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蟹座22度「蝶々夫人」

2018年7月13日19時40分、トランジット太陽が蟹座数え22度へ入りました。蟹座数え22度のサビアンシンボルをぎゅぎゅっと五文字くらいに圧縮すると「蝶々夫人」

「♋22蝶々夫人」の原文チェック。黒字が1925年ジョーンズ版「A woman awaiting a sailboatヨットを待つ(ある)女」、青字が1975年ルディア版「A young woman awaiting a sailboat. ヨットを待つ(ある)若い女」。 awaiting は「期待をもって待ち望んでいる」です。

「♋22蝶々夫人」の番地チェック。蟹座後半(復路)の、5度ずつに分けた第2グループ(まんなか)の、第2度数。どの5度組でも第2度数は第1度数の出すテーマを裏打ちする。磯野家で言えば第2度数はフネ。

「♋21歌う主演女優」は波平。プリマドンナはオペラ座の花形。彼女はその歌唱力と演技力で見るひとにしばし我を忘れさせ、そのひとが体験したことのないまったく別の人生を我がことのように感じさせることができる。別の人生の疑似体験、オペラやドラマはそのためにあるもの。

蟹座後半(復路)第2グループ(まんなか)、こと♋21から♋25は蟹座が最も円熟するエリア。ここより前の4つのグループでは生存戦略・増殖・養育・支援他が主なテーマだった。♋21から始まった5度組では人の心を揺らし張り詰めさせるもの、情感がテーマとなる。

いまどきのことばをお借りすれば、♋21から♋25までの小テーマは「『エモさ』ってなんだろう?」だ。古いことばで言うなら「『もののあはれ』とは何ぞや」だ。ドデカテモリーで言えばこの5度組は「蟹座の中のちいさな魚座」と「蟹座の中のちいさな牡羊座」でできている。

この5度組の波平「♋21歌う主演女優」は観客に別の人生を疑似体験させる。それが可能なのは舞台で演じられる誰かの経験と観客の経験に何か通じ合うものがあるからだ。中国の皇女、エジプトの奴隷、立場は違っても彼女の愛や憎悪、喜びと悲しみや怒りは観客にもわかるからだ。

蟹座後半第2グループでは「情感(エモさ・もののあはれ)」を扱う。それは一種の「あるある」に支えられている。地域が違えば風習が違い、ことばも装いも違う。でも、そういったガワの奥にある人間の基本的な感情はよく見れば驚くほどに似通っている。

前置きが長くなった。「エモさとは何だ?」を扱う蟹座後半第2グループの筆頭(波平)は「♋21歌う主演女優」、それを裏打ちするフネ(第2度数)が「♋22蝶々夫人」こと「ヨットを待つ女」だ。ルディア版ではヨットを待つ「若い女」と指定が入っている。

「ヨットを待つ女」それ自体はオペラのシンボルではない。ただ、前のシンボルがオペラ歌手であることと、ちょうど代表的なオペラに帆船が来るのを待つ女が主人公の作品があることから圧縮版には蝶々さんにご登場いただいた。

エモさって何だろう。エモさとは、たとえば帆船が来るのを待ち望んでいる女。帆船は岸から岸へ、大海原を風に乗って進む。女は陸地にいて、船を待ちわびている。自分を迎えに来る船なのか、誰か恋しい人が乗っている船なのか、遠くからの便りを運んでくる船なのかはわからない。

エモさとは何だろう? ひとつ挙げるなら、何かの訪れを待ちのぞむ気持ち。我が身はここにありながら、遠くから、今ここではないところから、何かがやってくるのを待ちわびる気持ち。岸から沖へ目を凝らす気持ち。舳先が波を掻き分けてくる音に耳を澄ます気持ち。

「♋22蝶々夫人」はヨットを待つ女がシンボルだけど「待つ女はエモい」という話ではない。「たとえば」「『船を待つ女』という状況や、その女の待ちのぞむ気持ちはエモい」という話。来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ。「待つ」をテーマにした歌は多い。

