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第9話ー初めて文章化するNYCで暮らして学校に通った6年間ー10代の少女が感じたこと 「言いたいことが言えない」

何が辛かったのかを端的に表すとすれば、相手の言っていることをきちんと理解しているかどうか分からない、自分が口に出したいことは100分の1も出せない、だった。「傷ついた。悲しい」さえも言えなかった。英語ができないと言うより、内弁慶の性格のせい。それに言語の壁が追い打ちをかけた。腹が立っても、悲しくても、感情を心の奥に押し込んで、平気な振りをしていた。

ある雪の積もった日の夕方、近所の小学生の男の子が私に雪玉を思いっきり投げつけた。雪玉は私の一歩手前に落ちた。私がアジア系だから?平静を装って、そのまま歩き続けた。2つ目は飛んでこなかった。

学校では、あまり仲良くないヒスパニック系の生徒に、これを口に出して読んでご覧と言われた。1Q、2Q、3Q、彼女がノートに書き込んだ通りに読み上げた。そして4Qと言ったときに、その子が「あ、言っちゃった」と怖い顔をして言った。周りにいた生徒たちも、あらら、とんでもないことを」という顔をした

英語ができない私はからかわれていた。なぜ?4Qにどんな意味があるのかと尋ねても「Bad words」としか答えない。実は「F**K YOU」と言わせたかったのかと後でわかった。からかった彼女には視線さえ合わさなかった。今では、歌詞や映画のセリフ、深夜のトーク番組でも普通に使われる「セックスする」という意味の言葉だが、当時はまだまだタブーだった。
「まだアメリカに来て間もないの。英語ができないのは当たり前でしょう。ひどいな」と言えなかった自分が情けなかった。

前回一時帰国して、住んでいるバリ島に戻ったとき、税関職員から注意されたアジア系の人がいた。カバンからワインと思われるボトルを取り出した職員は「これは何だ?」と険しい表情で英語で聞いた。肌の浅黒いそのアジア系の若い男性は英語ができないらしくドギマギしていると、職員は畳みかけるように英語を連発。「英語さえもできないお前はバカか」と言わんばかりに。

シンガポールの空港では、英語がもう一つ理解できない韓国人女性を空港スタッフが「だからさっき言ったでしょう」と高飛車に、まるで幼い子供を𠮟りつけるように超上から目線で。こういう時はどうするのか。慌てないで、日本語で説明しよう。相手の目をしっかり見ながら自信たっぷりに「日本語を理解できないあんたがおかしい」と。違法行為がない場合に限りますが。


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