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【#ひと色展】くちびるに魔法をかけて

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「なんで私って、こんなに童顔なんだろう。」
茜は鏡を見ながら悲しげに呟いた。

茜には密かに思いを寄せている相手がいた。
職場の同期の恭介だ。
恭介はとても優しい。
誰にでも優しい…そう、誰にでももれなく優しいのだ。
そんな恭介をステキだとは思うのだが、恋するオトメとしては自分にだけ特別な優しさをかけて欲しいと思ってしまう時だってあるのだ。
特にイヤだなって思うのは、タメなのに妹みたいに気遣われていると感じる時。
茜は別に、仕事ができない訳ではない。
なのに年下みたいに扱われてしまうのは、たぶん見た目が幼いからだろう。

「今日こそは、絶対アイツをドキッとさせてやるんだから!」と、普段とは違うメイクに挑戦しているのだが、なんだかビシッと決まらない。
自分で買った化粧品は、改めて見るとどれもこれも「カワイイ寄り」のカラーばっかりなのだ。
だって、ちょっと前までは「カワイイね。」と言われるのが何よりも嬉しかったのだから。
でも恭介には「カワイイ」じゃなくって「キレイ」って思って欲しい。
どうしても!

茜はコスメボックスの中身を改めて一つ一つ確認した。
すると。
「この口紅は…」
自分では絶対に買わないであろう、深みのある赤色の口紅が出てきた。
大学時代の親友が「カワイイを卒業したいときに使いな。自分では気付いてないと思うけど、絶対茜に似合うから。」と言ってプレゼントしてくれたものだ。
お礼を言って受け取ったものの、いつもピンクやベージュの口紅ばかり使っている茜にはハードルが高すぎる色だと感じてコスメボックスに入れっ放しにしてしまっていた。

口紅の蓋を取り、クルクルと回すと深みのある赤色の口紅が頭を出した。
「こんな強い色、私に似合うのかな。」
不安な気持ちで見つめていると、耳元でこんな声がした。
「大丈夫、私がキレイの魔法をかけてあげるから。」
ビックリして鏡を見ると、茜の右肩に5㎝位の女の子が立っていた。
「私はあなたの味方だよ。さあ、その口紅を塗ってみて!」
その言葉に背中を押されるように、茜は唇に紅を引いた。

「噓でしょ?」思わず声を出してしまったほど、その色は茜に似合っていた。
右肩を見ると小さな女の子の姿は消えていたが、どこからかこんな声が聞こえてきた。
「自信持ってね。茜ちゃん、すごくキレイだよ。」

茜は鏡に向かいニッコリと笑って、こう呟いた。
「今日こそは、絶対アイツをドキッとさせてやるんだから!」

-了-
※小説の本文のみ992文字
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イシノアサミさんの企画に参加させていただきました。

『ひと色展』のイラストの子たちは、どの子もカラフルでかわいいくって!
本当は全色コンプリートしたいくらいだったのですが、残念ながら締め切り当日に1作品仕上げるのが精一杯でした。
でも楽しかったー!
イシノさん、素敵な企画をありがとうございました。

ちなみに、私が選んだのはこの子↓です。

パーマネントアリザリンクリムソン
“ときめく背伸びの色”

改訂履歴
2022/04/24 :新規


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