彦星誘拐【毎週ショートショートnote】

待ち合わせのカフェで、織姫のスマホが鳴った。
彦星からだ。
届いた写真は、新聞の文字を切り貼りした脅迫状だった。

彦星を誘拐した　身代金１億

「何これ、マジ？」
冗談かも。織姫は彦星に電話した。
すぐにつながり「助けて」と弱々しい彦星の声がした。
電話は知らない男の声に代わり「言うとおりにしないとこいつの命はないぞ」と言って切れた。その後は圏外だ。

「ってか、どうしてあたしに」
織姫は、彦星と共通の友人デネブに相談した。
「彦星は親兄弟いないからね」
「でも1億は無理」
「よし、クラウドファンディングだ」

デネブは「あの国民的カップルに危機！天涯孤独の彦星を救おう」とクラウドファンディングを立ち上げ、あっという間に1億円を集めた。
間抜けな犯人は振込先として自分の口座を伝えたので、警察に突き止められ逮捕された。

それから織姫と彦星は、毎年日本中の人々が七夕の短冊に書いた願いを集め、その中のいくつかを叶えている。
戻ってきた1億円を使って。

（409字）

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【今日の写真】作ってみました(^^ゞ