江戸川乱歩「孤島の鬼」
堪能しました。
三上延さんの「ビブリア古書堂事件手帖」で乱歩が取り上げられ、この作品が絶賛されていたので読んでみました。
乱歩といえば、エドガー・アラン・ポーの影響を受けた作家であり、推理ものの他にもホラー・スリラー系の通俗小説もたくさん書いてます。
僕も学生時代から、そのゴシック調に惹かれるものがあって読んでみようと思ったのですが、当時は結構グロっぽくて読み続けられなかった記憶があります。
この作品はいわゆるフリークスを様々な立場で用いていることや、当時では珍しい同性愛の描写があり、結構グロテスクです(時代柄、差別的蔑視的な表現もあります)。
でも、現代仮名遣いに置き換えたせいもあってか表現が軽い感じでした。
まあ、読む側も老けてきてすっかりドロドロしてますので、このくらいの表現なら微笑ましいくらいに感じられました。
ゴシック調世界を堪能するつもりが、それはいまひとつでしたが、ストーリー展開には参りました。かなり複雑に組まれていて読み応えがありました。
事件の発端で重要な二つの殺人事件なんてあっという間に語られてしまいますが、そのあとからこの事件の謎の解決を深く長く楽しめました。
最後の洞窟を彷徨うところは冒険活劇的であり、最後の100ページは一気読みでした。
乱歩はこれからもたまに読もうと思います。横溝正史もですが……。
ところで、この作品にも登場する結合双生児について調べてみたら、思いもよらぬことを知りました。
単体として生きている我々からすると、結合状態は生きにくく、苦しいものだと考え、なんとか分離できないものかと思いがちです。
ところが、結合双生児にとっては、分離して欲しくないという人がほとんどだそうです。
理由まで書いてはなかったのでよく分かりませんが、双生児自身のシンパシーが結合することでより強くなるのかなと思いました。
医療サイドも、結合状態が生命の危機やその後の成長においてトラブルが予想される場合のみ分離手術を勧め、そうじゃない場合は勧めないことが通例になってきているようです。
また、それぞれが別の配偶者と結婚するケースもあるのですが、プライバシーを大切にするタイミング(夫婦生活)では、それを大切にしなくていいタイミングの人が意識を失うことができたりするようです。
ちなみに結合双生児は必ずどちらか一方の性になります(二人とも女か二人とも男)。
一卵性双生児から発生するので当たり前ですが。
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