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落語界の一大イベント!


少し前の話になりますが先日、
こちらに行ってきました。

場所は上野にある鈴本演芸場。
いわゆる落語の寄席です。

落語界でのお祭りと言えば
噺家が真打になる際行われる
披露目(ひろめ)興行。

都内には定席といわれる、毎日興行が行われている寄席が5軒ありますが
その寄席を10日毎に出演して真打になったことを
50日間お披露目します。

真打になるのを心待ちにしていたご贔屓筋がのぼり(写真1)
といわれる旗や高座の後ろ幕を贈ったりしてお祝いします。
そしてもちろん高座を聞きに足繁く通ったりします。

通常、披露目は噺家さんだけが行います。

ごく稀に「色もの」と呼ばれる噺家以外の芸人さんが襲名する際披露目を行うことがあります。

これはとてもとても珍しい名誉なことなのではないかと思っています。

3月21日から始まったのはものまねの
五代目江戸家猫八襲名披露興行。

春分の日と天赦日、一粒万倍日、寅の日が重なったこの上なく良き日に始まったこの披露目。

初日から長蛇の列で満員御礼。
前売りで完売とのことでした。

披露目では一門の師匠や所属している協会
(今回は落語協会)の会長や理事をはじめ
そうそうたるメンバーが主役を盛り立てます。

私はマネージャーとして仕事をしていた際、
この披露目が楽しみで、そして大好きな時間でした。

披露目の醍醐味は中入り後に行われる口上です。
紋付袴に着替えたお歴々が主役を真ん中に
ずらりと並ぶ姿は圧巻。

一人ひとりがこの日の主役の人柄を語り、
そしてどうかよろしくお願いします、と
頭を下げてお客様にお願いするのです。
自分のために先輩や師匠が頭を下げる。
自分のことだけを取り扱ってもらえる日。
そこには喜びはもちろん、相当なプレッシャーがあることでしょう。


噺家の場合、見習いから始まり、入門を許されて前座となり寄席での修行が始まります。
そして、羽織を着ることが許され、
自分で仕事を請け負うことが出来る
実質的な独り立ちともいわれる二つ目となる。
そこから真打ちになると寄席でトリを取ることが
出来たり弟子を取ったりすることが出来るようになります。

真打は決してゴールではありません。
真打になったからと言って自動的にトリや
弟子が舞い込んで来るわけではありません。

そこからが真の腕の見せ所、
やっと噺家としてのスタート地点に立てた。
そう口上で言われることもしばしば。

本人の力だけではどうにもなりません。
どうか皆様(お客様)のお力で
引き揚げてやってください。

そんな風に師匠が弟子の為に頭を下げる姿は
いつ見てもこみ上げてくるものがあります。

今回の猫八という名前は、祖父から父へ、
そして五代目へと引き継がれています。
ということはこの披露目にはご自分の師匠は
出てもらえていません。

しかしご本人のお人柄でしょうか。
そこに出ていた師匠方は心の底から
今回の襲名を喜び人柄を称え、
そしてどうかどうかお引き立てください、と
皆さん深々と頭を下げられる姿を見て、
五代目は本当に皆さんから愛されていらっしゃるのだなぁ、と感じました。

しかもこの日は先代であり師匠、父上でもある4代目の命日でもあったそう。
命日という偲ぶ日をこれからは良き旅立ち、
始まりの日になるように、という
思いがこの日を初日にしたのではないか、
そんな風に話されていたのが印象的でした。


上野、新宿、浅草、池袋の順に披露目を終え、
今日から最後の国立演芸場かと思いきや
10日ほど間を空けて5月の11日より
最後の10日間が始まります。
国立演芸場は今年の10月から建て替えのため
休場も決まっていますので
風情のある建物も見納めかもしれません。

チケットが取れるかわかりませんが、
ご興味持たれた方はぜひ。

それ以外でも大体、春と秋に真打披露興行は
行われますので寄席のお祭りをぜひ体験しに、
そしてお気に入りの芸人さんを見つけて
ご贔屓になっていただけたら、
と全然関係者でもありませんが落語、寄席好きとしては嬉しく思います。

決して寄席は敷居が高くもなく
知識がなくても楽しめますので
ふらっと足を運んでみてください。

裏話:落語界から離れて20年ほど経つので変化していると思いますが
披露目では楽屋でお弁当が配られます。
通常の寄席ではそんなことはありません。
そのお弁当は誰が用意するのかというと、
披露目の主役。
50日間トリを取るとお弁当や前座さんへのお礼や
中日や最終日に打ち上げを行なったりすることも。
楽屋に出入りする人数も多いので
お弁当の数もなかなかの数。
しかもいつも本当に美味しいお弁当ばかり。
真打昇進や襲名でご祝儀は集まるものの、
かなりの出費。
寄席では入場者数が出演料に反映するシステムですのでお客様が入れば入るほど芸人さんに還元されますのでその辺もぜひよろしくお願いします。




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