「何かを待つとき、心に去来する様々な気持ち」はエモい。「待つ」ことは「こがれる(あこがれる)」こと。日本語の「あこがれる」はもともと「魂が身から離れてさまよい出ること」。物思へば沢の蛍もわが身より。船を待つ女のからだは岸にあっても魂は遠い海へ向かっている。

オペラ『蝶々夫人』より「ある晴れた日に」日本語字幕付。背景をかいつまむと、蝶々さんは士族の娘で父の自害により芸者に。15歳でアメリカ海軍士官の現地妻になったが3年放置される。捨てられたのでは?と女中は言うが蝶々さんはまだ信じている。

https://youtu.be/5G1cXmNxgcU

陸地に縛られ、海に隔てられ、それでも思いはこの身をあこがれ出て彼方へと向かう。いまは待つことしかできないけれど、水平線を見つめるのをやめられない。そんな心をうたう歌が人々の心を揺さぶるのは多くのひとがいちどは何かにあこがれ、訪れを待ちわびた経験があるからだ。

「エモい」「もののあはれ」って何だろう? たとえば船を待ちわびる女心。海の彼方へあこがれる若者の心。あこがれや思慕というひとつのテーマから今までどれだけの歌が作られてきただろう。「エモい」を支えるものは人々の「あるある・それな」。この5度組はそれを扱う。

「♋22蝶々夫人」とスクエアになるのは「♈22竜宮城」。♈21でリングへ上がった拳闘士は、試合に勝てば夜の街に繰り出して祝勝会だ。すべての実現された欲望に満ちた庭、勝者の楽園、酒池肉林。男のロマン竜宮城。乙姫様の御馳走に鯛やヒラメの舞い踊り。

「♈22竜宮城」が勝利を夢みる男のロマンだとすれば「♋22蝶々夫人」は愛を夢みる女のロマンかもしれない……えー……非常に古い価値観であることをお詫び申し上げます。しかし古いということはまた、息が長いということでもございましてな。演歌や古典芸能は「待つ女」だらけです。

オペラだけじゃない。演歌・懐メロ・歌謡曲。コテコテの、ベタベタの、どこかで聴いたような恋の歌。みんなの「あるある・それな」に支えられたポピュラーソングは蟹座の世界です。「ユーミンがもう歌ってる 特別な恋をしてると思ってたけど(柳澤真実)」

「♋22蝶々夫人」は蟹座後半(復路)第2グループ(まんなか)の第2度数(フネ)。蟹座後半第1グループの第2度数と比べてみよう。「♋17一粒万倍」。オリジナルはひとつでもバリエーションは無限。♋22の船を待つ女、待ちわびる心もそこから千の物語、万の歌が生まれる情感の種。

蟹座前半で「♋22蝶々夫人」と対になるのは前半第2グループの第2度数「♋7月夜の妖精」。誰も見ていない夜、卵から雛が、種から芽が生まれ出るのをひっそりと後押しする、隠れた自然のちから。それは「待ち時間」に働くちから。♋22の女もまた「待ち時間」の中にいる。

いつか私の船が来る。首を長くして待っている。ただそこにいて待つことはいかにも受け身に見えるかもしれない。しかし体はそこにいても心は体からあこがれ出て彼方へ向かっている。その待ちわびあこがれる心が未来を引き寄せる。必ずしも望んだとおりのものとは限らなくても。

うまれたときのホロスコープで「♋22蝶々夫人」はどのハウスにある? 2018年7月13日の太陽はそこを照らす。穴埋め #アストロ短歌 で確認しよう

「○○○○で(五音・ハウス) 愛しむように(蟹座) 目を向ける(太陽) 待ちわびている蝶々夫人(♋22)」

#サビアンシンボル物語

私待ーつーわ いつまでも待ーつーわ

【♋22蝶々夫人 をより深く理解するための比較対象シンボルリスト】
♌22鳩の宅急便(となりのサイン)
♍22葵の御紋(60度)
♎22鳥にも水を(90度)
♏22躊躇なく狩る(120度)
♑22潔い引き際(180度)
♓22モーセの帰還(120度)
♈22竜宮城(90度)
♉22方舟の鳩(60度)

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