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一年2セットのブラで生きてきた

本日の記事タイトルは、あきやあさみ著『一年3セットの服で生きる』のオマージュです。


一年2セットのブラで生きてきた。タイトルは一字一句間違いなく、事実です。オマージュ元へ合わせるために「2セット」と表記していますが、つまりは「2枚のブラ」ってことです。なお、ぱんつは流石に2枚では足りないので7枚持っております。

当番は一年2セット(2枚)のブラジャーを来る日も来る日も着けては洗い、洗っては干し、乾いたら身につけて暮らしてまいりました。現在もその生活は続いております。いきなり何の告白だ、とお思いになるかもしれません。まあ皆様どうか聞いてくださいませ、このブラジャー2枚の生活が、今まさに当番をして自問自答ガールズへの道を歩ましめんとしているのでございます、ついに。

自問自答ファッション通信、及び自問自答ファッションを実践するガールズの皆様がそれぞれ綴るnote、当番愛読しております。書籍『一年3セットの服で生きる』『一セットの服で自分を好きになる』も購入しました。どちらも大変にカロリーの高い本なので、少しずつ少しずつ拝読しています。しかし。

読むは易し、実践は難し。

試着百回、当番にできるかどうか自信がないし。「買わなくていいからハイブランドのいちばん高いお品から試着してみる」にもサイズの壁が立ち塞がるし(当番はMAX痩せていた10代の頃でも15号を着ていました。現在はトップが21号、ボトムが19号。いちばん太っていた頃は23号です。ついでに言えば靴のサイズが25.5です)。人生の山場を乗り越えたとき、自問自答ガールズが拳を握りしめて自分のために「演歌バッグ」を買うような局面ではつい「演歌書籍」だとか「演歌毛糸」とかを大人買いする習性があるし。

そんなこんなの事情がありまして、「制服化」や「自問自答ファッション」という概念を知って以来丸々2年、他のガールズが自問自答の様子を次々と発信しているのを横目で眺めながら、当番はひとり敷居の前で足踏みをしていたのでございます。

でもね。ちょっと状況が変わりました。当番、持病の治療で使い始めた薬がよく効いて、めきめき痩せてまいりました。投薬と同時進行でチョコザップ通いも始め、筋肉と体力も増加中。服のサイズもガタガタと下がり中。これは、ひょっとしたら行けるかもしれない。あともうちょっと体を絞ったら、あともうちょっと体力が戻ってきたら、週末のたびに都内へ出かけて一日中試着ツアーができるかもしれない。

そして、ずっと迷走中だった「どんな自分になりたいのか」「服に何を求めているのか」も、昨日(※2024年8月30日)ふと答えが出たのです。その答えを引き出してくれたのが、2枚しかないのを毎日洗って干しては代わる代わる着けている、当番のブラジャー。

あのですね、当番、思春期からずっと高身長高体重、筋金入りの肥満体なのです。いちばん痩せてた頃だってアンダーバストが85より細かったことがないし、トップバストは100以上あるのが当たり前の体だったんです。もちろんそれより太っている時期はもっと大きいわけです。最大でアンダー100のトップ127まで行ったことがあります。

もちろんブラジャー探しは毎回大変なことになります。新宿伊勢丹のマ・ランジェリーで親切なフィッターさん(マ・ランジェリーのフィッターさんは皆さん本当に素敵な方ばかり)のお手を散々借りてブランド横断、フロア中のブラをかき集めてもらってやっと1枚とか2枚とか買うんです。当番サイズのブラ、デザインが限られ、製造数が少なく、ゆえにお高い。いちばん安くて7000円代、ちょっと素敵なデザインだと15000円とか。思い余ってオーダーを試したこともあります。そうなると18000円から30000円。とてもじゃないけど「普段使いのブラと勝負下着としてのブラを使い分ける」なんてことはできません。全部勝負下着です。全部と言ったって2枚か、お財布に余裕がある場合でも3枚とかですけれども。その2枚あるいは3枚が全部勝負下着クオリティ、お値段も素材もデザインも。みんな一軍、二軍以下はない(買えないし、売ってない)。

更に靴もですねえ、サイズ上がれば上がっただけ品数は少ないし、お値段張るんですよねえ。同じデザインでも23.5cmだとかわいいものが25.5cmだとなぜか間延びしてかわいくなくなるんですよねえ。ブラにも同じ傾向があって、同じレース同じデザインでDカップはかわいいがFカップはかわいくない現象というのがある。たぶんどんなデザインの靴やブラにも「中心的なサイズ」というものがひとつあり、最初にそのサイズでいちばんかわいく見えるバランスでデザインしてから「より小さい」「より大きい」に合わせてグレーディングしていくと当番思うんですよね。そして「元よりも小さくする」は同じかわいさ、または「小さいことでよりかわいい」が実現できるのだけど「元よりも大きくする」で同じかわいさ、あるいは「大きいことでよりかわいい」を実現するのは、どうやら難しいことらしいんです、知らんけど。これは単に当番の経験則なんですけど。

体が大きいとですねえ、ブラと靴で服飾予算の大半が吹っ飛んでしまって、他は量産カジュアル服で揃える以外道はなかったりもします。バッグにさえも予算を割けない。「その日身に着けているものの中でブラがいちばん高価」ってことが当番にはよくあります。「ブラより高い服を着ている日」って、特別お洒落をして出かける日くらいじゃないのかな当番は。

