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「私、天才かも (爆) ?」って思わせてくれた80代男性 【痴呆、介護】

「ライオンのツメみたくガッチリ押さえる器具」が欲しいって言われたから
紙ばさみを渡したら、とっても喜ばれたお話です。


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ホームヘルパーサービス利用者・Kenさん。パーキンソン病の進行に伴う軽い痴呆。昼と夜、調子のいい時と悪い時で、痴呆の出方には大きくムラがある。この日夕方のシフトは、舌が回りにくく、言葉が出てきにくい状態で

いっしょけんめいに
「lion's claw なんたら」という器具の説明をしてくれる。ライオンの手みたいな形をした、はさむやつ。

う~ん。バタコの頭に浮かんだ絵柄。

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「猫足のバスタブ」に付いてくる、ライオン (ネコ科動物) のあんよの形をした家具?

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こんな感じか?


だけど、なんか違う。どうしてもそれが手元に置きたいんだと。
前後の文脈を考えたら、

あ、アレね、ってすぐ分かった。


Kenさんは若い頃にIBS (過敏性腸症候群、前首相・安倍さんのご病気) の治療の一環で人工肛門、そこに装着したビニール袋に排便する「ストーマパウチ」の利用者。半世紀以上にわたって毎日数回、自分で処理してきたので「基本的には」自分ですべて処理できる。基本的にはね。でも、痴呆と、パーキンソン病による手の震え、足元もたまにおぼつかない。

サイアクな事態としては
朝、介護者が出勤すると「パウチの中身が、紙くずを捨てる、金網タイプのごみ箱に捨てられていた」

という例があった。 (介護日誌を読んだ同業者は全員、心の底からお疲れ様ですとつぶやいたに違いない・・)


この日お宅に到着すると、Kenさん、パウチ専用のクリップ (漏れたりせず、装着していても違和感が少ないスグレモノ) のはめ方が「わからない」。(なら、介護者が到着するまで待ってくれればいいのですが、自力でやりたかったみたいで・・) 応急処置として、文房具の「紙ばさみ」イギリス英語では (商標) ブルドッグクリップbulldog clipと呼ばれるものを「でーん」と、バッグに装着してらした・・

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Kenさんにしてみれば「ピンチ!な場面で、神ならぬ『紙』ばさみが救ってくれた!」という、強烈な思いがこもっているんだろう。お守りレベル。


バタコの脳内では「二度とこういうことが無いように、紙ばさみはどっかに隠しとこか」という計画が進行中だったんだけど・・


「ああ、ブルドッグクリップのことね?」「そう、それだよ!!」「わかりました、じゃあ」と、入念に紙ばさみを洗ったうえで、「ベッドの真横に置いとくので、安心してくださいね~。けど、もう、二度と、パウチには使わないでねっ。私たちが来るまで待てば、一緒に処理できるんだから・・」

※Kenさんは独り暮らし。毎日4交代程度で介護者が訪問する。
 日中、Kenさんが一人きりでいる時間はせいぜい3-4時間程度。
 夜間は完全付き添い。


それにしても、「ライオンの爪」って言われて「ブルドッグクリップ」が分かった自分、天才じゃね? って思っちゃった。



・・・ウソです。ごめんなさい。ちょっとうぬぼれが過ぎました。

介護の仕事は、子育てに似てる部分があると思っていて。
トンデモないことが起きたりもするけど
「生きててよかった!」って胸が熱くなるくらい、かわいいことしてくれたり言ってくれたりするときもある。
(ちなみに、子供相手に人生最高レベルに怒ったこともある・・更新中。)

良い日ばかりじゃないけど、仕事とは言いつつ介護から「受け取る」ものがとても大きい気がしております。



ホームヘルパーのパートに3年ぶりに復帰して、記事にまとめ上げる時間的余裕はないくせに、書きたい気持ちも募ってきたので、ぼちぼちマガジンに追加していきたいなと思ってます。






最後まで読んでいただいてありがとうございます!