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ニートAKIRAの鎮魂歌

かつての偉大な登山家はなぜ山を登るか?という問いに対しこう答えた。


「そこに山があるから」と、、、


同じ質問をされた時、僕はなんと答えるのだろう?

僕はその答えを知るため今日から登山家になる。

ちょうど無職だったし、これで親に就職したと言える。

人生初めての親孝行、親の喜ぶ顔が目に浮かぶ、親の不安を取り除くのも子供の役目だ。



靴を履いて、リュックを背負う。

準備完了。

このドアを開けたら僕の登山人生が始まる。

僕は不安と期待と少しの面倒くささを抱き玄関のドアを開けた。

いつも見ていた外の世界がなんだかキラキラしていて、僕の登山人生の門出を祝ってくれている。

この瞬間、僕は登山家になった。


さて最初に登る山はどれにしよう。

家から遠くに見えているあの山にしようか。

遠くから見てもわかる。 

あれはでかいぞ。

強敵との一戦を前に武者震いが止まらない。


「おもしれぇじゃねぇか!!!」


玄関先で大声を上げた僕の姿はかつての武将、織田信長が戦に向かう時の姿と重なるものがあったという、、、


登山伝説の1ページ目が刻まれそうになったその時、僕はあることに気づいた。


カップラーメンを買ってない。


慌てて、近くのスーパーへと向かった。

スーパーまでは徒歩8分、いきなりの試練だ。

やはり登山は一筋縄では行かない。

だがこれもまた一興。

スーパーへ着き、カップ麺売り場へ行くとそこには色とりどりのカップ麺が行儀良く並んでいる。


どのカップ麺を買えばいいんだ!?


ここは普通に日清のカップヌードルを買うか?いやそれともシーフードヌードル?カレーヌードルもいいな。

これが登山家の苦悩か、、、

悩んだ末、僕はデカ盛り!!札幌味噌ラーメンを買った。

準備は万端だ。


ぐぅ〜


いくら僕でも腹の虫には逆らえない。

一旦家に帰り、お湯を沸かした。

山に登りたいはずなのに、本能で先程買ったカップラーメンを食べようとしている。

人間の欲求がどれほど強大なものなのかを思い知らさせた。

山の頂を志していなければこんなことにも気づかなかった。

山が教えてくれたのだ。


ありがとな、山。


沸かしたお湯を先ほど買ったカップ麺に注ぎ3分待つ。

この3分の間に漫画を読む。

登山では無駄な時間は許されない。

たった3分でも有効活用するのだ。

ご飯を食べて3時間だけYouTubeを見た後、再び山へと向かう。

しかしすでに日は落ちかけている。

15時に起床したのが仇となったのだ。

登頂は断念せざるを得ない。

登山家にとって1番大事なものは脚力でも、知識でもない。


冷静な判断なのだ。


そして山頂を1度でも志した時点それはもう登頂だ。

山頂の景色は綺麗だと言うが、ここから見える景色も十分綺麗だ。

今までと変わらない風景であるが、僕の目の色が変わったのだろう。

遠くにそびえる山を見つめる僕の顔はいつもより晴れやかであった。



皆さんはなぜ山を登るのか?と聞かれたらなんと答えますか?


僕は遠くの方を指差しこう答える。


「あっちの方に山があるから」と、、、

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