トカゲのトッポ切り
「おいそこの坊主、なにトッポをポキポキ折ってんでい?」
「トカゲが人間に話しかけるな」
「へへ、生意気なガキったらありゃしねえぜ、ただここはオイラの寝床だ、そんなにポキポキポキポキ言われちゃあ昼寝の一つもできねぇんだなこれが、訳くらい聞かせてもらおうか」
「よそで寝ろ」
「オイラの寝床だって言ってんだろここは」
「ぶっ潰すぞ」
「ひー怖い怖い、わかったじゃあ訳だけ聞いたらよそ行くからよ、どれ訳を聞かせてみろ」
「2つに折れば倍になる、それだけじゃ」
「ハッハッハ」
「なにがおかしい」
「倍になるって坊主、数は倍になるかもしれねぇが、長さは半分だ、総量は変わらんげな」
「わかったるわそんなこと、口に運ぶ数が倍になりゃあええんじゃ」
「なるほど、なるほどなるほど、ちょっと坊主、長さが元に戻ったら嬉しいか?」
「なにを言うんじゃ」
「ポキッと折ったトッポがや、元の長さに戻ったら嬉しいかっちゅうてん」
「嬉しいに決まっとらあ、けど夢の話をするな」
「夢じゃないんだなぁこれが」
「は?」
「まま、信じる者だけが救われる、信じんもんは地獄行き、一生びんぼくさい食い方しとりゃええ、訳も聞いたし約束通り退散するわ、ほんじゃ」
「ちょい待て」
坊主がトカゲのシッポを掴むと、シッポが千切れた。
「うわっ!気持ち悪っ!」
千切れたシッポは釣り上げられた魚のようにのたうちまわった。
「坊主、なんちゅうことをしてくれる」
「わざとちゃうわ許せ」
「見ろ」
トカゲが中腹で千切れたくっついてる方のシッポを見せた。
シッポはずずずずと元の長さに再生した。
「おま、お前どうやったそれ!」
「ワシは実を言うとな、ここだけの話、術使いじゃ」
「じゅつつかい?」
「途切れたもんを元通りにする術使いじゃ」
「途切れたもん…おっ、じゃあこのトッポも!半分のトッポも元通りにしてくれろ!」
「そりゃあ、無理な話でげな」
「なんで!シッポもトッポも一緒げな!」
「トッポはトッポでもそのトッポじゃあかん」
「は?」
「じゃじゃーん、トカゲのトッポ切り〜」
トカゲは市販のトッポのパッケージに自身の顔(顔の前でサムズアップしている)がプリントされたオリジナルトッポをどこからともなく出して見せた。
「トカゲのトッポ切り?」
「このトカゲのトッポ切りなら、食べた分だけ伸びてきよる、元の長さに戻りよる」
「よこせ!その夢のトッポをはよ!」
「こちら市販はされとらんでして、貴族いや王族のトップオブトップの数人にしかご紹介しとらん商品でございますゆえ、タダでは」
「わかったなんぼじゃ!有り金かき集めて払ろうたる!」
「まぁワシと坊主の仲じゃき、壱万え」
「壱万じゃな!ちょい待っとれ!」
坊主はトカゲの元を離れるとさっきトッポを購入したすぐそばの駄菓子屋のニコニコ婆さんをおどかして戻ってきて小銭をばら撒いた。
「ほい!壱万はあるじゃい!」
「信じましょう、お買い上げありがとうございます」
「ほんじゃ!」
「おお言い忘れとった、元の長さに戻るには一晩かかるからの」
「おう一晩か、まぁ寝て起きたら元通りってことじゃいな、オッケー!」
こうしてトカゲは念願叶い、自販機で買い漁ったペプシコーラの池でバシャバシャと過ごしました。
坊主は翌朝、トカゲの元に鬼の形相で飛んでくるも姿はなく、駄菓子屋の一人息子に耳を引っ張られて連れていかれましたとさ。
トカゲを信用してはいけないよ。
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