本音を言えば、裸足やノーブラで出歩くわけにもいかないのにただただサイズが大きいだけでお値段にゼロがひとつ増え、製造数やデザインも限られてしまうのは大変悲しいです。それでも当番は、その限られた選択肢の中から体に合ってきれいなブラジャーを選んで身に着けるのは大好きなんですよね。たとえそれを買ってしまうと、後はうんとお安い量産カジュアル服や男物の服しか買えないとしても。だってその服の下にはいつだってレースをふんだんに使った、体をきれいに包むカッティングと丁寧な縫製の美しいブラを着けていると思うと大変満足できるから。ドレスを着るような生活はしていなくても、ドレスのような下着は着けられるから。しかも下着だから誰にもそれを知られずに好きなものを好きなだけ着けていられるから。

前にね、とてもきれいなターコイズブルーの総レースのブラを持っていたんです。まるでフロリナ王女(バレエ『眠れる森の美女』に登場する)のチュチュみたいな美しさだったんです。お高かったけれど使っている間ずっと幸せで、使い込みすぎてワイヤーが折れて泣く泣くお払い箱にしたとき、レースのモチーフをひとつ切り取ってしばらく箱に入れて持っていたくらい好きだったんです。当時の手持ちはそのターコイズブルー含め3枚でしたかね、代わる代わる洗って3枚ローテーションで大事に使っていたんです。

その、いちばん好きだったターコイズブルーのレースのブラのことを思い出したとき、「あ、当番もしかしたら試着百回できるのかもしれない」「毎日着て毎日洗って、3セットの服を手入れしながら一年中大切に着ることだってできるのかもしれない」と思ったのです。

だってブラだったら最高の1枚へたどり着くまでフィッターさんとああでもないこうでもないって試せるし、これまでだって毎回そうやってブラを買ってきたのだから。そして毎日毎日大事に洗ってきたのだから。それをブラ以外に対しても実行すればよかったんだ。大丈夫、それなら当番、やれる。だって、やったことあるんだから。今まで「そんなことやってみたことがない、やれる自信がない」と感じていました。やったことあるじゃない当番さん!!!

店員さんに試着のお手伝いをしてもらうことも商品提案してもらうことも怖がらなくてよかったんだと思い出しました。だって下着と靴のフィッターさんには毎回ものすごくよくしてもらっているのだから。高級ブランドショップの店員さんにも、同じようにこちらから心を開き、信頼を示して手を借りれば、悪いことにはならないはずです。いいとこの店員さんはフィッティングもお手のものであるはず!

そして、ブラの上に着る服についても、求めるものがわかってきました。当番にどんなデザインが似合うかは試着してみないとわからないけれど、当番が服に求めるものはわかった。当番は外側に着る服もブラと同じくらいパターンと素材と縫製のいい製品がほしい。「伸縮素材で様々な体型によく伸びてフィットします」という製品ではなくて、カッティングと縫製によって当番の体にフィットさせた、シルエットのいい服がほしい。質のいい芯地が入っていて、縫い代の始末まで気を抜かない服がいい。当番自身が裁縫をやる民なので、雑な縫製の服やペラペラの芯なし服裏なし服はイヤ。裏地と表地のテンションがバラついている服はイヤ。異素材を取り合わせたときに攣れているようではイヤ。

余談。下着にレースは必ずしも必須ではないと思う当番ですが、結果的にレースをあしらったブラばかり買ってしまうのは「レースという扱いが難しい生地を使ってブラジャーのような複雑なパターンをきれいに縫い合わせることができる→縫製技術が高い証拠」だからです。そのプロの縫製技術に「まいりました!!」とひれ伏して買いたいんですよ当番は。服にしても下着にしても、ぬいぐるみにしても。なぜなら当番は、ささやかながら自分も縫う者だから。「このパターン、この仕立て、まいりました! 買わせてください!」と思いながら財布を開きたい。当番はそういう服を着たい。

外に着ているものが作業着だろうが量販店の安いTシャツと綿パンだろうが、いちばん肌身に近いところに着けているのは選びに選んで「このパターン、この仕立て、素晴らしいです! まいりました! これ買います!」と叫んで買った精鋭のブラである。いつだってそのことが当番の背筋を伸ばしてくれた。でも、もしもブラより外へ着けるものまで、身に着けるすべての服がブラと同じくらい「このパターン、この仕立て、まいりました! 買います!」と思える服だったらどれだけ当番は背筋が伸びることだろう。伸びすぎて身長2mくらいになるんじゃなかろうか。いいな背筋が伸びすぎて身長2mになる服、ほしい。バッグと靴とアクセサリーもそのクオリティで揃えて、背筋伸びすぎて身長3mくらいになりたい。股下だけで1.5mだぜ。そういう者に私はなりたい。

【おまけ。『ランジェリー・ブルース』の話】
ツルリンゴスターのコミック『ランジェリー・ブルース』、すごくいいです。新宿伊勢丹マ・ランジェリーの初代フィッターを務めた伝説の人をモデルにしたキャラクターが出てきます。当番はこの、伝説のフィッターさんにフィッティングしてもらった経験はないのだけど、おそらくこのフィッターさんが教育した直弟子か孫弟子に当たるであろうフィッターさんたちにお世話になっています。新宿伊勢丹マ・ランジェリーに常駐するフィッターさんたちの間には今でもあの方の精神が生きていると当番は感じています。

『ランジェリー・ブルース』WEB配信各社でも読めるけれど、紙の単行本がおすすめ。ページの紙質がいい。何という名の紙か浅学にして存じあげないけれど、薄くてしなやかな、ちょっと他のコミックスでは触った記憶のないような、いい本文用紙に印刷されています。めくる感触がいい。下着は触れるものだから、下着漫画も触れる感覚を楽しみながら読んでほしい。



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