【Reprise】世界コワーキング・デイにCoworkingが始まった日のことを、あらためて。
※この記事は、「世界コワーキングデイ(International Coworking Day)」にちなんで2015年8月11日にMediumに書いたブログに、一部、イントロを加筆して再掲しています。
上記のブログを書いたのが5年前。その時点で世界のCoworkingは生まれてから10年が経ち、「世界コワーキングデイ」は5年目。今年、つまり、今日が10年目だ。
この10年の間に、日本のコワーキングもずいぶん変わった。まず、コワーキングスペース数が増え、利用者(コワーカー)も増え、いろんな事業者がこの領域に侵入しコワーキングの本質的価値を毀損しながらも、ミレニアルの自由な発想と行動で働き方なんちゃらを(いい意味で)有名無実化し、それを下支えするテクノロジーが恐ろしいスピードで進化した。
ただ、ずっと進行形であることは変わらなかったし、これからも変わらない。コワーキングにゴールはない。毎日、その姿は変わる。ずっと「今」だ。
そこへ降って湧いたコロナウィルスの影響でにわかにリモートワークが取り沙汰されるようになった。だが、冷静に考えれば世の中は粛々とリモート化の道をたどってきていたわけで、コロナはただ単にそれを加速したに過ぎない。
時代は変わるのだ。
で、今日はその「世界コワーキングデイ」だ。カフーツでは毎年、無料開放してイベントをやるけれど、今年はコロナのせいでそれも叶わないので、オンラインでやることにした。誰でも参加OKなので、ここをよく読んで
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16時〜19時にここにアクセスされたし。
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さて、くだんの5年前のブログだが、実は自分でも書いたことをすっかり忘れていた。あらためて読んでみたら、「なんや、今考えてること、そのまんまやないか。成長ないんかいな」と思ったけれども、まあ、書いてあることに自分でも得心いったので、あえてそのまま転記する。
では、どうぞ。
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Coworkingが生まれて10年が経った。
今年も「International Coworking Day」がやって来た。こないだの日曜日に。
2005年8月9日に、Brad Neuberg氏がサンフランシスコで、「コワーキングしよう」と友人に声をかけて始めたのがコトの起こり。その時に彼が書いたブログがこれ。
その日を記念して、毎年、8月9日を「International Coworking Day」とし、世界中のコワーキング・スペースが数日間にわたってFreeCoworkingとして無料開放したり、趣向を凝らしたイベントを催したりして、新しいコワーカーとの出会いの瞬間を創っている。
このブログを久しぶりに読み返してみると、あらためて気づいたことがある。出だしはこう。
世間はオフィスで働くか、さもなくば自宅で働くか、どっちかを選べと迫る。もし会社で9時から5時まで働けばコミュニティと組織を得ることができるけれども、自由と自分の人生をコントロールする能力を失う。もし自宅で働けば独立性を保てるが、孤独と働く環境にいないことで生じる様々な悪習に悩まされる。
Coworkingはそれを解決する。Coworkingでは、例えばフリーのライターやプログラマー、クリエイターが週に数日、コミュニティに参加する。会社にいるような環境が提供されるが、それとは全然違う方法だ。
洋の東西を問わず、悩みは同じ。働く場所を変えることでこの課題を解決しようと、はじめて動いた人なわけで。
どうやらその日は瞑想から始まったらしい。で、めいめいがリラックスして自分の仕事をするのだけれども、常に他の人の存在(Presence)を感じつつ、コミュニティ内でアイデアを膨らませたり、ウォータークーラーのところで休憩したり、お昼には全員で食事に出かけたりしたんだとか。
おお、このへんはいま、我々が日本でやってるのと同じだ。一番わかり易いコワーキングの姿。まあ、5年前の日本では全然わかりにくかったんだけれども。
ただし、仕事ばっかりしてる訳ではなくて、必ず45分はブレイクを取って、散歩したり、ヨガしたり、自転車に乗ったりして健康的なメニューもやったりしたみたいで、このへんはカウンターカルチャーの色が今なお濃い西海岸っぽさを感じるし、ぼくも今後やってみたい。Peace。
注目なのは、毎日、9時にスタートし17時45分にはピタッと仕事を終わらせたこと。これもワークライフバランスに気を遣ってのことだったみたいだけれど、ぼくにはなかなか真似ができない。
会場となったSpiral Museでは、週に2回、月曜と火曜の9時から17時45分までCoworkingする。毎火曜日の16時45分から17時45分のあいだは部屋をオープンにして誰でも立ち寄ってお茶を飲んだり、部屋の様子やCoworkingが何なのかを話しあったりする時間に充てていたらしい。
ここ重要なのでひと言。コワーキングは場所ありき、ではあるけれども、いきなりテナント契約する前に、最初は週に2回とか、月に4回とか、隔週火曜日とか、いわばイベント的に始めてもイイ。
