夜の授乳で虫歯になるの?(育児編)

授乳中のお母さんは、赤ちゃんに歯が生えると虫歯を心配しますよね。特に夜の授乳です。「歯磨きを終えた後なのに夜中の授乳で甘い母乳を飲ませてもいいのか?」という質問を多くいただきます。今回は虫歯の原因と母乳との関係についてお話していきます。

1.虫歯とは?

虫歯は、細菌の作り出す酸によって歯が溶かされていく病気のことを言います。しかし、細菌がいるだけでは虫歯にはなりません。細菌、糖質、その人の抵抗性、時間のすべてが一定の条件を満たすことで発生します。


●細菌……ミュータンス菌類のことです。生まれた時に赤ちゃんの口には存在しませんが、お母さんやお父さんから感染します。
●糖質……歯を溶かす酸の原料です。その中でも注意すべきは砂糖(ショ糖)で、糖質の中でも唯一歯垢の元になる物質(グルカン)を作り出します。
●抵抗性……唾液は虫歯になりにくくします。唾液は口腔内のpHを下げて(中和作用)虫歯の原因となる細菌が活動しにくい環境を作ります。
●時間……細菌、糖質、抵抗性が重なる状況が歯の表面で起こり、その時間が長く、回数が多くなるほど虫歯が発生しやすくなります。

2.虫歯の症状

乳歯は、永久歯に比べ虫歯ができると進行がとても速いです。痛みを感じないことも多く、子供が自覚症状を感じた時にはかなり進行していることもあります。
初期のサインは、歯の色が他の歯と比べて少し変化します(白い筋ができる、色が変わる)。奥歯は歯と歯の間の変色が見られます(少しグレーがかる、白濁する)。
虫歯になりやすい場所は、歯と歯茎の境目、歯と歯の間で、特に上の前歯下の奥歯です。

3.虫歯ができる仕組み

①赤ちゃんの口に歯が生える
      ↓
②お父さんやお母さんから赤ちゃんに細菌が感染する
      ↓
砂糖が口の中に入る
      ↓ 
④細菌が砂糖を分解し、グルカン(ネバネバして水に溶けにくい物質)をつくり歯の表面に付着する
      ↓
⑤細菌が歯の表面に付着しやすくなり歯垢(プラーク)が作られる
      ↓
糖質が口の中に入る
      ↓
⑦歯垢の中にいる細菌が糖質で酸を作り出し歯を溶かす
      ↓
⑧糖質が口の中に入る頻度が増えると歯が持続的に溶ける
      ↓
⑨虫歯になる

4.母乳に含まれる糖質は何?

母乳にはいろんな栄養素が含まれますが、その中でも糖質は主に乳糖です。虫歯の主な原因となるショ糖とは違い、乳糖は糖質の中でも代謝されにくく歯垢の元にはなりません

5.母乳と虫歯は関係ありません!

今までの内容から、母乳に含まれる乳糖は虫歯の主な原因ではないということが分かったと思います。
ただし、夜間は唾液の分泌が低下するので唾液による中和作用が低下し、母乳中の糖質(乳糖)が長時間歯のまわりに停滞します。細菌のエサである糖質が長時間いるため虫歯になるのでは?と思いますが、この一つの条件だけでは虫歯にはなりません。虫歯は、細菌が歯の表面に付着し、断続的に酸を作り続けることが必要であるからです。歯垢がなければ細菌は歯に留まることができません。歯垢の原因はショ糖(砂糖)であり、乳糖(母乳)ではないのです。

6.虫歯にならないためには?

虫歯にならない環境を作ることが大切です。ポイントは5つです!

1.お父さん、お母さんの虫歯を治療する
2.砂糖を含む食品をできるだけ与えない
3.正しい歯磨きをする
4.定期的に歯医者さんに行く
5.フッ素を塗布する

6-1)お父さん、お母さんの虫歯を治療する

生まれた時、赤ちゃんの口の中には虫歯の原因となる細菌は存在しません。お父さん、お母さんから感染するのです。
赤ちゃんを虫歯から守るためには、まずお父さん、お母さんの口の中を清潔にしましょう。既に虫歯がある方は歯科に通いきちんと治療しましょう。治療を終えても口の中が不潔になればまた虫歯ができてしまいます。正しい歯磨きの仕方を歯科で教わりましょう。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシフロスも使いましょう。

6-2)砂糖を含む食品をできるだけ与えない

離乳食が開始したら、母乳やミルク以外の水分補給の手段としてお茶を飲ませましょう。それ以外の水分(ジュースなど甘い飲み物)は与えないでください。また、おやつも砂糖を含むものはできるだけ与えないようにしましょう。砂糖は中毒性があるため、食育という観点からも甘味嗜好にならないようにすることが大切です。

6-3)正しい歯磨きをする

前歯が生えてきたらお口のお手入れをしましょう。ガーゼかベビー用歯ブラシを使い、歯の表面を拭きましょう。歯がしっかり生えてきたら、歯と歯茎の境目、歯と歯の間を意識して磨きましょう。
0歳のうちは1日1回でいいです。1歳以降は毎食後にするのが理想的です。

6-4)定期的に歯医者さんに行く

乳歯の虫歯は、自覚症状がないまま急速に進行することが多いです。かかりつけの歯医者さんを見つけて定期的に健診にいきましょう。
きちんと歯磨きをしていたつもりでも歯垢がたまっている部分に気付くことができ、その部分を上手に歯磨きするコツなど教えてもらえますよ。

6-5)フッ素を塗布する

最近では、虫歯予防で歯にフッ素を塗布することが当たり前のようになってきました。1歳半健診では歯科健診とフッ素塗布がセットになっている自治体も多いですよね。
予防できることは、ぜひ取り入れて虫歯知らずの歯を維持していきましょう。

7.まとめ

授乳中のお母さんから「歯が生えたので、虫歯が心配だから授乳回数を減らした方がいいですよね?」という質問をよくいただきます。「母乳は虫歯の原因にはならないので、どうぞ赤ちゃんの満足のいくまで授乳をしてあげてください」と答えると皆さん驚いたような表情をされるとともに安心したお顔になります。

虫歯の原因は、細菌、砂糖、抵抗性(唾液)、時間の4つの条件がすべて満たされて初めて起こります!

母乳がついたままの歯で寝ていても虫歯にはならないのです。

虫歯にならないためにも、今日から早速予防していきましょう。
1.お父さん、お母さんの虫歯を治療する
2.砂糖を含む食品をできるだけ与えない
3.正しい歯磨きをする
4.定期的に歯医者さんに行く
5.フッ素を塗布する

とは言っても、子どもの歯磨きってスムーズにはいかないですよね。子育ての中で苦労していることの上位3位には入るのではないでしょうか。我が家も歯磨きにはとっても悩まされました。
子どもの歯磨きのコツについて、またお話していきますね。

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