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In the heights

インザハイツ見てきたの。プレビューみて、大阪とかまわってプレビュー以来の東京公演。

ブロードウェイの言論形成の中核を担うリンマニュエルミランダの作品。曲も素敵でブロードウェイっぽいの。

舞台はニューヨークワシントンハイツ。

ワシントンハイツはドミニカ系、それから南米の移民が多く住んでいる移民街なの。移民が肩を寄せ合って生きていってる、狭くて、貧しくて、お互いにちょっとづつ重荷を支え合ってるコミュニティのお話し。

ウスナビ(miroさん)は、両親がドミニカ共和国から船でNYに来たときに、船の潜伏に描かれた「U.S.NAVY」って文字を見てつけた名前なの。ここ、笑えるようで笑えない、哀しさを感じちゃうよね。両親は亡くなって今は小さい雑貨店を切り盛りしてる。

ウスナビはアブエラクラウディア(田中利花さん)っていうおばあちゃんに育てられて、今でもアブエラのことを大事にしてるの。コミュニティのみんながアブエラのことが大好き。アブエラは、星やパンくずや瓶のきれいなところをいつも見つけては、神様に素晴らしさを感謝するの。

ウスナビはお隣の理容店に勤めてるVanessaのことが好きなんだけどウジウジ照れちゃって全然声もかけられない。

暑い夏の始まりにニーナ(田村芽実ちゃん)がバークレーから帰ってくる。ニーナはコミュニティの中で希望の星なの。賢くて、今までずっと勉強が一番できてみんなの期待を背負ってバークレーに行ったの。ニーナのお父さんケヴィンロザリオ(戸井勝海さん)と、お母さん(カミラロザリオ、未来優希さん)は、小さなタクシー会社を経営しているんだけどギリギリ、負債を返し切れてない。でもそんな中で、かなり無理して学費を出して、それに奨学金を足してニーナは大学に行ってる。

でも教科書代を捻出するためにバイトをしなくちゃいけないニーナは、成績が落ちて、奨学金がもらえなくなって、ドロップアウトしてかえって来ちゃったの。でも帰ってきて、みんなが「私たちのニーナ」「希望の星」っていってるのを見ると、ドロップアウトしたなんていえなくなっちゃう。

ロザリオさんのタクシー会社で働いているベニー(林翔太さん)は、ニーナのことが好き。小さな時からニーナのお父さん、ロザリオさんの会社で働いて、ロザリオさんに運転の仕方を教えてもらって、ネクタイの結び方を教えてもらって、ボスのためにって働いてるの。

この、林翔太さんベニーと、田村芽実さんニーナが、もうほんっと気持ちよくお歌が素敵なの。声が魅力的なんだけど、ぐいぐいどこまでも声は伸びるし、なんというか、二人とも台詞をしゃべってるみたいに、でももっと表情豊かに歌うの。ほんと素敵!!!ほんっっっとすてき!この声は大事にしたい。(誰目線!)しかも二人の声もぴったりで、今、この声でこの歌聞けてホントよかったと思っちゃう。

ニーナはとうとう両親に退学したことを伝えるの。お父さんのロザリオさんは、これを聞いて、誰にも相談せずに自分のタクシー会社を売っちゃう。

もともとね、ロザリオさんは、プエルトリコのプランテーションで働いていた親に反発して、アメリカに出てきたの。自分勝手に人生を決められたくないって。お父さんにされたことはつらい記憶なんだけど、娘のために思ってしたことが、自分のお父さんとおんなじになっちゃう。そして、ロザリオさんだけがそれに気づけないでから回っちゃうの。野心家だけど心優しい、家族思いで思い詰めるタイプのロザリオさん。戸井勝海さんが演じているんだけど、そういう背景を丁寧に教えてくれる感じがして、ロザリオさんの物語のなかで、ロザリオさんだけが取り残されて言っちゃうのが、すごく切ない。

多分プレビューの時と、ロザリオさんのお父さんについての描写が変わった感じがして、戸井さんの丁寧なお歌と丁寧なお芝居で、じっくり人生に寄り添える感じがしたの。

いやところでここでちょっといったん荒ぶっていいですか?

もう私、戸井さんが大好きになってからかれこれ20年くらいたつわけです。うそ、本当はもっとたってるわけです。でね、そりゃ大好きだけど、大好きだってことで安心して見てたの。今日も大好きな戸井さんだーってなかんじで。ところが、本日、なんか急に、大好きの沼にしずめられちゃったの。ぬくぬく温泉だと思って肩までつかってたら、ずぶーーーーって急に深遠に引きずり込まれて息もできないっていう。いやーこわい。ぬまってこわい。といさんだいすき!!