そこに集まってきた人と、「じゃ、どういうコワーキングがいい?」と相談できる、これが必要。だいたい、最初ひとりで考えてるコワーキングって、必ずどこかズレてるはずだから。当時のぼくみたいに。ついでに、その人達が中核のメンバーになってくれる。これは、フィラデルフィアのIndy Hallを主宰しているAlex Hillman氏も言ってた。
これは、コワーキング開業について相談に来られる地方自治体や若いフリーランサー諸君にも言ってる。最初から、大げさなことを考えずに、できることから始める。ただし、回を重ねるごとに仲間を作っていく。行政も市民を巻き込む。フリーランサーも他のフリーランサーを誘う。人から人へつないでいく。そのうち、形になる。
Spiral Museでは、一日の利用料金が10ドル。これは知ってたけれど、今日、読み返してみてオドロイたのは、3日間試してみたあとにグループに参加するかどうかを決めてたらしい。ということは、ドロップイン(一日とか数時間の利用)は、マンスリーメンバーになるかどうかを決めるためのトライアウトだったのか。へー。なんでここ、読み落としてたんでしょうか。ちなみに、月額料金は100ドル。
Spiral Museの部屋はそう広くなかったようで、席数は8席とある。ぼくがやってるカフーツが12席だから、そうか、似たようなスタートだったのか。でも今は満席なので希望者は予約しておいてね、と。
どんな場所だったかは、このページの画像でよく分かるかと。
そのSpiral Museでのコワーキングは、その後いったんクローズして、翌年、Hat Factoryが同じサンフランシスコにオープンする。そこにもBrad Neuberg氏はいた。そこは使われなくなった帽子工場で、確か上か下の階にレジデンスがあったはず。これもヒントですよ。
さて、ぼくが神戸でコワーキングをはじめて5年と3カ月。速いな〜とも思うし、え、まだそんなもん、とも思う。
この間、世界中にコワーキングができたし、日本でも東京で爆発的に増え、追いかけるように地方都市でもじわじわオープンが続くようになってきて、本当にスバラシイと思う。
さまざまなスタイルのコワーキングがいろんな土地にでき、それらを横断して仕事をしながら日本中に仲間を作ることができる。そういうプラットフォームとして、コワーキングはようやく機能するようになってきた気がする。そう、ワークスペースというよりプラットフォーム。
くだんのBrad Neuberg氏は、やって来たコワーカーに「君たちも自分の街でCoworkingやってよ。そしたら、どんどんこういうスタイルが広まるし、どこででも仕事できるようになる」と言って勧めていたらしい。つまり、コワーカーの立場として、コワーキングをもっと社会に浸透させ、働きやすい環境を自ら創ることを主眼としている。
コワーキングの本質はそのことだなと、今、このブログを読んであらためて思う。だから、ローカル経済を駆動するエンジンにもなれるし、社会の成り立ちもゆるやかに(あるいはチャッチャと)変えられる。
殊に地方都市のコワーキングにとっては、他の街のコワーキングと連携することで、コワーカーの利便性も図られる上に、コワーカー同士の交流も容易になる。言うまでもなく、これはコワーキングの理念に合致する。
さらに重要なのは、流動的に働く(コ)ワーカーを受け入れることで、自前のリソースだけでは非効率だったローカル経済(ビジネス)再生の起点となる可能性が高まる。つまり、他の地域から、あるいは相互にワークフォースを誘致することで、起業創業の機会を活性化できる。
地方行政はこのことにもっとリソース(予算、場所、人材)を注ぎ込んで、地元のコワーキングをもり立てる方策を練るべきだと考えている。ただUJIターンを期待しても、その受け皿とシステムを整備しない限りは期待した効果は上がらないと思う。
それには、コワーキングを単にワークスペースとしてではなく、新たな経済効果を生み出す機能を持つプラットフォームとして、さまざまなスキームを組むことが肝要だ。
5年余り、好きにコワーキング運営をやらせてもらってきて、そう実感し、そろそろ次の展開にあれこれ考えを巡らせているけれども、核となるのはそのことだ。実は、今回の「世界コワーキング・デイ」で、その緒を見つけたので、早速、動き出している。やってヨカッタ。
そしてぼくは、まだまだもっと日本にコワーキングができなければいけないと思っている。なので、コワーキングについてのご相談、いつでも承ります。お気軽にご連絡ください。
最後までお読みいただき有難う。
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なお、今後、地方自治体や地域金融、あるいは地方都市の企業がローカルの活性化のためにコワーキングスペースを開設する機会が増えると考えている。ぼくが代表理事を務めているコワーキング協同組合では、「コワーキング開業・運営の支援事業」も行っているので、ご相談は下記アドレスまでお気軽に問い合わせください。
コワーキング協同組合 info@coworking.coop
ということで、世界コワーキングデイ、おめでとう!
HAPPY INTERNATIONAL COWORKING DAY !
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