宝物の記憶
2021年の春がとてつもないスピードで過ぎ去ってもう4月になった
そんなに忙しく過ぎたのは、我が家の猫が深刻な病を患っていることがわかってから
ぼんちゃん、私たちはそう呼んでいるのだけれど、は腺癌を患っている。
1月の末に足指の出血から始まったそれは、病理検査を待つ2週間ほどの間に、とてつもなく早いスピードで悪化していった
運悪く、日本中で大雪が降って、何もかもが遅れていた
私たちはじりじりとその結果を待った
長い時間だった
そうだろうという予感と
そうでありませんようにという祈りとの間で
私たちは揺れていたけれど
でも、あの子はそれを”知って”た
猫はちゃんと知ってる
不安で地に足のついてなかった私たちと対象的に
あの子はまるで諦観したような眼差しで
そして自分の自由を満喫することに
それは長い年月一緒に暮らしてきたからよくわかる
あのこは私の一部だった
あの子が苦しむのをみるのは辛い
現実の前に言葉を見つけられず立ち尽くす
今という時を
本当に生きるのは難しい