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蠍座17度「自家受粉」

2018年11月8日20時26分、トランジット太陽が蠍座数え17度へ入りました。蠍座数え17度のサビアンシンボルをぎゅぎゅっと五文字くらいに圧縮すると「自家受粉」


「♏17自家受粉」の原文チェック。黒字が1925年ジョーンズ版「自分の子の父である(ある)女」。青字が1975年ルディア版「自身の霊により受精した(ある)女が『身ごもって』いる」。“great with child” 原文でも引用符で括られています。意味は次段で補足。

great with child は「おめでたである(expecting a baby)/妊娠している(pregnant)」を遠回しに言う慣用表現で、特に臨月の場合によく用いられる。「子によって偉大にされる」と訳してあるサビアン本やサイトがあるけれど、それは直訳しすぎです。リンク先はメリアム・ウェブスターWeb英英辞典による great with child の語義。old fashioned(古めかしい)で literary(文語的な)言い回しですよと但し書きつき。

great with child は確かに「子によって(子のせいで)スゴイことになっている」なんだけど、「(母が)子によって偉大にされる」なんて神の子が宿っちゃったマリアさんがそれゆえに聖母となられたー!みたいな話ではないです。妊娠してお腹がスゴイことになってるよってこと。


「♏17自家受粉」の番地チェック。蠍座後半(復路)の、5度ずつに分けた第1グループ(はじめ)の、第2度数。どの5度組でも第2度数は第1度数を裏打ちする。磯野家で言えば第2度数はフネ。

「♏16破顔一笑」は波平。「私これ大好き😆!」その気持ちは私のもの。他の人の気持ちは関係ないよ!「♏17自家受粉」はフネ、♏16波平を裏打ちする。我が子の父である女、自身の霊で受胎した女。妊娠したのは私、私を妊娠させたのも私。私は子の母で父。他の人は関係ないよ!

「(女性が)自分の霊で受精する(fecundated by her own spirit)」、ここ少しわかりにくいと思われるので補足。英語の spirit(霊・精神)はラテン語 spirare(呼吸する)を語源とし、spiritus→spiritと変化した。ギリシャ語でほぼ同じ意味の言葉は pneuma(風・呼吸・霊)、発音は「プネウマ」、英語読みだと p が落っこちて「ニューマ」。ついでに pneumonia(ニューモニア)は「肺炎」。

「創世記」に「神が土を捏ねて最初の人間を作り、鼻から息を吹き込んで命を与えた」という記述がある。この神が吹き込んだ「息」が「霊」。ギリシャ語訳だとpneuma。ラテン語だとspiritusで英語だと spirit 。神の息(霊)が物質(肉体)に吹き込まれて人間ができる。

spirit(霊)に Holy をつけたら Holy Spirit (聖霊)。マリアがまだ嫁入り前のむすめなのにお腹に赤ちゃんができてしまったのは(誰か人間の男と何か致したのではなく)「『聖霊』によって身ごもったのだ(つまりお腹の子の父親は神様だ)」――というのが福音書にある受胎告知の物語。

話が長くなるのでざっくりと「霊(spirit)って『命の風、息吹を吹き込むもの』なんだなー」と思っておいてください。エア精子って言うか(おい待て当番)。そして霊(命の風)吹き込む方がざっくり言って「お父さん」、吹き込まれてこどもを産む方がざっくり言って「お母さん」

さて、♏17の女は身ごもっている。人間の男の精子によってではなく、神様のエア精子こと聖霊によってでももなく「彼女自身の霊」によって受精した。ある種の花が自分の雄蕊を自分の雌蕊にくっつけて自家受粉するように、彼女は自分の霊(息吹)を自分の胎に吹き込み、ひとりで受精した。

だから彼女は、我が子をお腹の中で育てているお母さんであると同時に、自分のお腹に自分の霊(spirit 命の息 エア精子)を吹き込んで我が子に命を与えたお父さん。身ごもったのは私、身ごもらせたのも私。私の体と私の霊を自分の中でくっつけて、自分ひとりでこどもを作った。

「そんなことできるわけがない、こどもを作るには少なくとも自分以外の誰かと力を合わせて受精に至る必要があるはずでは?」そう、常識的にはそのとおり。♏1から♏15まではずっと「自分以外の誰かと力を合わせる」をテーマにやってきた。♏16、♏17でそれが揺さぶられている。