はあびっくりしたなあもう。


さて、娘のためにとおもって会社を売ったものの、誰にも理解を得られず、ずっと経理を手伝ってきた妻にも、従業員のベニーにも、裏切りだと言われて、みんなでニーナのウェルカムバックホームパーティをしようと思ってたのに台無しに。

バラバラになったところにニューヨークがまた停電して(私の「また」は、fly by nightでも停電したのに、の、「また」!)家族はバラバラに、ロザリオさんは心配してニーナを夜通しさがすの。

ニーナはこの大騒ぎの一夜のなかで、まわりと「言葉が通じないことに」つらさをベニーと分かち合う。ベニーはスペイン語が話せなくて、スペイン語を話す会社の人との会話が難しくてちょっぴり距離を感じてる。ニーナはお金持ちばっかりのクラスメイトと、おんなじ英語なのに言葉が通じないってなってる。周りとのちょっとした距離に乾杯した二人は一夜をともにする。


一夜探し回って死にそうになってるロザリオさんは、またもや言い過ぎちゃうし、ベニーには、「俺がおまえに運転の仕方を教えてやった」「ネクタイの結び方も教えてやった」「おまえが娘に釣り合うとでも思ってるのか」って言っちゃう。娘への気持ち、今まで育ててきたベニーへの気持ち、プエルトリコ出身っていうアイデンティティと、ベニーがそうじゃないこと、なんか色々混ざってぐちゃぐちゃになっちゃうロザリオさん。

ところでもう一回また、大声出していいですか?

戸井さんの、前髪が、ここで、はらりと前に落ちています。今まできっちりあげてたのに!!!なにそれ!!疲れている様子を見せるためだって言うことは知ってるよ!!しってるけど、いわせて、


なにそのセクシーー!!!!!!!

すき!!!!!!!


失礼しました。

えっとなんだっけ、そうそう。このお話の中でね、みんな自分の出身地にすごく誇りを持ってるの。プエルトリカンだとか、ドミニカンだってことをすごく大事にしてるの。だけど、一方で、自分はアメリカ人だって言うアイデンティティもあるの。物語の中で独立記念日のパーティがあるんだけど、愛国心を示そうって言ってみんな楽しそうに独立をお祝いするの。この、自分は誰かって言うところに、出自や父母、肌の色、言葉だけじゃなくて「合衆国の一員」っていうのがあるってことがアメリカの素敵なところだと思うの。この誇りが今もこれからも守られますようにっておもう。

ロザリオさんも、娘のニーナも頑固で、ニーナは「会社を売ってまで学費助けていらない!!」ってお父さんに言ってお父さんは絶望。似たもの親子なのね。そこに、お母さんが入ってきます。

黙って聞いていれば、、全くもう。黙って私の話を聞きなさい。ケビンロザリオはどうして家族に相談ができないの?そんなのあなたのお父さんと変わらないでしょう?ってまず夫を叱り飛ばす。続いて、娘に、あなたもよ、どうして相談をしないの!学校をやめるならそう相談をしてきなさいって。みんな心配したのよって。ほんとおっしゃる通り過ぎる。


思わず観客みんな、ロザリオさん万歳って拍手を送ったよね。


そうやって、ロザリオさんのタクシーも売却され、バネッサが務める美容室も売られちゃう。停電の時に暴徒に襲われたウスナビのお店も経営できてない。肩を寄せ合ってきた移民の町が、もう、身を寄せ合うことすらできなくなって、みんな町を離れなくちゃいけなくなって、バラバラになっていく。みんな明るく歌を歌って最後の夜をお祝いをするんだけど、この、焦燥感とか不安って、ぞっとした。みんな明るい未来があって離れるんじゃなくて、ここで働けない。ここで住めないって言ってバラバラになるんだもん。みんなが少しづつ優しく感じられるこの小さなコミュニティが崩壊していくのって多分、この作品が発表された2005年当時よりも、もっともっと今身近な感覚になってると思う。当時のニューヨーク市長ジュリアーニさんが、トランプのもとにいって、全国区で移民が暮らしにくくなっていってる。

そんな中アブエラが宝くじを当てるの。9600万ドル。でも、お金をウスナビと、ウスナビのいとこにあげて、ウスナビとドミニカに帰るって計画をしたところで、心臓発作で亡くなっちゃう。この小さなコミュニティの精神的な柱がいなくなって、アブエラが大事にしていたこのコミュニティを、まだつなぎ止めたいって考えたウスナビはあの小さなお店をまだ続けることにするの。


これ、最後なんとかハッピーエンドだけど、でも、やっぱり移民が自分のホームを失い始めて、貧困層に対して、さらに貧困が容赦なく襲ってきて、昔みたいなアメリカンドリームの見ようがなくなってきたっていうのは、みんなの心の中を、爪でぐぐってえぐるよね。


ウスナビや、ベニーや、ニーナや、このコミュニティで生まれてくる子どもが、この作品のなかでそうだったように苦しまなくてもよいようにしたいなって思わなきゃいけないな。この作品でメッセージを受け取った大人として、できることをしなくちゃいけないと思いました。そんなこんなで、お仕事も、立法にまつわる諸々のしんどい動きも、ががががんばるです!!!

あとほんっと戸井さんがかっこよくて神様ありがとうございました。







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