSNSやメールよりご連絡ください。わかる範囲でお応えさせていただきます。
また、これから、noteを使ってファゴットのリードについての記事を書いて行こうと考えているので、「こんなことを取り上げてくれ！」といったトピックがあれば、是非とも教えてください！
マニアックな内容となりましたが、読んでくださりありがとうございました。

追記（9/13）

第4リードまで巻いたリードを使い始めてから2週間弱が経とうとしています。その中で、この記事に付け加えるべき変化が起こったのでこの追記を書いています。
それは、時間の経過、また葦が水分を吸ったり吐いたりすることによって起こる事象です。

まず、何日か吹き続けると、ボーカルに直接当たる部分が狭くなり過ぎてきました。この変化に対する処理は、通常のリードと同じで、リーマーで少し内部を削ってやれば問題ありませんでした。
そして、1週間ほど経つと、第４ワイヤーが緩んできて、息漏れや雑音がするようになり、締め直す必要が生じてきました。この辺りは第２ワイヤーと同じように、きちんとチューブの形状に沿って巻かれていないとあまり効果を為さないようです。

9/13現在、変化したのは以上の事項です。他は何の問題もなく、とてもよく作用しています。また追記するべき事項が生まれたら追記いたします！