♏16と♏17、そして♏18の前半までが「蠍座の中のちいさな牡牛座」。力を合わせ感情を共有して強くなる蠍座の世界で、もういちど「私のものは私のもの、みんなのものじゃないよ」を思い出す。♏16では女の子がひとりで顔をほころばせる。♏17では女がひとりで身ごもる。

ひとつ前のサイン、天秤座の数え17度を見てみよう。「♎17港の見張番」は港に出入りする船を見張っている引退した船長。災害で船着場というインフラを破壊され孤立し、復旧するまでの間はどうにか人手をやりくりして安全を確保するしかない。そこで頼りになるのが経験者だ。元船長は昔取った杵柄で港を見守る。

他からの助力が見込めなければ退職者を呼び戻してでも港を守る必要がある♎17のように、「力を合わせる」やり方に自分で一線を引いたなら、何をつくるにも手持ちの力をやりくりする必要がある。そして♏17は自分自身の父性(息吹・霊)を呼び出し、自分の母性(身体性)と娶(めあわ)せてたったひとりで懐胎した。

「♏17自家受粉」の対向シンボルを見てみよう。「♉17智謀vs意志」は剣と松明の戦い。剣と松明の意味は小アルカナの「ソード」「ワンド」と同じ。風の元素・知性(理性)と火の元素・意志(情熱)が戦う。直前の♉16は学問に絶望したファウスト博士なので、形勢は松明が有利か。

剣か? 松明か? 知性か? 気合いか? ふたつの力が対立する♉17に対して対向の♏17はひとりの女性が女性性と男性性、母性と父性をふたつながら宿す。それだけではなく、両者のこどもまで。ひとりの中に、母と、父と、子がいる。1があり、2に裏打ちされ、3が生まれようとしている。

「♏17自家受粉」とトラインになるのは「♋17一粒万倍」。蟹座は水の活動サイン、はじめの水。その数え17度は知識と生命へと成長するひと粒の胚珠。♋16では巻物と目の前の広場を見比べていた。書き記された巻物は知識、現実の広場は生命。それはひとつの種から分かれて増える。

蠍座は水の固定サイン、まんなかの水。その数え17度は我が子の父である女。♋17ではひとつぶの胚珠から知識と生命が分かれ出るな、♏17ではひとりの女の中に母の自分、父の自分とその間にできたこどもがいる。ひとりがふたりに、ふたりはひとつに、そして三人目がやどる。

「♏17自家受粉」とスクエアになるのは「♌17自主的聖歌隊」。獅子座は火の固定サイン、盛夏の火。その数え17度は非正規の聖歌隊。教会から指名された聖歌隊ではなく、ボランティア(志願者)の聖歌隊。お墨付きなんか要らない。歌いたいという自分たちの意志が何より大事。

蠍座は水の固定サイン、仲秋の水。その数え17度は自分の霊で受精し、身ごもった女。♌17は歌うのに教会のお墨付きなんか必要としない聖歌隊。やる気がいちばんのお墨付き。♏17は妊娠するのに男の存在も天から降る聖霊さえも必要としない女。必要なものはすべて彼女の中にある。

「♏17自家受粉」は蠍座後半(復路)第1グループ(はじめ)第2度数(波平)。蠍座前半(往路)で♏17と対になるのは第1グループ第2度数の「♏2後の祭り」、割れたガラス壜とこぼれた香水。覆水盆に反らず。割れて初めて知る器のありがたみ。

♏17はみずからの霊で受胎した女。彼女自身が今や大切な子を守る繊細な器であり、その子に命を吹き込んだ張本人であり、その子自身でもある。ひとたびそれを宿したら、もう元の彼女には戻れない。彼女は一人であり、二人であり、三人。雌蕊と雄蕊と果実を抱いた花。

うまれたときのホロスコープで「♏17自家受粉」はどのハウスにある?2018年11月8日の太陽はそこを照らした。穴埋め #アストロ短歌 で確認しよう

「○○○○で(五音・ハウス) 生の秘密が(蠍座) 明かされる(太陽) 我と我が身に自家受粉する(♏17)」

#サビアンシンボル物語

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