街路整備とウォーカブルの切っても切れない関係
みなさんこんにちは!都市整備課です。
これまで水とまちについて考える連載を投稿してきました。
今回は気分転換に違う話題を。
ということで、都市整備課が開催しているマチミチweb講座から、特に好評だったテーマをご紹介します。
マチミチweb講座は公益社団法人日本交通計画協会と東北地整、関東地整の3者で主催している”ゆるフワ”連続講座です。
今回は、マチミチweb講座の第2回「街路整備とウォーカブルの切っても切れない関係」(東北地方整備局都市・住宅整備課長 高濱康亘さん)についてです。
ウォーカブルについては、マチミチweb講座の第1回「ウォーカブルって何?いま都市整備で求められるもの」で解説しているので、今回は街路整備に焦点を当てて、これからのまちづくりに求められることを紐解いていきましょう。
第2回の講座のアーカイブ動画はこちら!
「街路」ってなに?
「街路」の概念は、道路の中でも特に、都市の内部の道、英語で言うなれば、roadを道路とすると、streetにあたるものが街路と言っていいでしょう。
日本では、道路も街路も、自動車の交通量を基準として整備されてきましたが、近年は、街路と沿道の関係性を重視して、エリア一帯で整備を行う新たな街路整備が進められつつあります。
「ウォーカブル」ってなに?
「ウォーカブル」とは、「WALK」(歩く)と「able」(~できる)を組み合わせた単語です。直訳すると「歩くことができる」という意味になりますが、単なる歩きやすい道路とは異なります。
「ウォーカブル」には、車中心に整備されてきた都市空間をヒト中心に作り変え、さらにはライフスタイル自体を歩く暮らしに転換していくという意味が隠されています。
街路整備とウォーカブルの関係って?
歩く暮らしへの転換と聞くと、「じゃあ道路はいらないの?」という疑問が浮かんできそうですよね。
もしまちから道路がなくなったら、車がたくさん滞留して、渋滞が起きてしまいます。歩く暮らしを実現しつつ、車の利用者も快適に過ごせるようになるためには、やはり道路のこともきちんと考えて街路を整備する必要があります。
例えば、環状道路の整備は、中心部の交通量を減少させるので、まちなかウォーカブルにとっても、とても大切です。
アクティビティをつくるフェーズへ
都市デザインコンサルタント兼デンマーク・コペンハーゲン建築大学教授のヤン・ゲール氏は、都市空間のデザインについて、下記のように述べています。
行政の視点で考えるのであれば、空間は「プラン」、建築は「制度」と言い換えてもいいかもしれません。
実現したい目的(アクティビティ)の達成に向けて、手段として空間(プラン)を、道具として建築(制度)を活用するイメージですね。
街路整備に当てはめると、どんな暮らしを実現するか、空間をどんな風にデザインするかを突き詰めた先に、どんな道路を作るか考えることが大切だということです。
従来の都市計画では、計画を立てて整備することをメインに扱っていて、整備が済めば自然とその後の運営(=アクティビティ)に繋がっていくと考えられてきました。
人口減少時代に入ったことで、多くの人を惹きつける都市空間が重要となり、アクティビティそのものへのアプローチに注目が集まるようになりました。
街路整備×ウォーカブルの事例
ここでは、街路整備×ウォーカブルの事例を5つご紹介します。
■姫路市の事例
姫路市では、連続立体交差事業と一体的に都市内環状道路の整備を行っています。
連続立体交差事業と一体的に都市内環状道路の整備を行ったことで、徐々に姫路市大通線の自動車交通量が減少し、渋滞が緩和されました。
さらには、自動車の流入が減少したことにより、街路空間の再構築が可能となりました。
姫路市の特徴は、なんと言っても世界遺産と国宝に指定されている姫路城!車道中心だった駅前が、「城を望み、時を感じ人が交流するおもてなし広場」というデザインコンセプトのもと、ゆとりある歩行者空間へと生まれ変わりました。
駅周辺では、ホテルやマンションの建設が活発化し、若者が商店街の空き店舗に新規で出店するようになりました。
賑わいが創出されたことで、周辺の地価も大きく変化しています。
駅周辺の商業地の地価は、平成30年時点で1㎡あたり120万円でしたが、
平成31年時点では1㎡あたり150万円になりました。
駅前広場や歩道などが整備されたことで利便性が向上し、1年で約25%も地価が上昇したのです。
■長野市の事例
長野市の中心市街地では、「歩いて楽しい歩行空間」の充実を図るため、「トラフィックセル」の考え方のもと、歩行者中心のまちづくりを進めています。
■京都市の事例
京都市では、観光や買い物を後押しするため、四条通の歩道を従来の3.5Mから6.5Mに拡幅する工事を進めています。ところが、車道が片側一車線に減ったことで、渋滞の発生してしまいました。
この問題を解決するため、市は、四条通をカーナビの主要道路から外し、一般車両の流入を減らす意向を示しました。
■和歌山市の事例
和歌山市は、歩行者を優先すべき通りの駐車場の統合や計画的な駐車場の配置等、住みよいまちづくりの実現に向けた取組を行っています。
■福岡市の事例
福岡市では、地区の周辺に駐車場を集約することで、天神地区の交通混雑を緩和する取組を実施しています。
これからのまちづくりに求められること
暮らす人や利用する人の立場に立って考えながら、まちでどんな生活を実現するか、何を作るか考えていく。
これこそが、今後のまちづくりで求められることだと言えるでしょう。
まちづくりを考える時に、解析的・工学的に定量化して考える自然科学的アプローチと、定性的・心理的に人間側に視点を置く人文科学的アプローチは分断されがちです。実際、日本の都市計画制度では、前者の自然科学的アプローチが主流でした。
でも、自然科学的アプローチも人文科学的アプローチも、切り口が違うだけで、「どんなまちにしたいか」という根底の部分は同じはず。
建物や道路に目を向ける人、人や人の活動に注目する人・・・
色々な背景を持った専門家がいていいんです。
両者が対立するのではなく、互いに歩み寄って、知恵を出し合い、どんなまちにしたいか一緒に考えること。きっと、そこから新しい価値が生まれます。
まずは、都市行政の担当者自身が実際に街に出て、都市の実情を知ることから始めてみましょう。
色々な人がいる街路空間に出かけて、様々な人と交流し、自分自身の身の回りが魅力的でクリエイティブになるように努力してみる。
都市空間をデザインするための「想像力」は、案外身近なところに眠っているのかもしれません。
おわりに
今回は少し視野を広げて、街路整備を切り口に、これからのまちづくりに求められることをご紹介しました。
受講者コメントでは、印象に残った言葉を募ったところ、「アクティビティ」というものが多くありました。
これからも、たまに、2022年マチミチweb講座のなかから反響の大きかった回をご紹介していきますね!お楽しみに!