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明治座で忠臣蔵 討入る祭 みた!

ねえほんっと良い観劇納めしちゃったからまさかの二連続観劇感想投稿して良いですか?

私、忠臣蔵って大好きで、馬鹿みたいに歌舞伎座に通って、八十助に熱をあげまくって、八十助の「お祭り」を版画にして八十助本人に渡しに行くっていう暴挙を働いていた小学校5年生くらいの頃から、忠臣蔵は特別だったの。

や、ほんとに確かに暴挙なんだけど、ほら、自分で声かけられないから「大和屋!」って言ってください!って大向こうのおじさんにお願いをしに行ってたら、あまりの好きさ加減をかわいそうに思った大向こうのおじさんが八十助の楽屋に連れてってくれたっていう。ハートウォーミングストーリー。昔からやばいやつだな。私。

閑話休題

でね、年末にいっつも歴史物の明治座の企画があってね、る祭っていう。毎年ほんっと面白いの。これ毎年見てたら私日本史得意になってたと思う。

で、今年は忠臣蔵のパロディだっていうところまで知ってて、見に行ったの。

前半、怒涛のテンポでね、松の廊下から切腹まで、ストーリーテラーの近松門左衛門(我らが原田さん)が歌うGetWild にのせてお送りしちゃうの。原田さんの観客の心をがっと引っ掴んで自在に連れ回す、アレが、今回もほんとすごかった。

でね、吉良上野介(一発変換できない!なんで!!)って確かにやなやつだけど、あれって、綱吉の判断も不公平じゃない?浅野家だけお取りつぶしにしちゃって吉良お咎めなしとか!!
あの時代の物語としては、吉良邸に打ち入るのは自然なのかもしれないけど、浅野家の家臣として、冷静に誰を糾弾したいかって考えると、綱吉もでしょ。

この忠臣蔵の赤穂浪士は、吉良だけじゃなくて綱吉もやっつけようとするの。さらに「実は」の事情として、赤穂浪士で一緒に討ち入りするんだけど、浅野の人じゃないって言って切腹せずにどっかに逃れた寺坂吉右衛門が実は家宣だったの。

家宣は、綱吉に追われて記憶を無くして、浅野のお家で、浅野の家臣たちの一人として、寺坂吉右衛門の名前で暮らしていて、個性派の家臣の中で良い仲間に恵まれてるの。

家宣を追いやった綱吉は、赤穂の塩を幕府の手に入れるために、吉良上野介とあらかじめ結託して松の廊下に至ったのだけど、吉良上野介には病気の奥方がいてね、奥方のためにお金がどうしても必要で、そのためになら卑怯にも卑屈にもなる吉良なの。

私たちの知ってる忠臣蔵の通りにお話が進んで、いざ、だんだら羽織を羽織って、討ち入るんだけど、そこで、寺坂吉右衛門/家宣が、「吉良を、綱吉を切らないでほしい」「暴力で解決しない方法はないのか」っていうの。でも、説得は難しい。

ここの家宣の必死の説得が素敵だったの。

なんか、忠臣蔵もそうだし、いわゆる仇討ちものって、悪者を、バサーって切って、悪者が血を流して苦しむのを、観客も楽しむじゃない。いやな言い方をしちゃうと

でも、それって、ただ私たちが気持ちいいだけなんじゃないの?っていうのを正面から聞かれた感じがしたの。吉良上野介や、綱吉の悩みや、辛いところも描かれていて、それを聞いちゃうと、バサーって袈裟斬りに切って気持ちよく終われるかっていうとそうじゃないんじゃない?っていう。
わ、確かに、すごく観客としての自分が、弱いものいじめをしちゃってたような気がして、すっと背筋が寒くなったの。

で、家宣が刀を峰打ちに持ち替えて戦うんだけど、赤穂浪士はやっぱり吉良を討っちゃう。そして、綱吉も。綱吉の最愛の妻、信子も後を追うの。

そうやって、仇討ちがなされた。私たちが知っている忠臣蔵とは違う、他にもいろんな事情があった、ちょっと整理のつかない、考えなきゃいけないことがいっぱいある忠臣蔵の物語が完成するの。

最後に出てきた近松門左衛門がその物語を語って聞かせると、「その物語は、綱吉、信子の手前、外に出すのはやめましょう」って言われて、近松門左衛門がこの物語を書き換えるってとこで終わるの。最後、浅野内匠頭が生前に臨んだ、お花見のシーンだけを書き加えることを約束して。
多分出来上がったお話には、お花見のシーンと、あとは、私たちが知っている、綺麗な仇討ち物語が描かれるんだろうなって思ったの。

でも、私たちは、お話に描かれなかった、歯向かうなんて考えつきもしないような大物(将軍、綱吉)への仇討ちをする正義や、暴力に暴力で立ち向かってスッキリすることに対する反駁を、ちゃんと心のうちに受け取らなききゃなって思ったの。

近松は、仮名手本忠臣蔵を作るときに、現在の政府批判にならないように、綺麗にお話を作り替えて、
今回のお話の近松も、同じように綺麗にお話を作り替えたんだろうけど、

そうじゃない、悪者の人生のいいところとか、というか悪者っているんだろうかとか、そうやって悪い人がいなくたって、理不尽なことは起きるよねっていうこととか、そういうことをすごく考えましたん。

エンターテイメントとしてほんっとにたのしかったし、笑ってお腹が捩れたし、ダンスも歌もあって、面白かったんだけど、後からいっぱい考えることもあって、よくよく知ってる忠臣蔵の世界観を使って、グルンって世界が一回転したような気持ちにさせられた作品だったの。

目の前の紗幕がしゅって取り除かれた感じがして、一年の観劇納め、最高のものになりました。ほんと、全人類見た方がいい。

今年は、全人類が見た方がいい作品がたっくさんあったけど、コロナの状況下で、全人類見て!!!!っておいそれと言いまくれなくて、辛いねえ。
あとちょっと、あとちょっと我慢したら、安全な世界がまた戻ってきますように。

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