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ピエタ 僕は青空を持ってる

すごかった。
わたしにとってのアンジェロはこの作品を作った人たちみんなよ。

あのね、浅田次郎のピエタ、何度読んだって泣いちゃう本だったの。主人公の友子のお母さんは友子が6歳の時に彼女を捨てて男性の元に行っちゃったの。「いい子にしてたら戻ってくる」って置いて行かれて、お母さんに戻ってきて欲しくてずっといいこでいるためにいたいけな努力をしたまま大人になったの。

でも、おおきくなって、お母さんが帰って来ないのにいい子で幸せな人生を送るのがしんどすぎて、完璧な彼氏からのプロポーズから逃げ出しちゃうの。うだつの上がらないみすぼらしい「リーさん」だったら母親に置いて行かれた自分にはちょいうどいいって思って、自分を傷つけるために、リーさんを婚約者として母親に会いにローマに行くところから始まるの。

文章自体も、ともこが母親に語る語り口で描かれててすごく特徴的だし、物語自体、読んでてしゃくり上げて声が出ちゃうくらい力のある、引き摺り込まれちゃうもう物語なの。

わたし、ピエタがミュージカルになるって聞いた時、もう完成されたこの物語に他の誰かが入る余地があるのかなっておもったの。

すごかった。魔法だった。

原作自体にものすごくエネルギーがあって完成されてるのに、その物語を大胆にさわるの。エピソードを加えたり、キーポイントになる言葉を加えたり。
本当に繊細に完成されてると思ってた作品に、なんだろう。虹色の魔法をかけたみたいにいろんなパワーを加えて、魔法のお城を作るみたいにひとつのすごい
ミュージカルっていう作品を作ってみせたの。

脚本と作詞高橋亜子さんなんだけど、元々にはたしかなかった、「がんじがらめ」「僕は青空を持ってる」「天使はね。。。」とか、他にもたくさん、何度も何度も反芻しちゃう大事で素敵なセリフを加えて、それで世界がぶわああって立体化するの。文庫本開いたら光のアーチが出てきたみたいなああいう体験した。

さらに原田薫さんの振り付けで、言葉に勝るとも劣らない強い鮮烈な表現が舞台上に現れるの。頭痛くなるくらい泣くけど、ちょっとハッピーになれるのはこのキャッチーというか、鮮烈な振り付けなんだろうなあ。

曲も!!小澤時史さんと田中和音さんの曲で、同じフレーズがレイヤーで表れて、言葉が言葉より自然に届くの。キャッチーで帰り道も口ずさんじゃう。小澤さんのミュージカルの曲って、物語なの。ピアノと管?の編曲も物語。言葉とリズムと音で編んでいく物語の感じ。

でもね、どれもものっすごいエネルギー量なの。浅田次郎の原作に負けず劣らずのすっっごい力で。役者さんたちのエネルギーもすごい。なのに、なんかこの作品自体がオーケストラのアンサンブルみたいに、ぐるぐるぶわああああって目の前に現れるのは、これはきっと演出の渋谷真紀子さんの魔法。や、ほんっとにこれは魔法だわ。

役者さんたちもすごかったああ。
友子役の梅田彩佳さんは、いつだかスワンキングの時にすごいって思ってたんだけど。や、すごい役者さん。ほんっとにすごい。髪の毛が逆立つほどに怒ったり、背中に力を入れて我慢したり、リーさんの気持ちに触れて柔らかい気持ちを取り戻したり、その全部が、ともこの体にわたしが入ってるみたいにわかるの。

お母さんの高泉淳子さんの、ごめんなさいっていう笑い顔が、つらかったすごかった。一瞬で胃に穴が空いた。一緒に声出るくらいないちゃった。

リーさんはね、伊藤裕一さんなの。多分かっこいいのに、リーさんにピッタリ。もう、リーさんのせいでみんなしゃっくり出るくらい泣いたのよ。リーさんは役代わりで、神田恭兵さんと交互なの。それぞれ全然違うんだろうな。神田さんリーさん見るの楽しみ。

ちなみにリーさんじゃない日の方のリーさん役の人はいろんな役で出てるんだけど、チェックのズボンにセーター姿の神田さんめっっっっちゃかわいいからみて!
かっっっっっわいい!!
畠中さんもすごかったなあ。背中を向けただけで全部が伝わる。

舞台に物語を載せるって魔法だって思いました。
すっっっっごいまほうだった。
なんどでも見たいし、見てほしいな。

浅田次郎さん、きっとゾッとするだろうな。
自分の作品がこれだけの別の作品になるってクリエイターとして脅威だろうな。ゾッとして、死ぬほど嬉しいだろうな。

渋谷真紀子さんの作品、遠ざかるネバーランドでも見たけどこうやって同時代でどんどん作品を作っていくのが見られるの嬉しい。

ずっと応援します。でもとりあえず目を冷やさないと明日やばい。

PS ところで、あれ、梨だった?りんごじゃなかった??

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