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「レバノンで起こった爆発の背景」

ようやく週末。お疲れ様でした! 😉💓

お盆の時期ではありますが、コロナのおかげで、我が家は東京居残り組。
101歳になった母にはもう何ヶ月も会っていないので顔を見たいのですが、コロナ感染のリスクを考えると会いに行くこともできません。代わりに2週間ごとに果物のゼリーや水羊羹を送っています。母は『夏』を感じてくれているかな?

そういう私たちの元へも神戸の妹さんから桃の残暑見舞い。たっぷりの氷水で冷やしたあと、あま〜い白桃をいただきました。


ところで、8月4日に起きたレバノンの首都ベイルートで起きた大爆発。
一瞬、「イスラエルの報復攻撃?」と緊張しましたが、直ぐにイスラエル政府が否定。多くの場合、ノーコメントではぐらかすイスラエルとしては異例の対応でした。


あの爆発がレバノンにどれほど大きな被害をもたらすか、また、これまでの経緯から真っ先に自国が疑われるであろろう国際関係を熟知した上での、「やっていないことで世界の非難を浴びるわけにはいかない」という意図があったのでしょう。そういう意味で、否定には信憑性がありました。

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(写真は AFP)

レバノンでは、これまで、政府が機能を失っていて、経済は破綻。インフレは止まる所を知らず、ゴミの収集や電気や水の安定供給もできていないほどでした。

昨年10月頃から始まった民衆のデモは、政府の汚職や無能、イランとの関係の深い過激派組織ヒズボラ優遇などに対する「民衆の怒りの表明」でした。
ヒズボラは、レバノン国軍を凌ぐ軍事力を持ち、シリアの内戦やイランの手先としてのイスラエルへの攻撃などを行ってきました。

1983年ベイルートで起こったアメリカの海兵隊のビルやフランスの軍司令部への爆破テロもヒズボラによるものです。
アメリカによるイラン制裁の間も、ヒズボラがイランの石油をレバノンへ持ち込んでいたとされています。

(皮肉なことにこの石油の持ち込みを人の手で行ってきたうちに、イランの中東で最初に起こった爆発的なコロナウイルス感染がレバノンへももたらされたとの報道があります。)

レバノンでは30年近く、トロイカ体制が続いてきました。マロン派のキリスト教徒、シーア派のイスラム教徒、スンニ派イスラム教徒(ドルーズ派を含む)の人口比率に応じて政府が構成されるというものです。

しかし、この政府は今や政争に明け暮れ、ここ数年、何かを決めることも、それを実行する力も失っていました。

その結果、経済も悪化し、3月には国家として「債務不履行(デフォルト)」にも陥っていました。このため通貨が暴落し、さらなるインフレを跳ねきました。

レバノンポンドは、ドルに対して80%も価値を失い、輸入品の価格は天井知らず。国民の貧困率は急上昇しています。

また、主にイランから波及したとみられるコロナウイル感染患者への対応もうまくいっていませんでした。そのため、民衆のフラストレーションは今年に入ってさらに増していました。

政府の無能が引き起こした史上最悪の貧困やインフレ、ヒズボラを通して国内への影響力が増しているイラン、それにたかり汚職を繰り返し私腹を肥やす政治家、その上、新型コロナウイルス感染拡大への対処もできていない政府に対して民衆の怒りは、すでに爆発寸前だったのです。

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    (写真は毎日新聞)

そんな時に、この爆発でこれまでに145人の死亡が確認され、負傷者は五千人を超えました。いまだ約100人の行方不明者もいることから、被害はさらに増えるでしょう。

一部に「ヒズボラの関与」を示唆するかのような報道もありましたが、冷静に考えるとこの可能性は低いでしょう。

爆発のあった地域はヒズボラの活動拠点や居住区域に近く、また、たださえ民衆の不満が高まっている時に、多くの被害を出して敵意を煽ることは、ヒズボラにも、その背後にいるイランにも何の利益もありません。

実際のところ、税関当局がこれまで6回も、2750トンもの硝酸アンモニウムが保管されている危険を司法当局に訴えているにもかかわらず、政府は対応してきませんでした。

この3000トン近い硝酸アンモニウムは2013年にロシアからモザンビークに向かう船が、レバノンに寄港した際に差し押さえられたもの。爆発物の原料にもなるこの危険物をビジネス街や住宅街の近くに放置してきたのは政府の怠慢以外の何者でもありません。

現在港湾関係者15人程度が拘束されているという情報もあります。

この5000人以上の死傷者を出し、主要な港の機能を失わせ、首都ベイルートを壊滅状態に落とし入れた爆発は、ヒューマン・エラー、あるいは無作為という怠慢によって引き起こされた可能性が高いのです。

人口240万人の首都ベイルートで30万人が住む家を失ったダメージは計り知れません。
被害総額は150億ドルにものぼるという試算もあります。
すでに国家レベルで経済破綻しているレバノンのみで再建できる額ではありません。旧宗主国フランスの支援も限られているでしょう。

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               (写真はロイター)

そもそも、負傷者を受け入れるのに十分な医療機関すらないのです。
カタールは、折りたたみ式ベッドや治療薬を輸送し、医療支援を行いました。(カタールは、スンニ派ですが、もともとイランと近いのです)

しかし、ここ最近イランとの繋がりが深くなり始めていたレバノンに対し、かつてはアラブ・リーグの一員として支援を行ってきたサウジアラビアなどからの支援は、今回まだ表明されていません。

レバノンのコロナウイルス感染者は、累計で5951人。4日にも209人の新規感染者は報告され、病院の対応はすでにギリギリの状態でした。

そこに5000人の死傷者が出てしまい、医療システムは崩壊しています。

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    (写真はロイター)

レバノンの政治の最大の問題は汚職です。

真っ先に支援を表明し、レバノンまで駆けつけ、民衆に「貴方はレバノンの救世主だ」と歓迎されたマクロン大統領が、「レバノン政府に白紙の小切手は渡せない」と言い切り、「レバノンの政治システムの変革を求める」「我が国の出す支援金が、政治家の懐を潤すことなく、貴方たち国民に公平に行き渡るようにする」と言わざるを得なかった背景がここにあります。

今年8月31日には、近代レバノンの建国100周年の記念日が来るというのに何という皮肉な状況でしょう?

政治家による内部紛争、責任逃れ、職務怠慢。そういうことがいかに国民の悲劇に直結するか。
そんなことを思わざるを得ない悲惨な事件でした。

世界では本当に悲惨な出来事が続いています。この爆発とコロナウイルスの感染増大によって、民衆のレバノンの政府への不満はますます高まり、その結果、レバノンがイエメンやシリアなどのような破綻国家にならないとは言い切れません。

コロナウイルスの被害により、新興国からは海外からの資金が逃げ出し、デフォルトに陥っている国はレバノン以外にもアルゼンチンなど多数あります。

トルコも、中央銀行が様々な資金繰りをしていますが、いつデフォルトを起こしても不思議ではない綱渡り状態です。

今、チュニジアの哀愁漂う女性ボーカルのアラブ音楽を聴きながらこの原稿を書いています。ポルトガルの「ファド」に似たメロディがなんだか、とても悲しげに耳に響きます。

でも、気を取り直し、どうぞ皆様も素敵な週末お楽しみくださいね!
コロナと熱中症にはくれぐれもお気をつけて。😉💓

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おまけの写真は主人がいたずらで撮っていた「桃」のショット。😅

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