訳者は天才シリーズ3・花の名前
2022年9月30日のツイートまとめ。
植物の英語名で面白いなと思ったのはサルスベリ。英語でcrape myrtle もしくは crepe myrtle と呼ぶ。myrtle は日本語でギンバイカとかテンニンカとか呼ばれる潅木で、白い花と緑の照葉にスパイシーな芳香がある。crape もしくは crepe は織物の「クレープデシン(『クレープデシン』自体は直訳すれば『中国の縮緬』)」を指す。
花を咲かせたサルスベリの木を見て「葉っぱの感じはうちの地方で言えば ギンバイカの木に似ていて、花はクレープデシンみたいに薄くてヒラヒラしているな」と思った人がいたんだなあと思うとかわいいじゃないか。
クレープデシンは薄くてシュルシュルとしてヒラヒラの、ちょっと透け感とシボ感のあるきれいな絹織物(最近は化繊も多い)。スカーフとかヴェールとかドレスに使う。中国産絹縮緬を真似てヨーロッパで作られて、日本にはフランスから輸入されたので「フランス縮緬」と呼ばれた。略称「デシン」。
本来その土地にはなかった動植物や製品が輸入されてきたとき、現地の人が「これはうちとこで馴染みのナントカに似ていて、この辺はカントカに似ているから『ナントカカントカ』と呼ぼう」と決めたような現地名を見るの大好き侍。「なるほどうまく名付けた」というものも「どこがだよ」というものも好き。
サルスベリは中国南部原産で、日本への渡来は江戸時代より前のどこか。ツルツルの幹を見て「サルでも滑って登れなそうだな」と思ったどこかの日本語話者もかわいいが、同じ木を見て「クレープデシンみたいな花を咲かせるギンバイカだな」と思ったどこかの英語話者もかわいいじゃねえか。
なお myrtle の日本語名が「ギンバイカ」なのも「花が銀色の梅みたいだよな」で付いた。
当番にとってサルスベリは「かき氷の木」だ。祖父の庭に白と濃ピンクのサルスベリが植わっていてな。真夏に祖父母の家に行くと、こぼれ落ちたサルスベリの花びらを拾い集めて白と濃ピンクを二層に盛って、氷イチゴを作ったものである。更に上から白を散らすと氷イチゴミルクになるんである。