2023.01.06(金) いってきますを言わせて

今日は仕事の都合上早めに家を出なくてはならなかった。妻と息子を起こさぬようセットしていたスマートフォンのバイブレーションで起きた後、二人の寝息を背に寝室を後にする。まだ数時間は日が昇らないであろう黒々とした空をぼんやり眺めながら身だしなみを整えそっと玄関まで移動する。
こっそり靴を履いていると寝室のドアが開く音がした。
「パパ、どこ行くの?」
息子だった。眠い目を擦りながら答えがわかっているであろう問いかけをしてくる。
「パパねぇ、今からお仕事行かなきゃならないんだ」
「なんで?お外真っ暗だよ」
「うーん、お仕事いっぱいあるから早く行かないといけないんだ」
「でもぼくパパと一緒にいたいよ……。パパは一緒にいたくないの?」
なんて残酷な質問をしてくるんだ。このまま会社に行かずに寝間着に戻って息子に腕枕しながら眠りにつけたらどれだけ幸せだろう。だが、それをした場合失うものがほんの少々大きすぎた。
「パパもね、一緒にいたいよ」
「じゃあなんで?」
ここで心に響く言葉を一つまみ。感動した我が子に快く送り出してもらおう
「パパはね、〇〇〇(息子の名前)とずっとずーっと一緒にいる為にお仕事に行くんだ」
「ふーん、そっか」
そう言うが早いかスタコラ寝室に戻っていった。

……どうやら4歳児にも『コイツなんか良い事言おうとしててうっとおしいな』と感じとる機能は備わっているらしい。
「いってきます……」
次からは面と向かって言いたいな……。そんな事を考えながら誰もいなくなった空間に溜息と一緒に出掛けの言葉を吐き出し仕事に向かった。

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